このブログを検索




今週の小ネタ:NMNとNRは筋肉に効く?4週間の「完全ワイルド食」で腸内環境が激しく改善?ビタミンKでメンタル改善?

 


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

NMNとNRは筋肉に効く?

ここ数年、話題のサプリと言えばNMNとNR。「NAD+」というエネルギー代謝に関わる分子を増やして、加齢にともなう体の衰えを防いでくれるなんて話は、皆さんも耳にしたことがあるでしょう。

 

なかなか気になるテーマですが、新しいメタ分析(R)では、「NMNやNRが高齢者の筋力や身体機能に効くのか?」という点を掘り下げてくれててナイスでした。調査の対象になったのは、10本のランダム化比較試験で、対象年齢は61〜83歳。NMNとNRの摂取期間は3〜24週間で、用量は1日250〜2000mgぐらいになっております。

 

その結果を、ざっくりまとめるとこんな感じになります。

 

  • 筋肉量には変化なし
  • 握力にも変化なし
  • 歩行速度・座って立ち上がるテストも、すべて変化なし
  • チェストプレス・レッグプレス(筋トレ系指標)も変化なし、というか筋持久力は悪化してる

 

というわけで、どうやらNMNもNRも、筋力やフィジカルのパフォーマンス向上にはあまり期待できなさそうな結論っすね。筋肉量と握力はどちらも有名なアンチエイジングの指標なんで、これに変化がないってのはちょっと残念ではありますな。

 

まあNMNやNRは「飲めば細胞が若返る!」みたいに言われてる成分なので、これで「NMNは無意味!」みたいには言えないんですけど、今回の研究を見るかぎり、その効果は筋肉には届いていないっぽいっすね。あと、過去の動物実験では「NR+有酸素運動」で身体能力が改善したというデータがありますし、アスリートを対象とした研究(平均36歳)では、NMNを飲んだ人のほうが持久力が伸びたなんて話もあるので、「このメタ分析だけで判断するのも危険だなー」とは思いました。個人的には「NMNやNRは、筋肉を刺激する環境(=運動)がないと意味がないのかな?」と思ったりしますが。

 

私としては、「運動をしている人が、NMNやNRでどこまでパフォーマンスを伸ばせるか?」の研究がもっとあればなぁ……というところです。とりあえず、NMNやNRを飲んでいる方は、あくまで筋トレと有酸素運動のついでに効果があればいいなーぐらいにお考えください。

 

 

 

4週間の「完全ワイルド食」で腸内環境が激しく改善?

ワイルドすぎる生活”を4週間実践したらどうなるかを調べた、おもしろいケーススタディ(R)が出ておりました。この実験を行ったのは46歳の男性で、野生食の専門家であり、この研究の共著者でもあります。いわゆる「ガチな山暮らし系」の人ですな。

 

あくまでサンプル数1の話なので、話半分で読んでいただければと思いますが、この人が4週間にわたって実践した食事がなかなか面白いんですよ。

 

  • ドングリや栗(主におかゆ状にして摂取)
  • 山菜や野草、果物
  • 鹿肉や魚(焚き火で調理)

 

ということで、いわゆる「完全に自然由来の、未加工・低糖質・高繊維・高たんぱく」なメニューを貫いたわけですな。めっさパレオですね。

 

で、この生活を4週間続けたら、どんな変化が出たかと言いますと、

 

  • 体重が約4kg減少した(まあこれは摂取カロリーが少なそうなんで当然ですな)

 

  • 腸内の細菌の多様性が大幅に増加し、多くの細菌の門(Phylum)で顕著な増減が見られた

 

  • 腸内細菌の増加レベルは、以前に行われた「高繊維・未加工食」介入研究よりも大きなものだった

 

つまり、「ただ野菜を多く食べた」とか「加工食品をやめた」ってレベルを超えて、4週間のワイルド飯は腸内環境に強いインパクトを与えたってことですね。さらに驚くのは、実験から2週間が過ぎても一部の腸内変化が持続していたことでして、これも興味深いポイントですな。

 

ただし、当然ながらこれは1人しか対象にしていない試験だし、そもそもの話をすると、

 

  • 腸内細菌が“変わった”からと言って健康に“良い”とは限らない

 

ってあたりは押さえておいてください。最近では「腸内フローラの多様性が高い=健康」と言われがちですが、実はこの関係にはいまだにグレーな部分も多いもんですから。腸内細菌の種類が増えても、それが炎症を促進するタイプだったら逆効果になるかもしれませんしね。今回の研究も「健康が改善されたかどうか」までは、はっきりとした結論は出ていないので、まだ様子見ですかねー。

 

ただ、この実験は「極端な野生食が腸内細菌に激しいインパクトを与えるかも?」って可能性は示してくれてまして、これはナイスな点なんじゃないかと。もちろん私たちが急にドングリを食べるわけにはいきませんが、「ときどき未加工の自然食を意識する」くらいなら、腸に刺激を与えるちょっとしたスパイスにはなるかもしれませんな。

 

 

 

ビタミンKでメンタル改善?

ここ最近は栄養とメンタルヘルスの関係がどんどん明らかになってますが、なかでも地味に注目されているのが「ビタミンK」であります。納豆やブロッコリーに多く含まれる、あのビタミンですな。

 

そこでここでは、ビタミンKとうつ症状の関係を調べた系統的レビュー(R)をチェックしつつ、「実際どれくらい効くのか?」って点を掘り下げてみましょうー。

 

このレビューには全部で12本の研究が含まれていて、その内訳はこんな感じになります。

 

  • 観察研究(11本):対象人数は59〜30,408人
  • ランダム化比較試験(1本):対象はPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の女性84人

 

ということで、結果を見てみましょう。まず注目すべきは観察研究の結果。11本中10本(91%)で、

 

  • ビタミンKの摂取量が多い人ほど、うつ症状が少ない!

 

という傾向が報告されております。これはなかなか見逃せないレベルの結果じゃないでしょうか。特に、ブロッコリーやほうれん草などの緑黄色野菜の摂取量が多い人に、メンタル改善の傾向が強く見られたそうで、大変よろしいですなぁ。

 

次に、ランダム化比較試験(RCT)の結果を見てみると、こちらはちょっと控えめな感じですね。

 

  • ビタミンK2を1日90μgずつ、8週間ほど摂取してもらったところ、うつ症状はプラセボより軽減した
  • ただし、効果の大きさは「小さく、臨床的な意義は不明」ぐらいのレベル

 

つまり、「まったく効かない」とまでは言えないものの、「これでうつが治る!」みたいな過剰な期待は禁物だとお考えください。

 

ということで、これを見る限りビタミンKはかなり大事な気がするんですけど、観察研究で「ビタミンKをたくさん摂るとうつが少ない」という結果が出たとしても、それが「ビタミンKがうつを防いでいる」とは限らないのでご注意ください。というのも、このレビューだけだと、以下の可能性は否定できないんで。

 

  • うつの人はそもそも食欲が低下して、野菜を食べない
  • 食生活が乱れてる人は、ライフスタイル全体が不健康
  • 健康的な人は、そもそも運動や社交活動も多い

 

つまり、「ビタミンKが原因」ではなく、「うつの人は野菜を食べない結果、ビタミンK摂取量が低いだけ」って可能性もあるんですよね。というわけで、今のところビタミンKがうつに効くと断言するだけの決定打はないものの、「メンタルの調子が気になるときは、ビタミンKを意識した食事にしてみる」くらいのライトなアプローチを試してみるのはよいのではないかと。具体的には、

 

  • 納豆(ビタミンK2が豊富)
  • ほうれん草、ケール、ブロッコリー(ビタミンK1が豊富)
  • オリーブオイル(ビタミンKの吸収を高める脂質)

 

といった食材を意識するだけで、腸にも骨にもメンタルにも、ちょっとした良い影響があるかもしれません。


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item

search