目標は“楽しい”が9割:大事さより「その場のご褒美」が粘りを生む理由
「貯金するぞ!」「減量するぞ!」などと気合を入れてみたものの、数ヶ月でフェードアウトしてしまい、気がつけば元の生活にもどっていた……なんて話は、誰にでも心当たりがあるでしょう。目標が達成できないって悩みは、常に耳にするところです。
で、最近の研究(R)も「目標が続かない」問題を掘り下げたもので、ここでは多くの人が目標を達成できない理由を、
- いまこの瞬間の“楽しさ”が足りないからだ!
と結論づけていておもしろかったです。まずはこの研究の内容と結論をざっくり申し上げておきますと、
- 「楽しさ」が高いほど目標の達成率はあがる:1年間で2,000人を追いかけたデータでは、目標を「楽しい」と感じている人ほど自己評価の成功度が高く、達成率も上がった。逆に「重要だから」「役に立つから」という理由を持つ人は、粘り強く取り組まない傾向があった。
- 「楽しさ」の効果は文化や領域が変わっても同じ:旧正月に目標を立てた中国の成人を調べたデータでも、「楽しさ」が目標に取り組む際の粘り強さを有意に予測した。こちらはキャリアや学習系の目標が多かったが、「楽しさ」の重要性は変わらなかった。
- 実行ログでも「楽しさ」の重要性が確認できた:歩数アプリで14日分のデータを記録したところ、歩くのを楽しめている人は、そうでない人より平均で約1,250歩ほど歩数が多かった。さらに、ヘルスアプリを使った実験でも、「このアプリは楽しいですよー」と伝えられたグループは、24時間でスキャン件数が約25%も増えた。つまり、フレーミング(言い換え)だけでも、行動は変えられるのだと思われる。
みたいになります。一言でいえば、「重要だから我慢してやる!」ってのはスタートの理由にはなるものの、走り続けるエンジンにはなりにくいのが難点。長距離走を走りきるには、どうしても“楽しいからまたやる”って燃料が必要なわけですな。
まあ、これは昔から言われることではありまして、「将来の利益のためにやる!」(例:健康のために運動、昇進のために勉強)ってモチベーションは、時間がたつほど心理的に「なんだかどうでもいいなー」って気分になりやすいんですよね。一方で、「それ自体が楽しいからやる!」(例:走るのが好き、学ぶのが面白い)ってモチベーションは、その場ですぐにご褒美を手に入れられるので、やる気を再着火させやすいんですよ。
が、ここで研究チームも強調しているとおり、これは「重要な目標を立てるな!」って話ではないので注意してください。このデータが示すのは、「むしろ重要な目標こそ、楽しく続く設計に作り替えようぜー」って話ですんで。つまり「目標の内容」は「重要なこと」でいいんだけど、「目標の追い方」は「楽しさ」をもとにデザインしようぜーって話ですな。
では、「楽しさ」と「目標」をどう接続するかってことですが、だいたい以下のような感じになりましょう。
- 即時リワードを“正当化”する:「運動するときだけ、お気に入りプレイリストを流す」「学習の時だけ良いコーヒーを一杯だけ飲める」「家計簿をかわいいスタンプでつける」みたいに、決めたことをやった瞬間に”小さな快”を得られるようにしておく。ポイントは「罪悪感のないご褒美」を選ぶこと(ノンカロリー炭酸、ハーブティー、3分の散歩など)。
- “スプリント設計”で退屈を分割する:「60分の勉強を15分×4本に切る」「各スプリントの終わりにミニ儀式(深呼吸とかコーヒーとか)を行い、“終わった感”を出す」などをやることで、次のモチベーションにつながりやすくなる。
- 進捗が“見える遊び”にする:連続記録をつけたり、カレンダーに〇をつけるだけでも、脳は「前に進んでいる!」と感じて、楽しさが生まれやすくなる。
- 社会性を味方にする:同時スタートの黙々会、ゆるい達成報告、1日1回の拍手リアクション。小さな称賛は即時報酬です。競争より共走(隣で走る)を意識。
- “楽しい言い換え”を試す:同じ行為でも、「これは役に立つ!」と考えるよりも「これは面白い!これは発見がある!」みたいに表現を変えるだけでも、その行動を実践に移しやすくなったりする。
いずれも小さな改善ではありますが、確実に目標までの道のりを楽しくしてくれるはずなんで、ぜひともお試しくださいませ。とにかく「これを楽しく取り組めるようにできないかなー」と考えてみるのが、対策の第一歩になりますんで。私自身、原稿の量産期は「1セクション終了ごとにダークチョコレート」みたいな即時リワードを設定してた時があったりしました。
というと、「そもそも目標を楽しくできないなー」みたいなお悩みもあるでしょうが、そんな時には個人的には「楽しく“なる”まで分解する」みたいな方法をよくとります。たとえば「筋トレがつらい!」と思うなら、「5分の準備運動+1種目だけ」から始めるみたいな感じっすね。こんな風に“絶対にできるタスク”に分解すると、それだけで快を感じられるものなんで。
また、「忙しくて時間がない!」みたいな方は、時間ではなく「頻度×小さな喜び」を優先してください。1日3分を3回、合計9分やるだけでも、やった直後の小さなご褒美と進捗の見える化さえあれば、十分に作業を続けるだけのモチベーションは育ちますんで。
ということで、今回のデータをまとめてみると、
- 目標を立てるときは「重要さ」をベースにしてOK。
- 目標をこなすためには「楽しさ」をベースに設計する。
- 「楽しさ」を組み込むには、即時の報酬/作業の分割/進捗の見える化/社会性/言い換えの5つを使う。
って感じになります。「大事だから頑張る!」ってのは正しいんだけど、そのベースに「楽しさ」を置かないかぎり、習慣にはなりづらいのでご注意ください。どうぞよしなに。