このブログを検索




「喜びがない」と感じる人のための、科学的な4つのアプローチ


  

このブログをお読みの方の中には、「なにも楽しいことがないなー」みたいな感情を持っている人もおりましょう。人生に退屈を感じちゃうことは誰にでもあるものの、いつもそんな状態なのは困り者。心理学的にも“喜び”の感情が少ない人は、長期的にメンタルを病みやすい傾向があったりしますんで。

 

が、ここで気になるのが、そもそも「“楽しさ”とか“喜び”ってどんな体験なの?」みたいな問題であります。一口に“喜び”と言っても人によってその感じ方や表現がまるで違うので、共通項を見つけないと、対策の立てようがないですからねぇ。

 

そこで非常にためになるのが、ノーサンブリア大学のチームが発表した調査(R)であります。この研究は、「そもそも喜びってどういう体験なの?」って問いに、あえて定量データではなく、インタビュー形式で切り込んだ珍しいアプローチになっております。

 

具体的には、28〜59歳の男女14名にインタビューを実施したもので、ここでは「クリティカルリアリズム」って考え方が使われてます。すごーくざっくり言うと、被験者の主観的な発言には必ず各自の文化や社会背景が影響してるけど、それでもそこには共通する要素があるはずだよねーと考えて、できるだけ「現実に近い理解」に迫っていこうとするものです。もちろん定量的な調査に比べたら精度は落ちるかもですが、このタイプの調査でしか得られない栄養があるんですよね。

 

たとえば、参加者には以下のような質問を投げかけております。

 

  • あなたが喜びを感じた瞬間を具体的に教えてください。その喜びはどうやって表現しましたか?
  • 社会や文化は、喜びの感じ方にどんな影響を与えていると思いますか?
  • 人とのつながりは、あなたの喜びにどう関係していますか?

 

これらの回答を分析したところ、研究チームいわく「現代における“喜び”の4つのテーマ」が浮かび上がったんだそうな。ざっくり見てみると、こんな感じです。

 

 

テーマ1.「なんとなく湧いてくる」タイプの喜びは意外と多い

まず最初のテーマは、「理屈じゃないときにわいてくる喜び」であります。多くの参加者が「ふと湧き上がる喜び」について言及してまして、

 

  • 「山の頂上を見上げた瞬間、心の中にじんわりと喜びが満ちてきた」
  • 「理由はないけど、朝のコーヒーを飲んでるときにすごくいい気分になることがある」

 

……など、“説明できない心の動き”が喜びの本質では?と感じさせる証言が多く出てきたとのこと。なかなか捉えにくい感覚ですけど、確かにこのタイプの喜びは意外と多いかもしれないっすね。

 

 

テーマ2. 「情報の洪水」が喜びを妨げる

2つめのテーマは、「現代人は喜びを感じにくくなっているのかも?」って問題であります。たとえば、ある参加者は「SNSやニュースでは、ドラマチックな“幸せ”ばかりが目立って、日常の喜びを見逃しがちになる」みたいなことを語ってまして、これもよくあるパターンっすね。

 

要するに、現代はSNSのせいでインパクトを重視した情報が氾濫し、そのせいで私たちの喜び感度が下がっちゃってるって指摘です。いかにも現代人の多くに当てはまりそうな問題ですねぇ。

 

 

テーマ3. 「喜びを感じる力」はトレーニングできる

3つめのテーマは、「喜びは勝手に訪れるものではなく、自分で作れる」ってところです。中でも「小さな成功体験や対処行動が喜びを生む」という声が目立ったそうで、たとえば、

 

  • 「困難な状況をうまく乗り越えたとき、心の底から喜びを感じた」
  • 「日常の中で“うまくいった感”を自分で作ると、喜びが自然と増えていった」

 

みたいな声が多かったとのこと。これは私も日ごろからよく感じるポイントっすね。

 

 

テーマ4. 喜びは「つながりの中」に宿る

最後のテーマは、喜びと他者との関係について。多くの参加者が、「喜びは誰かと過ごす時間の中で生まれる!」と語ってまして、なかでも印象的だったのは、

 

  • 「日曜の家族ディナーはうるさくて大変だけど、あれが自分にとっての喜びの原点」
  • 「誰かに話すだけで、ちょっとした幸せが倍増する感じがある」

 

みたいな発言ですね。このあたりは、オキシトシン(信頼ホルモン)や共感神経の話とも関連していそうですな。

 

 

ってことで、この研究が教えてくれるのは、「喜びは偶然の産物ではなく、意識と行動で育てられるもの」ってところでしょう。いずれのテーマも、がんばれば自分でどうにかできるものが多いですからね。たとえば、

 

  • 「なんとなく湧いてくる」タイプの喜びを増やす
    • あえて「何も考えない時間」を1日10分つくってみる
    • 「理屈のない快」の瞬間に、名前をつけてみる(例:「午後2時のコーヒー至福タイム」)

 

  • 「情報の洪水」が喜びを妨げる
    • SNS断食を週に1日取り入れてみる(※情報感度のリセット)
    • 子どものころに好きだった遊びや本を試してみる(レゴとか結構効きます)

 

  • 「喜びを感じる力」を増やす
    • 1日3つ「できたこと」を手帳に書き出す(小さくてOK)
    • タスクを細かく分けて「チェックを入れる快感」を得る

 

  • つながりの喜びを増やす
    • 週1回だけでも、対面で人と話す機会をつくる(5分でもOK)
    • 喜びの瞬間を、誰かにメッセージで共有してみる(返事がなくても効果あり)

 

みたいになりましょう。どれも地味な習慣だけど、積み重ねれば確実に“喜び感度”は上がっていくはずであります。どうぞよしなに。


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item

search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM