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炎症ケアの真髄はメンタル管理にあり!  ハーバード大研究が示した「炎症を抑える3つの心の習慣」とは

  

 

炎症ヤバい!と言い続けて、もう10年ぐらいになる当ブログ。

 

それでも一応おさらいしておきますと、「炎症」ってのは「風邪をひいたときの喉の腫れ」や「ケガをしたときの赤く腫れた部分」のことで、免疫システムが「異常事態」に対応するための生理的な反応であり、ウイルスや細菌と戦うために欠かせない身体の反応のことです。炎症には急性炎症と慢性炎症の2種類がありまして、

 

  • 急性炎症:短期間の炎症で、風邪やケガの際に起こるもの。赤み、腫れ、発熱などが特徴。
  • 慢性炎症:長期間にわたって続く低レベルの炎症。特に原因が明確ではないことも多く、老化、生活習慣病、メンタルヘルスの悪化と関連している。

 

って感じになります。ここで、問題になるのは「慢性的な炎症」で、ここ数年の研究では、こいつが老化や生活習慣病の主な要因であることが明らかにされてたりします。糖尿病、心血管疾患、認知症、がんなど、多くの病気が、慢性炎症と関係しているんですな。しかも、慢性炎症ってのは自覚症状がほとんどないのが怖いところで、知らないうちにじわじわと健康をむしばみ、最終的に重大な病気のリスクを高めてしまうんですね。

 


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では、どうすれば炎症を抑えられるのかってことで、よく言われるのが「抗炎症薬」「オメガ3脂肪酸」「地中海式ダイエット」といったアプローチであります。しかし、新しい研究(R)は、炎症対策には「心理的抗炎症剤も超大事だぞ!」ってコンセプトが提案されてておもしろかったです。これはハーバード大学などの研究で、1,244名の男女(平均54歳)を対象に、9年間にわたって「メンタルの変化」と「どれぐらい体が炎症してるか」を調べてみたら、以下の3つの要素が「炎症を抑える効果を持ってる」ことがわかったというんですな。

 

  1. コントロール感:「自分の人生を自分でコントロールしている!」と感じる人は、慢性炎症が少ない傾向があったそうな。これはかなり納得のいく話で、「自分の運命は自分で決める!」と信じている人は、ストレスをうまく管理できるでしょうから、そのぶんだけ健康的な生活習慣を続けやすいでしょうからね。逆に、「どうせ何をやっても無駄だ…」と感じていると、ストレスホルモンが過剰に分泌され、炎症を引き起こす可能性が高くなるのもわかりやすいところであります。


  2. 人生の目的:「なぜ自分は生きているのか?」という問いに対して明確に答えられた人ほど、体内の炎症レベルも低かったんだそうな。これは以前から他の研究でも指摘されることでして、「人生の目的を持つことは長寿と関係がある」というデータもあったりしますからね。たとえば、2019年のJAMAの研究だと、「人生に目的を持つ人はそうでない人より死亡リスクが低い」と報告されたそうで、こちらも重要なポイントっすね。目的を持つことができれば、メンタルが安定するだろうし、健康的な行動(運動、禁煙、良好な睡眠)を取る可能性も高くなるだろうから、これも理解しやすいっすね(私は人生に目的がない人間なので、ここらへんには問題を抱えてますが……)。


  3. 社会的サポート:最後は「社会的サポート」で、「自分を支えてくれる人がいる」って感覚のことですな。これはもう当ブログでも鉄板の知見で、過去にも「孤独は喫煙や肥満と同じくらい健康に悪影響を与える」って研究は山ほど出てますからねぇ。社会的に孤立していると、慢性ストレスが増え、炎症マーカーが上昇しやすくなるのは当然でございましょう。

 

ってことで、いずれも過去にこのブログで取り上げてきた観点ばかりでして、私としても納得感がありました。データを見てますと、これら3つを持っている人は、明らかに慢性炎症が少なく、9年後の健康状態が良好で、慢性疾患も少ない傾向がありますんで、意識して取り組んでいきたいとこっすね。

 

では、どうすればこれらの心理的要素を高められるのかって話になりますが、残念ながらこの論文には具体的なアクションプランはついておりません。ただし、過去のデータもふまえてみれば、おそらく「以下のような対策が効くんじゃないかなー」とか思っております。

 

 

コントロール感を高める方法

コントロール感は、「自分でいろいろ決めてるなぁ」って感覚を積むのが大事なので、たとえばこんな練習が効くはず。

 

  • 1日のスケジュールを自分で決めて、小さく決定する回数を増やす。たとえば、「起きたらまず白湯を飲む」「ストレッチをする」「ニュースを読む」みたいに自分なりの習慣を作ったり、上司やクライアントからの指示に対しても「どの順番で進めるか」「どの方法で進めるか」を自分で決めたり、寝る前は「読書する」「スマホは見ない」「リラックス音楽を聴く」みたいに夜の行動を意図的に決めておく。

 

  • 「できること」と「できないこと」を分け、対処可能な問題に集中する。たとえば、「できること=締め切りに間に合うよう計画を立てる、質問があれば上司に確認する。できないこと=上司の機嫌をコントロールする、急な仕様変更」みたいな感じ。

 

  • 「もし〇〇になったらどうする?」と事前に対策を考えておく(予測力をつける)。たとえば、「もし急なクレームが来たらどうする? →まず事実確認をし、すぐに上司に報告する」「もしプレゼンで質問攻めにあったら? →想定質問をリストアップし、事前に回答を用意する」みたいな感じ。

 

 

人生の目的を見つける方法

こちらは一生をかけてやれそうなことを見つけるのが大事なので、たとえばこんな練習が効くはず。

 

  • 「自分が本当に楽しいと思えること」を書き出す。たとえば、「休日にカフェ巡りをするのが楽しい」「映画の考察をするのが好き」「昔好きだったピアノを久しぶりに弾いてみたい」「とりあえず美術館に行ってたい」みたいな感じ

 

  • 仕事や趣味で長期的な目標を持つ。たとえば、「5年後に管理職になれるように、マネジメントスキルを学ぶ」「フリーランスとして独立するために、副業で実績を作る」「英語を使う仕事をするために、TOEIC800点を目指す」「デザインの仕事を増やすためにAdobeの資格を取る」みたいな感じ。

 

  • 社会貢献活動やボランティアを試してみる。たとえば、「週1回、近所の公園のゴミを拾う」「読み聞かせボランティアをする」「子ども向けのイベントでボランティアスタッフをする」「Wikipediaの翻訳プロジェクトに参加する、みたいな感じ

 

 

社会的サポートを強化する方法

友人や家族との関わりを増やすのが重要なので、たとえばこんな練習が効くはず。

 

  • 週に1回は信頼できる友人や家族と話す。たとえば「毎週金曜の夜は親友と30分電話する」「土曜の午前中は実家の母と話す」みたいにルール化する。

 

  • オンライン・オフライン問わず、新しいコミュニティに参加する。たとえば、 近所のスポーツクラブ、料理教室、ボランティア活動に参加したり、 趣味のDiscordグループやFacebookグループに参加し、気軽にコメントしてみたりとか。

 

  • 「助けを求めるのが苦手」な人は、まずは軽い相談から始めてみる。 たとえば、「この本、読んだことある?」「最近○○について調べてるんだけど、詳しい?」みたいに声をかけたりとか。

 

 

ってことで、いろいろ書いてきましたが、「心理も炎症レベルに影響を与えるよー」ってのはぜひ頭に入れておきたいポイントでしょう。簡単に言えば「人生に目的があり、自分の人生をコントロールできる感覚があり、信頼できる人がいる」のが大事だって話でして、自分でも定期的にここらはチェックしないとなーとか思いました。どうぞよしなに。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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