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「コラーゲンを飲むだけで“瞬発力”が上がる?」という順天堂大×森永の研究がおもしろい件

 
 

皆さん、「コラーゲン」にどんなイメージを持っておられるでしょうか? コラーゲンと言えば「肌がぷるぷるになる」「関節にいいらしい」みたいなイメージが多いかと思いますが、近ごろ「コラーゲンが腱や筋肉の“バネ力”を高めるかも」という研究(R)が出まして、ちょっとおもしろかったです。

 

研究の詳細を見る前に、まずは「コラーゲンってそもそも何?」ってのをおさらいしときましょう。コラーゲンは人体にとって欠かせない構造タンパク質のひとつで、皮膚や骨、腱、靭帯、軟骨など、様々な結合組織の土台として重要な役割を担っております。「体の接着剤」「身体のフレーム」みたいなもんすね。

 

が、ここで問題なのが、コラーゲン自体を食べたりサプリとして飲んだりしても、それがそのまま身体に届くわけじゃないとこです。コラーゲンは胃でアミノ酸にまで分解されてしまうんで、「コラーゲンも結局は普通のタンパク質と変わらない!」って批判も多いんですな。

 

ところが、さらに近年は新たな展開がありまして、ある種のコラーゲンペプチド(短いアミノ酸の鎖)であれば、特別な構造のおかげで分解されずに血流にのって運ばれることがあるため、サプリを飲む意味があるんじゃないか……とも言われ出したんですよ。うーん、難しい。

 

ということで、今回の研究は順天堂大学と森永製菓による共同チームが行ったもの、16週間にわたるシンプルな調査になっております。「運動も食事も変えずに、コラーゲンだけで何か起こらないか?」という問題を調べたシンプルな設計になってまして、よろしゅうございます。具体的には、

 

  • 対象者:50人を2グループに分け、コラーゲンペプチド10gを毎日摂取する群と、プラセボ群。
  • 期間:16週間継続。
  • 検査方法:
    • MRIで腱と筋肉のサイズを測定。
    • 超音波で腱と筋肉の固さを評価。
    • 筋肉の爆発力を測定するパワーテスト。

 

ってことで、設定がシンプルだからこそ、結果の解像度も高そうでよいですね。

 

で、結果どうだったかと申しますと、

 

  • 腱も筋肉も大きさは変わらない → つまり、筋肥大や腱の肥厚は見られなかった。
  • しかし、弾性=硬さが増した → 超音波で計測された“腱・筋肉のスティフネス”が、コラーゲン摂取群のみでアップした
  • 爆発力(瞬発力)が向上 → 瞬間的に力を出す能力が、コラーゲン摂取群で上昇した。
  • 筋肉の硬さと爆発力の相関あり → 個人差を見てみると、「筋肉が硬くなった人ほど爆発力の伸びが大きかった」という結果が見られた。

 

って感じだったそうです。こうして見ると、「コラーゲンで腱や筋肉が硬くなり、そのおかげでもっと速く力が出せるのでは?」って気になるわけです。おもしろいですねぇ。

 

ここでちょっと補足しておくと、スティフネス(硬さ)ってのは、人体のバネの強さを意味してます。ゴムバンドと同じようなもんで、こいつが硬くなるほど弾みが良くなり、エネルギーを効率よく貯めて放つことができるわけです。スポーツでいえば、ジャンプ、スプリント、切り返しみたいな感じで、機能的に動くためには欠かせない要素ですね。

 

ちなみに、この能力は加齢とともに真っ先に衰えるものでして、立ち上がる速度や転びにくさ、反応の速さなど、日常生活をうまく生きていくためにもめっちゃ必要な能力に。ここを補強できると、運動パフォーマンスの維持はもちろん、生活の質にもつながると考えられるんですな。

 

ただし、いつもながらこの研究も慎重に検討する必要がありまして、

 

  • 企業の関与がある → 森永製菓がスポンサーなので、完全に中立な研究とは言い切れないのが辛いところ。研究デザインや結果解釈に、微妙なバイアスが入ってる可能性は否定できない感じ。

 

  • 運動との組み合わせ次第という点 →  他の研究では、「筋トレ+コラーゲン」の組み合わせが効果的だという報告もあったりするのが、判断を難しくしてることもあり。今回の研究は“運動なしで効果あり”というユニークな結果を出してくれてるものの、実際には運動と併用したほうが結果が出る可能性が高い。

 

  • “筋力”ではなく“爆発力”の話 → 別に筋肉量や最大筋力が増えたわけじゃないので、「さらに重いものを持ち上げたい」ならプロテイン+トレーニングで十分だと思われる。コラーゲンは“筋肉の張り”と“瞬発性”を補う補助的な栄養素と捉えたほうが良いかも。

 

といったあたりは念頭に置いときたいところです。つまり、ここまでを整理すると、

 

  • コラーゲン摂取により、筋・腱の“硬さ”が向上する可能性はある。それによって、瞬発的な力の出しやすさ(爆発力)を上げる可能性もある。
  • ただし、研究の背景や対象範囲を考えると、現状では「可能性があるにすぎない」ぐらいの段階。

 

みたいになります。個人的には「効いたらラッキー」くらいの感覚で、日常に取り入れるのがよいんじゃないかと。

 

コラーゲンを試してみたい時には、今回の研究に沿って、以下のガイドラインを守ってみるといいんじゃないかと思っております。

 

  • 摂取量は10gを目安に「加水分解コラーゲン(=コラーゲンペプチド)」を飲む。これは、だいたいコラーゲンサプリに付属するスプーン1〜2杯分ぐらいの量。
  • 研究では特に摂取タイミングの指定はないんだけどが、既存の研究や生理的メカニズムから考えると、就寝前か運動後とかに飲んでみるとよさげ。
  • コラーゲンが高いと思ったら、もしかしたら安価な代替品としてゼラチン(粉ゼラチン)でも似た効果が期待できるかもしれない。

 

ってことで、コラーゲンは、加齢によって鈍る“瞬発力”を何とかしたいと感じている方や、スポーツのパフォーマンスをもう一段上げたい方には試す価値があるかもっすね。特に全身の“バネ力”は年齢で衰えがちなんで、試してみてもいいかなーって印象っすね。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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