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今週の小ネタ:恋愛に「こだわり」が多い人ほど意外と性行為している件、懐かしの「水素水」は、やっぱり効果ナシ、「ダークな人」ほどネット政治にハマる

 


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

 

恋愛に「こだわり」が多い人ほど、意外と性行為している件について

恋愛と性行為の回数に関する面白い研究(R)がおもしろかったんで、ご紹介しときます。研究のテーマは、「恋愛におけるこだわりの強さと性行為の頻度の関係」についてでして、たとえば「こだわりが強すぎると恋人ができないよ!」とか「理想が高い人は恋愛がうまくいかないよ!」みたいな話をよく聞きますけど、はたしてこの考え方は正しいのかって問題ですな。

 

この研究はクイーンズランド大学の研究チームが340人の独身男女(18〜40歳)を調査したもので、まずは恋愛に対する「こだわり」を2種類にわけてます。

 

  • 主観的なこだわり →「理想の相手に絶対ほしい特徴は何ですか?」と聞いて、挙げた項目が多いほどこだわりが強いとする。
  • 行動的なこだわり → デーティングアプリ風のプロフィールを見せて、「この人と付き合いたい?」と質問。その反応の渋さでこだわりの強さを測る。

 

つまり「自分の理想はこう!」と声高に語るタイプと、「いや、この人は無理」と行動で示すタイプの違いっすね。この2つの“こだわり方”が、それぞれ性行為の頻度とどう関係するかを調べたわけです。

 

で、結果がどうなったかと言いますと、

 

  • 主観的にこだわりが強い人ほど、性行為の頻度が高かった → つまり「私はこういう人じゃないと無理!」みたいに明確な理想像を語る人は、実際に性行為をしている確率が高い。

 

  • 行動的にこだわりが強い人ほど、セックスの頻度が低かった → 「この人もダメ、あの人もダメ!」とプロフィールをバンバン切り捨てる人は、性行為をしていない可能性が高い。

 

みたいになってまして、この傾向は、年齢や性別、自分で評価した「見た目の良さ」なんかを考慮したうえでも確認されたんだそうな。

 

なんだか不思議な結果のようですけども、研究者は以下のように解釈しておられます。

 

  • 明確な理想を語れる人は、恋愛や性行為に対して積極的で自信もある。だからアプローチされやすくなるのでは?
  • 一方で、行動でこだわりを見せる人は、相手を吟味しすぎているため、自ら出会いのチャンスを潰しているのでは?

 

たしかに、プロフィールを見ただけで「違うな」と感じるのは、マッチングアプリではよくある話でしょう。しかし、ここでフィルターをかけすぎると、出会いの母数そのものが減ってしまい、性行為の機会も減っちゃうわけですね。そりゃそうでしょうな。

 

でもって、この研究で面白かったのは「自分から恋愛したいと思っているかどうか?」でも結果が変わっていたところです。

 

  • 恋人が欲しいと思っている人:行動的なこだわりが強いと、性行為の頻度が下がる傾向が明確だった。
  • 恋人は別にいらないと思ってる人:こだわりの強さと性行為の頻度に相関はなかった。

 

要するに、「出会いを求めてるけど、選びすぎ」な人がいちばん損しているってことでして、「自分からは選ばないけど、誰かに選ばれたい!」みたいな姿勢は、現代のマッチング文化ではあまりうまくいかないってことですね。

 

じゃあどうすればいいの?って話ですが、研究者たちの提案は次のとおりになります。

 

  • 見た目やプロフィールで切り捨てる前に、もう少し相手を知ってみよう!
  • 理想像を明確にするのはむしろOK。自分の価値観をちゃんと語れる人は魅力的に見えるよ!
  • 自分から動くことを恐れずに。アクションしないと出会いのチャンスは来ないよ!

 

簡単に言えば、「選ばれるのを待つ」んじゃなくて、「自分の価値観を発信しながら、出会いの幅を狭めすぎない」のがコツって感じでしょうか。「理想を語るのは恥ずかしい」「そんなに相手に求めちゃダメ」と思っている人も多いかもですが、むしろ明確に語れる人ほど、恋愛もうまくいってる傾向があるみたいなんで、ここらへんは参考にしたほうがいいっすね。

 

 

 

懐かしの「水素水」は、やっぱり効果ナシ?でも…筋ダメージにはちょっと効くかも

一時期「水素水」が流行りまして、コンビニにも置かれることがあったもんですが、最近はだいぶ下火になってきましたね。

 

とはいえ、ちょいちょい「いや、やっぱり水素水は効くんだ!」的な意見も根強いので、水素水の新しいランダム化比較試験(RCT)(R)をチェックしてみましょう。この研究は、50歳以上の運動習慣がない男女27名を対象にした試験で、全員に週に2〜3回の筋トレ(8〜10種類の種目を含む)を6週間やってもらいながら、以下のように2つのグループに分けたんだそうな。

 

  1. 水素水グループ →  水素24mg入りの水を毎日1リットル摂取
  2. コントロールグループ → 普通の水を同量飲む(プラセボ)

 

そのうえで、以下のような健康指標を測定したところ、

 

  • 健康関連QOL(生活の質)には影響なし → 一番のメインアウトカムである「生活の質」に関しては、何の変化も認められなかった。
  • 筋肉ダメージの指標は改善? → 運動後のクレアチンキナーゼとミオグロビン(どちらも筋肉の損傷マーカー)の上昇を、水素水がある程度抑えたっぽい。
  • コルチゾールが上昇 → ストレスホルモンのコルチゾールが水素水グループで増加。これは良いのか悪いのか、ちょっと判断が難しい。

 

って結果が出たんだそうな。結論としては「目立った効果はなかったけど、筋ダメージだけはちょっと抑えられたかも」という内容っすね。

 

まあ、この研究では、水素水の製品を提供したのが水素水の販売会社だし、しかも研究者の一人がこの会社の社員だったりしまして、これがまた判断を難しくしている一因だったりします。さらに、今回の筋ダメージに関する結果は“探索的分析”で、統計的な多重比較の補正もしてないんですよね。なので、「たまたま良い結果が出ただけかもよ?」って気もかなりするんですよねぇ。

 

一方で、過去には「水素水で炎症マーカーが減る?」「運動後の回復が早くなる?」みたいな報告もありまして、そこまでバッサリいきづらいところもあったりはします。とりあえず、水素水については、信頼性には「眉にツバつけながら読む」ぐらいで臨みつつ、話半分ぐらいで聞いとくとよいのではないかと。少なくとも、現時点では水素水を飲もうとは思わんですが。

 

 

 

なぜ「ダークな人」ほどネット政治にハマるのか?

SNSで過激な政治投稿を見かけるケースはよくあるもんです。政治の話はとにかく感情的になりやすく、やたらと攻撃的だったり、感情むき出しになっちゃうケースが多いですからね。

 

果たして、SNSで過激な政治発言をする人は何が違うのか?ってことで、そのへんをガッツリ調べた研究(R)が出ておりました。これは、ナンヤン工科大学の研究チームによる国際調査で、アメリカや中国、インドネシアなどの8カ国から8,000人超のデータを分析した大規模研究になっております。

 

まずは、分析の結論をざっくり言っておくと、

 

  • 「ダークな性格+FOMO(取り残され不安)+低い認知能力」な人ほど、SNSで政治的に活発になる!

 

みたいになります。もう少し簡単に言うと、「冷酷だけど目立ちたがりで、情報の見極めが苦手な人」が、SNS上で政治的に大暴れする可能性が高いよー、という話ですね。いかにもな結論ですなぁ。

 

上記の指標をもっと詳しく説明しておくと、

 

  1.  ダークトライアド:いわゆる「ダークな性格」のことで、サイコパシー(衝動性、共感の欠如)、ナルシシズム(自己愛、目立ちたがり)、マキャベリズム(操作性、搾取傾向)の3つを含む。今回はマキャベリズムにはあまり言及されず

  2. FOMO(Fear of Missing Out):「取り残されるのが怖い」「みんなが何してるか気になる」という、現代人にはおなじみの不安感のこと。

  3. 認知能力:ここでは語彙テストを使って、ざっくりした知能指数の代替指標として使っている。

 

みたいになります。これらの要素が組み合わさって、SNSでの過激な政治発言が生まれるわけっすね。

 

ここで得られた知見を、もう少し簡単にまとめてみると、こんな感じになります。

 

  • 一貫して見られた傾向
    • サイコパシー傾向が高い人ほど、SNSで政治的に活発
    • FOMOが高い人ほど、政治投稿やシェアをしがち
    • 認知能力が低い人ほど、政治的活動をしやすい
    • とくに「サイコパシー×低認知能力」の組み合わせで政治活動が活発に

 

  • 面白い例外
    • 中国だけは逆に、「サイコパシー×高い認知能力」の人のほうが政治活動が多かった→ 国によってルールや文化的背景が違うので、この辺は深掘りの余地がありそう。
    • ナルシシズムは、アメリカ・フィリピン・タイでのみ政治参加と関連→ 自己主張が強めに許容される文化圏の方が、自己愛と政治参加が結びつきやすいのかも。

 

つまり、感情的で衝動的な傾向があり、不安を抱えやすく、深く考えるのが苦手な人ほど、SNSで政治的に活動するよーって話なんですけども、これは決して「バカは政治に熱心」って話ではなくて、

 

  • ネット政治の主な動機は“熟慮”ではなく“情動”である
  • ネットの政治参加は、必ずしも質が高いとは限らない
  • 参加者の心理傾向が、政治的空間のトーンを左右している

 

という、わりと構造的な問題を浮き彫りにしたデータだとお考えください。まあ、「論理」的っぽく見える対話が、実は「不安」や「怒り」で動いてることはよくありますからねぇ。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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