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癒やし空間の作り方|8つの科学的ヒントでストレスを減らす室内デザイン

 

 近ごろストレス対策の世界で「スペース設計」というキーワードを耳にする機会が増えました。昔の病院やクリニックは、わりと簡素な空間を作ることが多かった気がしますが、最近は「いかに回復をサポートする空間をつくるか」が世界的なトレンドになってるんですな。

 

個人的にも、「場所」が人間の心や身体に与えるインパクトは想像以上に大きいなー、とか思ってる訳ですが、そこで近年の研究(R)は、「具体的に感情が整う“空間”とはどのようなものか?」ってのを調べてくれてて非常に役立ちました。

 

 

そもそも「ヒーリング」とは何か?

この文献のタイトルは「気分障害患者の感情調節を最適化するデザインアプローチとしてのヒーリングスペース」みたいな感じで、「気分のコントロールに問題を抱える人に役立つ“癒やしの空間”とは何か?」ってのを調べてくれてました。

 

で、そこでまず最初に押さえておきたいのが、「癒やし」って言葉の定義。「癒やし」と聞くと、スパやマッサージみたいなものが思い浮かぶカモですが、ここで言う“癒やし”は、身体・精神・魂の3つを含む幅広い概念になってます。“魂”というとスピリチュアルっぽいですが、この文献が取り扱う“魂”は、“自分らしく生きている実感”や“人生に納得できる感覚”みたいなものを意味してます。心身ともに落ち着き、さらには生きる意味や充実感もあるような状態を「ヒーリング」として扱ってるわけですね。

 

でもって、この研究チームによれば、最近の研究でも、空間をうまく設計することで、うつや不安といった気分障害の患者さんの回復が早まることが報告されているんだそうな。特に、建築やインテリアの分野では、空間の「癒やし効果」をデータで評価する取り組みも盛んになってきていて、この知見は、私たちが「自分の作業場をどう設計するか?」の参考にもなるだろうと思うわけです。

 

 

癒やしの空間で、なぜ感情が整うのか?

では、「癒やしの空間」がどんなメカニズムで感情を整えてくれるのか? これについては、いくつかの重要な理論モデルが提唱されております。ざっくりまとめると、ヒーリングスペースってのは、以下の3つを満たす必要があるとのこと。

 

  • 安全性: 心身の発達を支え、不安を軽減する。
  • 機能性: 回復や治療を後押しする動線・設計。
  • 雰囲気(アンビエンス): 感情の快適さをもたらす環境。

 

これら3つの要因をガッツリ満たすように考えると、私たちの心身が整う環境が作られるわけっすね。

 

 

ヒーリングスペースの設計に役立つ“8つのヒント”

では、上記の3要素を満たすために、具体的に何をすれば良いのかってことですが、ここで研究チームは、ヒーリングスペースに取り入れると良さそうな癒やし空間に欠かせない「8つのポイント」も整理してくれております。これも役立つ内容なので、ぜひ押さえておきましょう。

 

ヒント1. 色と形

リビングや寝室の壁に淡いグリーンやブルー、ベージュなどの落ち着いた色を使ってみたり、家具や雑貨の角を丸みのある形にしたり、(曲線の多いソファやクッションを選ぶ)、自然の風景や柔らかいデザインのアートポスターや絵画を飾ったり、など。

 

派手な色やとがった形より、「安心」「安定感」「やわらかさ」を意識するのがポイント。

 

 

ヒント2. 光

日中はカーテンを開けて自然光をできるだけ取り込み、夜は蛍光灯よりも電球色の暖かい間接照明やスタンドライトを使い、ベッドサイドやリビングに調光機能つきのライトを置く。

 

目に優しい光や、時間帯に合わせて変えられる照明を使うのが良い。

 

 

ヒント3. 音

ヒーリング音楽や自然音(波の音、鳥のさえずり、雨音など)をBGMで流したり、電化製品のモーター音や生活音が気になる場合は防音マットやカーテンを活用したりと、静かな空間を意識してつくる。自分にとって心地よい音や静けさをいかにデザインするかがポイント。

 

 

ヒント4. 空気と温度

定期的に窓を開けて換気したり、空気清浄機や加湿器を置いたり、夏は扇風機やサーキュレーター、冬はブランケットや床暖房で快適な温度を保ったり、アロマディフューザーで好きな香りをプラスしたり、など。とにかく二酸化炭素の量が少なく、快適な「空気感」を作るのが大事。

 

 

ヒント5. 自然

観葉植物を部屋に置いたり(小さな鉢でも、造花でもOK)、木製や石などの自然素材の家具や雑貨を取り入れたり、自然の景色を切り取った写真や絵を飾ったり、など。“本物の自然”が難しい場合は、「自然風」のアイテムや写真でも十分効果がある。

 

 

ヒント6. 素材

ウールやコットンなど天然素材のブランケットやラグを使ったり、手触りの良いクッションやタオルを選んだり、木や石、ガラスなど温かみや重みを感じる小物を配置する。手にふれた時の「ぬくもり」や「やわらかさ」を意識するのが大事。

 

 

ヒント7. 遊びやゲーム

パズルやボードゲームをリビングに置いて、家族や友人と遊べるスペースを確保したり、一人でも楽しめる「触感おもちゃ」や「フィジェットトイ」をデスクに置いたり、インテリアに“遊び心”のある小物(ユニークなマグカップや、変わった形の置物など)をプラスしたり、など。「ちょっと笑える」「手を動かして楽しい」ぐらいの仕掛けを設定するのがポイント。

 

 

ヒント8. アクティビティやコミュニケーション

会話しやすいように、テーブルやソファの配置を工夫(顔が向き合う形に)したり、ダイニングテーブルで一緒にごはんを食べる時間を増やしたり、趣味のスペースをつくったり(読書コーナーや、作業机を用意)など。「人とつながる」時間と、一人時間を楽しめるような“居場所”を作るのが大事。

 

 

ってことで、ひとつひとつを見ると「そりゃそうだよなぁ」ってポイントばかりですが、ここらへんの小さな工夫をちゃんと積み重ねているような人は、意外と少ないんじゃないでしょうか。これらを意識して設計しておくと、五感にクロスして作用して、「あ、この場所にいると落ち着くな!」「ちょっと前向きになれるな!」みたいな感情の変化が生み出されるはずであります。

 

最近は、PTSDの治療なんかも、ブルーやグリーンといった「自然の色彩」を基調にしたり、木材やクレイウォール、自然光などを多用した部屋で行われるケースが増えましたし、やっぱ環境ってめっちゃ大事っすよね。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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