このブログを検索




巧妙すぎる心理操作「ガスライティング」とは何か?精神を操る怖い心理テクニック6選


ここ数年、よく見るようになったのが「ガスライティング」って言葉です。1944年の映画『ガス燈(Gaslight)』に由来しております。この映画では、夫が妻に「お前は記憶違いをしてるぞ!」みたいなことを言いまくって、相手が「本当に私がおかしいのかも……」と思うように仕向けていくんですよね。

 

そのため、心理学の世界では「ガスライティング」を以下のように定義しております。

 

  • 相手の認知・記憶・感情に対して否定や歪曲を加えることで、自分の現実認識に疑問を抱かせ、精神的なコントロールを図る行為

 

とにかく相手を否定しまくることで、精神をコントロールしていくわけですね。

 

ただ、これだけだとガスライティングがどんなものかよくわからんので、近ごろシドニー大学のチームが、過去の文献を統合して「そもそもガスライティングってどんなことなの?」ってのを調査してくれたんですよ(R)。その結果、ガスライティングの構成要素は6つに分類されることがわかったそうで、これが非常にわかりやすい内容になっております。

 

では、「ガスライティングの6つの構成要素」を見てみましょうー。

 

 

構成要素1.現実の操作

ガスライティングの中心的な要素で、相手の「現実認識」そのものをぐらつかせる行為を意味する。たとえば、

 

  • 相手が言ったことに対して「そんなこと言ってないでしょ?」と否定する
  • 物をわざと隠した後で、「ちゃんとそこにあったじゃん」と相手を責める
  • 感情の反応(怒り、悲しみ)に対して「それはおかしい」「被害妄想だよ」と言い切る

 

みたいになってまして、「めっちゃあるなー」って感じですね。人間ってのは、自分の記憶や感情を「現実の基準」として生きているので、それを否定され続けると、「自分の感覚は間違っているのかも…」って疑念が積み重なり、やがて自信を完全に失っていくんですな。

 

 

構成要素2. 否認

「起きた事実」を完全に否定するパターンです。証拠があってもがんとして認めず、ひたすら責任を回避していくやり方で、

 

  • メールやLINEの記録があるのに、「そんな連絡してない」と言い張る
  • 暴言を吐いた直後に、「冗談だっただけ」となかったことにする
  • 「覚えてない」と言って記憶喪失を装う

 

ってのが典型的な例です。何度も否認されると、相手は「何を言っても無駄だ」と思うようになり、ほどなく自己主張や抗議をあきらめるようになります。その結果として、「相手に従おう」という心理に追い込まれていくんだそうな。怖いですねぇ。

 

 

構成要素3. 一貫性のなさ

「愛情と冷酷」「優しさと暴力」などをランダムに切り替える手口で、DV系の人がよく使うやつですな。たとえば、

 

  • 昨日は「愛してる」と言っていたのに、今日は無視される
  • プレゼントをくれた翌日に、些細なことで怒鳴られる
  • ひどいことを言った後に、急に優しくフォローしてくる

 

って感じでして、このような「予測できないアメとムチ」の組み合わせは、脳にとって非常に強力な「条件づけ」になり、「相手の機嫌に合わせれば安心できるかも」という幻想が生まれるとのこと。

 

 

構成要素4. 孤立化

ガスライティングをよく使う人は、相手を友人やコミュニティから遮断しようとすることが多め。これによって、相手が余計な情報を得ないようにするわけですな。たとえば、

 

  • 「あの友達、君に悪影響与えてるよ」と繰り返して、友人との付き合いを減らさせる
  • 相手が家族と連絡するのを嫌がる
  • SNSやスマホの使用を制限する

 

みたいになります。人間ってのは、友人や家族との対話を通じて自分の感情や記憶をチェックしているので、これを断ち切られると「比較対象」がなくなり、相手の言葉を唯一の現実として受け入れるようになるとのこと。新興宗教でも使われる手口ですね。

 

 

構成要素5. 強要

「今の関係を維持するには、君が折れるしかない!」というプレッシャーを相手に与え、行動をコントロールする戦略です。たとえば、

 

  • 「君がそんな態度なら、もう別れるよ」
  • 「謝ってくれないと、もう話したくない」
  • 関係の維持と破綻をちらつかせ、相手に罪悪感を与える

 

ってのがよくあるパターンっすね。この種の行動は、被害者に「自分が悪い」「修復する責任がある」という誤った認知を植え付けるため、関係性から抜け出すハードルがどんどん高くなっていくんですな。

 

 

構成要素6. 自己疑念の植え付け

ガスライティングのゴールは「自己疑念の植え付け」です。被害者が自分のことを「自分はダメだ」「判断力がない」と思い込むよう仕向けるやり方であります。たとえば、

 

  • 「君っていつも考えすぎなんだよ」と言われ続ける
  • ミスをしたときに「ほら、またやった」と過去を引き合いに出される
  • 「誰も君のこと理解できないと思うよ」と言われる

 

って感じです。たいていの人間は「自分には価値がある」という信念を持っているので、それが崩れると「自分の感情すら信用できない」「誰にも頼れない」って心理になり、完全な支配構造が成立しちゃうんですよ。

 

 

ってことで、「相手を支配したい!」って欲望が強い人は、これら6つの方法を組み合わせて使い、被害者に自分の現実を崩壊させ、自尊心を失わせていくんですな。んー、めっちゃ怖いけど、確かにこういう手口を使うタイプはよく見かけますね。

 

ちなみに、この文献では「ガスライターの被害に遭いやすい人がいる」って話が出てまして、ざっくり3つの共通点を挙げております。

 

  • 「理解されたい」という欲求が強い
  • 「相手にとって良い人でありたい」と思いやすい
  • 共感力が高く、相手の言い分を優先しがち

 

こういう人が餌食になりやすいってのも、よくわかりますなぁ……。

 

とはいえ、「これはガスライティングなのか?」ってのは、いまいち判断がつきづらいのも事実。なので、今回ピックアップされた6つの構成要素をチェックリストのように使って、相手との関係を見直してみるのが吉じゃないでしょうか。たとえば、

 

  • 会話のあと、やたら自己嫌悪になる
  • 自分の感情が「大げさ」と言われることが多い
  • なぜか友人や家族との関係が疎遠になっている

 

などのサインがあれば、ちょっと注意してみると良いでしょうな。


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item

search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM