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BMIの時代は終わり?これからは「ウエスト÷身長」が健康の新指標じゃないの説

 

 

健康診断で「BMI(ボディ・マス・インデックス)」の数値を見て、一喜一憂したことがある人は少なくないでしょう。健康レベルを診断するための定番の指標ですからね。

 

ただし、近年はBMIへの批判も増えてまして、たとえば「体重が標準なのに健康を害している人」や「見た目はがっしりしてるのに“肥満”と判定されてしまう人」などがいるため、「いまいち正確性に欠けるのではないか?」って指摘も多いんですよね。シンプルな数字なだけに誤差が出てしまうのは仕方ないとこですが。

 

では、どうすればより正確に「自分の体が健康かどうか」を知ることができるのか?ってことで、近ごろじわじわと注目を集めているのが、「ウエスト÷身長の比率(以下WHtR)」であります。これは「ウエスト÷身長」の計算で算出する指標で、こちらもシンプルではありますが、実はBM Iよりも心臓病や糖尿病、さらには寿命を正確に予測してくれるんじゃないかと考えられるんですな。

 

この問題については、近年なかなか良いメタ分析(R)が行われまして、20の先行研究をまとめた上で、

 

WHtRの高値(すなわち中枢性肥満)は、全死亡および心血管死のリスク上昇と有意に関連していた。

 

と結論付けております。これを見ると、やはりなかなか使える指標なんじゃないかと思うわけですね。

 

では、具体的にWHtRは何が良いのかってことで、まずはBMIの限界をおさらいしておきましょう。まず前提として、BMIってのは「体重(kg)÷身長(m)の2乗」で算出される数値で、以下のような分類が一般的っすね。

 

  • 18.5未満:低体重
  • 18.5〜24.9:標準
  • 25〜29.9:肥満(1度)
  • 30以上:高度肥満(2度以上)

 

しかしながら、この計算式にはいくつかの根本的な問題がありまして、

 

  • 問題① 筋肉と脂肪を区別できない:BMIは「体重」という全体の数字で評価してしまうため、筋肉質な人も“肥満”とみなされることがある。特に筋トレ愛好者やアスリートなどは、この影響を強く受ける。

 

  • 問題② 脂肪の「位置」に無関心:同じ体重・身長でも、「皮下脂肪が多い人」と「内臓脂肪が多い人」では健康リスクがまるで違う。BMIではこうした脂肪の質や分布を判定することができない。

 

  • 問題③ 背の高い人が不利:BMIの計算式は単純に「体重 ÷ 身長の2乗」で決まるため、身長が高い人ほどBMIが上がりやすくなってしまう。つまり、背が高いだけで“肥満”と判定されるケースもある。

 

みたいになります。これだけの要因があるとBMIへの懐疑論が出てしまうのも、無理からぬとこではあります。

 

で、ここで登場するのが「ウエスト÷身長」、つまりWHtR(ウエスト・トゥ・ハイト・レシオ)でして、上述のメタ分析によれば、WHtRにはこんなメリットがあるんだそうな。

 

  • 内臓脂肪の蓄積を反映しやすい
  • 身長差を補正できる
  • シンプルかつ再現性が高い
  • 医療現場でも簡単に使える

 

ということで、たとえば、BMIが「23」で一見健康そうに見えても、ウエストがやたら太い場合は、実際には心臓病や糖尿病のリスクが高い可能性があるだろうと判断できるわけっすね。これは確かに使えそうですなぁ。

 

さらに、メタ分析では以下のような結果も出てたりします。

 

  • WHtRが高い人ほど、心疾患リスクが大幅に増加する
  • 全死亡リスクも、WHtRのほうがBMIより強く予測できた
  • 医療現場でも「シンプルで効果的なツール」として推奨される

 

研究では、BMIよりもWHtRのほうが、より早期にリスクを検出できると結論づけており、これは良さそうですねぇ。

 

じゃあ、「健康的なWHtRはどのくらいなの?」ってことですが、これについて明快なガイドラインを提示してくれるのが、2014年に発表された研究(R)であります。ここでどんな目安を出してくれてるのかと言いますと、

 

  • WHtRの範囲が……
    • 0.4〜0.5 健康的(理想)
    • 0.5〜0.6 リスク増加(注意)
    • 0.6以上 高リスク(要対策)

 

って感じです。たとえば、あなたの身長が170cmだったとしたら、ウエストは85cm以下が理想ラインということになりますね。もしそれを超えているようなら、いろいろと生活を見直すタイミングかもしれません。

 

また、この研究ではさらにわかりやすい目安も提示されてて、

 

「ウエストは身長の半分以下に保つべし」

 

って感じになります。これはシンプルでいいっすね。

 

ちなみに、「ウエストってどこを測ればいいの?」みたいな質問もよく受けるんですが、これはおへそから2cm上あたりで、一番くびれている部分をメジャーで水平に測るのが基本です。

 

計測の際は食後すぐやトイレ前は避け、息を吸い込んで腹を凹ませたりせずに、朝イチや就寝前などの毎回同じタイミングで行ってくださいませ。これらを守れば、自宅で簡単にWHtRをチェックできるようになりますんで。

 

というわけで、あらためて話をまとめておくと、

 

  • WHtRは「ウエスト÷身長」で算出(たとえば身長170cmなら、ウエスト85cmが基準)で、0.5未満が理想

 

  • WHtRはBMIよりも病気や寿命との相関が強く、食事、運動、睡眠で十分に改善可能

 

みたいになります。かつては「体重を落とせばOK」というのが一般的な健康の考え方でしたが、今はむしろ「どこに脂肪がついているか」が重要な時代だと申せましょう。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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