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感情に飲まれない人の秘密:効果的な“感情調整スキル」を鍛えようぜーという話


「イライラして頭が回らない!」「不安でなにも手につかない!」みたいな経験は誰にでもありましょう。私自身も、締め切り前はプレッシャーで「うおー!」となったりします。

 

そこで大事になってくるのが「感情調整」のスキルで、これは「ネガティブな気分に巻き込まれず、うまく付き合っていく技術」のことっすね。感情を無理に消すのではなく、「整える」。そのための行動や考え方のことですね。

 

で、最近この分野でちょっと面白いレビュー(R)が出たんで、内容をチェックしときましょうー。

 

これは ノースイースタン大学などのレビュー論文で、過去の文献をもとに「どんな感情調整の方法がより効果的なのか?」ってのを調べてくれてて良い感じなんですよ。そこでまずは感情調整の定義をチェックしておくと、

 

  • 「どの感情を、どれぐらい、どんな形で経験するかを、自分でコントロールしようとすること」

 

みたいになります。たとえば、以下のような行動は、すべて感情調整にあたるわけですね。

 

  • 嫌なことがあっても笑顔でふるまう(=感情の表現をコントロール)
  • 落ち込んだときに元気な音楽を聴く(=気分を切り替える)
  • イライラする相手を避ける(=ストレス源から距離を取る)
  • 信頼できる人に相談してスッキリする(=社会的サポートを利用する)
  • 失敗を「学びのチャンス」と考え直す(=物事の解釈を変える)

 

このように、「気分に振り回されないための技術」が感情調整で、日常生活のあらゆる場面に活かせるのは間違いないでしょう。

 

でもって、このレビューでは、「感情調整にはいろんなレイヤーがあるよー」って視点を重視してまして、感情調節には2つの階層があると指摘しておられます。

 

  • 戦略:感情をどう整えるかの“方向性”
  • 戦術:具体的にどんな行動を取るかの“方法論”

 

たとえば「ストレスを感じたときにどうするか?」ってのを分けてみると、

 

  • 戦略:ストレス源から離れる
  • 戦術:スマホの電源を切って、静かな場所に移動する

 

って感じになるわけですね。そのうえで、研究チームは、感情調整の戦略を以下の5つに分類しております。

 

  1. 状況の選択:ネガティブな状況を避けたり、ポジティブな状況を選んだりする方法。職場の嫌な人とは距離を取ったり、気分が落ちているときに信頼できる友人と会ったり

  2. 状況の修正:今いる環境や状況をちょっと変えることで、感情への影響を調整する方法。仕事に集中したいときに通知をオフにして静かな環境を作ったり、通勤中に好きなオーディオブックを聴いたり

  3. 注意の転換:意識の焦点を変えることで、感情の波を和らげる方法。つらいニュースが流れたら意識的に他のことに目を向けたり、ネガティブな出来事の中に前向きな要素を探してみたり

  4. 認知の再評価:「この出来事はどういう意味か?」という“解釈”を変えることで、感情の質を変える方法。失敗を「自分の成長につながる経験」ととらえてみたり、トラブルを「チャンスに変える種」と考えてみたり

  5. 反応の調整:感情が出てきたあとに、それをどのように表現するかを調整する方法。怒っていてもあえて冷静に対応してみたり、気分が悪いときでも意識して笑顔を作ってみたり

 

ってことで、ここまでが感情調整の基本なんですが、問題は「どの戦術がより効果的か?」という点であります。この点も研究では調べてくれてまして、結論を言うと、

 

  • ポジティブに近づく戦術を使う人ほど、感情的な安定性や幸福感が高い!

 

って傾向があるそうな。たとえば、気分が落ちたときにコメディを見る、ストレスがたまったときに自然の中を散歩する、トラブルの中に「自分にとって意味のある学び」を見つけるみたいに、「気分がよくなる方向へ自分から歩み寄るぞ!」って時が、いちばん効果が出やすいというわけですね。

 

一方で、ネガティブな刺激をただ回避するだけの戦術は、短期的には楽になるんだけど、長期的にはむしろ気分を悪化させやすいってデータが出ていたりもします。たとえば、怒りを抑え込んで何も言わない、悲しい気持ちを無視してゲームに没頭する、嫌なニュースを避け続けるみたいな行動は、感情の根本的な処理にはならず、かえってストレスが蓄積しちゃうよーってことらしい。これは意外とみんなやりがちで、特に若い人ほど「ネガティブ回避型の戦術」を多用する傾向があるそうで、これはちょっと心配な話ですな。

 

では、ポジティブに近づく戦術ってのは、具体的にどんなものかってことですが、そんなに大げさなものでなくても良いそうな。具体例を挙げてみると、

 

  • 好きな音楽を1曲だけ聴く
  • 笑える動画を3本だけ見る
  • 軽くストレッチをする
  • コーヒーを淹れて、香りを味わいながら一息つく
  • 最近あった“ちょっといいこと”を3つノートに書く
  • 好きな人やペットの写真を見る
  • 気軽なLINEを誰かに送る

 

ぐらいのレベルでもOKなんだそうな。こういった行動を日常に組み込むだけで、感情の波に飲まれなくなるなら、やっといたほうがいいですわな。実際、「感情に流されない人」ってのは、特別な能力があるわけじゃなく、適切な戦術を選んで実行しているだけだって話なんで、これはちょっと勇気がわいてきますなぁ。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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