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快眠サプリ「メラトニン」で運動パフォーマンスが爆上がりするかもよー、という実験の話

 
 

みんな大好き快眠サプリと言えばメラトニンですが、最近「メラトニンで運動のパフォーマンスが劇的に上がるかも!」って研究(R)が出ておりました。

 

念のため、メラトニンについて簡単に整理しておくと、こいつは脳の松果体から分泌されるホルモンで、私たちの睡眠・覚醒サイクル(概日リズム)を調整する主要な役割をになってるんですよ。眠気を誘発する作用があるため、時差ボケの解消や不眠症の改善に使われるんですな。

 

が、メラトニンの機能ってのは、実は「眠気を誘う」だけではありませんで、近年の研究では「メラトニンには強力な抗酸化作用や抗炎症作用があるよ!」ってことも明らかになってまして、単なる睡眠ホルモンとして片付けられないナイスな物質だと言われてるんですね。

 

で、今回の研究では、このメラトニンが「翌日の運動パフォーマンス、特にスプリント能力を向上させた!」って結果を出してまして、個人的には非常に使えそうな内容になってました。

 

 

 

6mgのメラトニンでスプリント距離が120メートルも向上!

今回の研究は、12名の若い男性アスリートを対象にしたランダム化クロスオーバー試験であります。クロスオーバー試験ってのは、全ての参加者が、ある時点では「薬を飲むグループ」、別の時点では「プラセボ(偽薬)を飲むグループ」の両方を経験する、みたいな研究デザインです。この方法を使うと、個々人の体質による影響を抑えて、より信頼性が高い結果が得られるわけです。

 

実験の具体的な内容は、以下の通りであります。

 

 

  • 参加者には、以下の2つの条件を、1週間のウォッシュアウト期間(薬の効果を完全に抜く期間)を挟んで実施してもらう。
    • メラトニン摂取条件:就寝時間の約30分~1時間前に、6mgのメラトニンを摂取。
    • プラセボ摂取条件:メラトニンと同じ見た目のプラセボ(偽薬)を摂取。

 

  • それぞれの摂取条件の翌日には、「30秒間の全力スプリントを6セット繰り返す」という厳しい運動を指示する。要するに、乳酸が溜まる中でどれだけパフォーマンスを維持できるか?ってところを調べ、無酸素運動能力と持久力の両方をチェックしている。

 

  • 参加者の睡眠を、手首に装着するデバイス(アームバンド型活動量計のようなもの)で詳細にモニタリングする。これにより、客観的に睡眠時間や睡眠効率などが記録される。

 

ということで、では結果を見てみましょうー。

 

  • 最も注目すべきは、スプリントテストのパフォーマンスで、メラトニンを摂取した参加者は、プラセボを摂取した場合に比べて、スプリントテストで走破した総距離がなんと約120メートルも長かったんだそうな。具体的な数字で言うと、メラトニン群が748メートル、プラセボ群が625メートルだったらしい。

 

120メートルってのはすごい数字で、短距離のスプリントテストでこれだけの差が出るってのは、「メラトニンが運動パフォーマンスにめっちゃ大きな影響を与えた!」と言えるんじゃないでしょうか。

 

もうひとつ興味深いのは「睡眠の質(睡眠時間や効率など)」の変化で、こちらについてはメラトニン摂取の有無によって明確な違いが見られなかったとこですね。つまり、メラトニンを摂ったからといって、客観的に見て睡眠時間が格段に伸びたわけでも、ぐっすり眠れたわけでもないってことでして、 単純に「よく眠れたからパフォーマンスが上がった」というわけじゃなさそうなんですよね。うーん解釈がムズい。

 

 

 

なんでメラトニンでパフォーマンスが上がるんだろう?

では、なんでメラトニンでパフォーマンスが上がったのかってことですが、研究チームは「メラトニンっていろんな作用があるからねぇ」と指摘しておられます。

 

  • 主観的な睡眠の質の向上と「見えないリカバリー」:  前述の通り、デバイスでの客観的な睡眠データには大きな差が見られなかったんだけど、同時に「よく眠れた!」という主観的な感覚も非常に大事。メラトニンは、寝つきを良くしたり、睡眠の質を深める効果があるので、デバイスでは捉えきれない「身体の深部でのリカバリー」を促進した可能性があるんですよ。たとえば、ノンレム睡眠の深い段階が増えたり、疲労回復に必要な脳内の老廃物除去が効率的に行われたりしたのかも……?ってとこはありますね。

 

  • 強力な抗酸化作用と抗炎症作用:激しい運動を行うと体内に「活性酸素」が大量に発生し、これが細胞を傷つけ、疲労や筋肉痛の原因となるのはご存じのとおり。また、筋肉の微細な損傷によって炎症反応が起きるのも有名な話でしょう。その点で、メラトニンは、これらの活性酸素を無力化する「抗酸化作用」と、炎症を抑制する「抗炎症作用」が非常に強力であることが、数多くの研究で示されていたりします。なので、メラトニンを摂取によって運動の身体ダメージが修復され、回復スピードが速まったってのはあるわけです。

 

  • 神経系の回復と調整:スプリントのような高強度な運動は、筋肉だけでなく「神経系」にも大きな負荷をかけることが多め。神経系が疲弊すると、筋肉への信号伝達が遅れたり、運動の協調性が低下したりして、パフォーマンスが落ちる原因になりがち。メラトニンには、神経細胞の保護や修復機能があるとも考えられていて、こいつが夜間に神経系のリカバリーを促進し、翌日の運動パフォーマンスを上げてくれた……のかも?

 

ということで、これらの複数のメカニズムが複合的に作用することで、メラトニンはアスリートのパフォーマンスを向上させたって感じなんでしょう。メラトニンすごいですねぇ。

 

まあ、メラトニンと運動パフォーマンスに関する研究はこれまでも多数行われてきたんですが、その結果は割とバラバラで、「効果があった」とするものと「効果がなかった」とするものが混在してますんで、そこは注意してくださいませ。メラトニンの研究って、実験ごとに用量が違うし、摂取のタイミングもバラバラだしで、統一した解釈がムズいんですよねぇ。

 

ただ、個人的には、「高強度の無酸素運動や瞬発系の運動」についてはメラトニンが効く可能性は高いと思ってまして、短時間で爆発的な力を必要とする運動なら、メラトニンが持つリカバリー作用や神経系への影響が役立つんじゃなかろうか……と判断しております。激しいトレーニングの後に疲労が抜けにくいと感じている方は、メラトニンを試してみる価値があるかもしれません。

 

 

 

メラトニンを私たちの日常生活にどう活かす?

では、具体的にどのようにメラトニンを活用すれば良いのかってことで、今回のデータをもとにガイドラインを考えてみましょう。

 

  1. 用量とタイミング: 今回の研究では6mgのメラトニンが使われてまして、もし試すのであれば、就寝時間の約30分~1時間前に6mgを摂取するのが良いでしょう。メラトニンは即効性があるわけではなく、体内で徐々に作用を発揮するため、寝る直前よりも少し余裕を持って摂取するのがおすすめです。ただし、メラトニンに対する反応には個人差がありますんで、まずは少量から試してみて、翌日のコンディションや体感を確認しながら、自分に最適な量を見つけるのが賢明っすね。


  2. 短期的な利用から始める:もし身体パフォーマンス用に使うなら、日常的に慢性的に摂取し続けるというよりは、高強度のトレーニング後や、重要な試合・イベントの前夜など、集中的なリカバリーが必要な時に限定して活用するほうが良いかもしれません。


  3. 医師や薬剤師に相談する:何らかの持病をお持ちの方や、他に薬を服用している方は、必ず事前に医師や薬剤師に相談してください。メラトニンが他の薬と相互作用を起こしたり、特定の疾患に影響を与えたりする可能性もゼロじゃないんで。

 

ってことで今回の研究は、メラトニンが単なる睡眠改善だけでなく、パフォーマンス能力の向上に関わる可能性を示してまして、やっぱり面白い物質だよなーとあらためて思った次第です。もちろん、サプリに頼るよりも質の高い睡眠を確保するが先なんで、そこはご注意いただきたいですけども。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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