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AIは電気やインターネットと同じ“インフラ”になるぞ!みたいな本を読んだ話

 
 

『AIファースト(AI First: The Playbook for a Future-Proof Business and Brand)』って本を読みました。著者はアダム・ブロットマンとアンディ・サックの2人で、アダムさんはスターバックスでモバイルオーダーやロイヤルティプログラムの立ち上げを牽引した人物で、アンディさんはテック起業家としてMicrosoftでCEOのアドバイザーも経験した人物だそうな。実務畑のど真ん中にいた2人っすね。

 

で、この本が何を言ってるかと言いますと、「今すぐAIに本気で取り組まないと、取り返しがつかなくなるぞ!」という現実的な提言でして、主に企業やコミュニティ向けにAIの重要性を説く一冊になっております。

 

ということで、いつも通りこの本から勉強になったところをピックアップしておきましょうー。

 

  • OpenAIのCEOサム・アルトマンとの対話の中では、「5年以内にマーケティング業務の95%がAIに置き換わるだろう」という見解が出ている。このコメントは約1年半前のもので、残り3〜4年で、広告の企画からキャッチコピーの作成、デザイン、ABテスト、パーソナライズ配信まで、ほぼすべてがAIで完結できるようになる可能性が高いと考えられている。当然ながら、これはマーケティングだけの話ではなく、法務、財務、人事などあらゆる分野で、似たような“置き換え”が静かに進んでいる。

 

  • 著者たちは、「AIに人間の仕事が奪われるのではない。『AIを使える他社』に自社の市場が奪われるのだ」と発言している。これは単に効率化の話ではなく、カーン・アカデミー創設者のサル・カーンは「AI導入について唯一後悔したことは、“もっと早くやっておけばよかった”ということだけだ」と語っている。つまり、後で追いつけると思っていると、その頃には「ゲームそのものが終わっている」可能性すらある。

 

  • では、AI導入のスタート地点はどこか?ってことだが、著者は「まずは経営者や管理職が、自らAIに触れよ!」と強調している。AI時代の企業文化は“トップの気づき”のスピードで決まり、たとえば、製薬会社モデナでは、経営陣が主導して社内AIコンテストやポッドキャストを実施。その結果、5000人もの社員が日常的にAIを使うようになったとのこと。また、調査企業SuzyのCEOは、ChatGPTをベースにした社内ツールを自ら構築し、チームに披露した結果として、社員がAIを「怖がるもの」から「日常の武器」へと認識を変える大きな契機になったらしい。この話のポイントは、「AIを使え」と命令するのではなく、リーダーが“見せること”で文化をつくるということである。

 

  • 「AIは“特別なプロジェクト”ではなく、“インフラ”である」という点も重要である。モデナのAI責任者であるブリス・シャラメルは、「電気やインターネットと同じで、AIのROIなんて誰も聞かなくなる」と言っている。つまり、企業活動におけるAIは、「やる・やらない」の話ではなく、「どれくらい深く根付かせるか?」という段階に入っているのだと言える。

 

  • ここで重要になるのが、「AIを分断された業務に使う」のではなく、「業務全体の思考の流れに組み込む」ことである。たとえば、

    営業プロセスの中に、提案資料のたたき台作成AIを挟む
    採用プロセスに、面接フィードバックの要約AIを組み込む
    会議の後に、自動議事録+ToDo抽出AIを連動させる

    こうした形で、「業務全体の流れの中に“自然に”AIがいる」状態がつくれれば、競争力の次元は変わってくる。

 

  • 著者たちは「AIは“蒸気機関の再来”である」という比喩を使っている。LinkedIn創業者リード・ホフマンはAIを「頭脳の蒸気機関」と呼んでおり、これはつまり「AIは人間の判断や創造性を“拡張”するパートナーである」ことを意味する。実際の例として、著者たちはこんな事例を挙げている。

    ・法務部門:社内ガイドラインをAIが要約し、新人の教育を高速化
    ・財務部門:AIが財務モデルを自動作成し、意思決定までの時間が短縮
    ・営業部門:AIが顧客ごとのヒアリング内容を要約し、次回提案のポイントを提示

    これらを“誰か一人のスーパースター”がやるのではなく、全社員ができるようになるのがポイントとなる。これらの実践により、生産性25%向上、品質40%アップなどのデータが続々と出てきており、これは単なる時短ではなく、企業全体の競争力を底上げするインフラ化だといえる。

 

  • 最後に、著者たちが強く訴えるのは、「完璧な導入戦略を待ってはいけない」「まずは小さく、今すぐ始めよ」というメッセージである。具体的には、3つのアプローチが紹介されており、

    全社一斉スタート(Runアプローチ)→ IgniteTechのように、全社員にAIを使わせる施策を一気に導入。
    小さく初めてすぐ成果を出す(Start Small)→ Tishman Speyer社では、まずマーケティングチームにAIを導入し、成果を見せて全社に波及。
    トップが先にやってみせる(Pilotアプローチ)→ Suzy社のCEOが自らAIツールを開発し、現場に提示して信頼を得た。

    といった感じになる。いずれも共通するのは「AIリテラシーの育成」を最優先にしていることであり、社員がツールを“知る”だけでは不十分で、“使って成果を出す”ためには教育と体験が必要となる。ということで全体としては、「AIを導入するかどうか」ではなく「AIをどれだけ早く・深く使い倒せるか」を主軸にしており、AIに向かって動いた者から順番に“別次元のゲーム”へと移行していくことが示されている

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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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