人間関係を激変させる究極の心理スキル「承認(Validation)」とは?
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『承認(Validation)』って本を読みました。サブタイトルは「革命的な心理学スキルが、あなたの人間関係を変え、影響力を高め、人生を一変させる!」みたいな感じで、ゴリゴリの自己啓発って感じすけど、著者のキャロライン・フレック博士はスタンフォード大学の講師もやってるし、デューク大学で神経科学の博士号も持ってるしで、内容はちゃんとしております。
この本では、認知行動療法をベースにしつつ、「いかに人を動かすか?」をまとめてくれてて有用でした。タイトルのとおり、他者の経験を認め、受け入れることが人間関係を強化し、対立を解消させる最も強力な方法だよ!と主張してまして、非常に納得させられました。
ということで、本書から個人的に勉強になったポイントを見てみましょうー。
- フレック先生の定義では、承認とは「受容、注意さ、理解、共感を伝えること」となる。簡単に言えば、承認とは「あなたがそこにいることを私は理解し気にかけていますよー」と相手に示すことだと言える。
- 「承認」は人間関係を改善する効果が大きい。承認がうまい人は、人間関係の質がよく、他者との親密さや心理的安全性も高いことが多い。心理学の研究では、さまざまなタイプの人間関係の質を、「承認」が一貫して最も強く予測することがわかっている。社会的な人間関係が乏しい人は、1日に15本のタバコを吸うのと同じぐらい早期死亡率が高くなる。人間関係の質が高まると、生存の確率が50パーセント高まるとのデータもある。
「承認」は対立の場面でも役に立つ。 通常、私たちは、動揺すると交感神経系が優位になり、戦う、逃げる、固まるという反応のいずれかに陥りやすくなる。「承認」はこの反応を和らげる働きがあり、交感神経の興奮を減らすことが実証されている。 ストレスの大きい状況下で「承認」を行うと、心拍数、皮膚電気反応(発汗)が減少する。
- かように、あらゆる人間関係において「承認」は不可欠であり、これは自分自身にもおよぶ。自分の感情を承認する方法を知ることは、自己への思いやりを育み、自分自身との関わり方を改善するために不可欠と言える。
- 「承認」は相手を賞賛することではなく、判断の一種である。「あなたの外見や行動を認めており、そのあなたを受け入れる」という判断を示すことだと言える。多くの人は「他人から承認されようとするな!」とアドバイスするが、これは「承認」と「賞賛」を混同した態度だと考えられる。
- 「承認」は問題解決でもない。問題解決とは、例えば「テストの結果が悪かったなら単語の復習をしようか?」みたいに、詳しい解決策を提案することで相手の反応を変えようとする行為を意味する。その一方で「承認」は、相手の状況を認識し、それに対する反応の妥当性を認めることに焦点を当てる。例えば、「あれだけがんばって勉強したのだから、テストがダメでガッカリするのはよくわかるよ」といった具合である。
- ただし、これは「同意」を意味するわけではないので注意が必要である。たとえ自分がAIに賛成の立場であっても、「AIに仕事を奪われるかも……」と考える人の気持ちを理解することはできる。肯定とはあくまで「私は理解している」「私は気にかけている」という姿勢を示すことであり、 賞賛でも、問題解決でも、同意でもない。
- 「承認」は、人間にとってポジティブ強化として働く。たとえば、犬が「お座り」の命令に従ってご褒美をもらった場合、その犬は将来「お座り」の命令に従う可能性が高くなる。これと同じように、「承認」は脳の報酬中枢を活性化してドーパミンなどの神経伝達物質を放出を促し、ポジティブな強化をもたらす。つまり「承認」とは、「お金をもらう」や「美味しいものを食べる」と同じぐらい楽しいものなのだと言える。
- 認知行動療法のセラピストは、「承認」を確実に伝えるための特定のスキルを訓練によって習得する。フレック先生は「承認のはしご」と呼ばれるモデルを提唱しており、ここにはマインドフルネスを伝えるスキルが2つ、理解するスキルが3つ、共感するスキルが3つ含まれる。
- 「マインドフルネスのスキル」の例としては、「傾聴」がある。「承認」は真実でなければ効果がないため、相手の経験を理解したり共感したりできない場合は、マインドフルネスのスキルだけを使うことになることも多い。「傾聴」を行う際は、次の2つの質問に答えることに集中する必要がある。
1) この人の主張を、より良く理解するにはどうすればよいか?
2) それの主張が、その人にとって重要な理由はどこにあるのか?
- 傾聴においては、自分の考え方を伝える必要はない。マインドフルネスな傾聴とは、「私があなたの話をどのように聞いたか?」を伝えるものである。そのため、上記の質問に集中することで、反論を考え出してしまったり、考えが散ってしまったりといった問題を避け、相手への関心を示して、より的を射た質問が自然と浮かぶようになる。
- 「理解スキル」を適用するには、「相手の反応がどのように起きているのか?」を理解する必要がある。たとえば、相手が経験していることに対して、「自分も同じように反応するだろう」と想像するのが理解スキルの基本である。「あなたと同じ立場だったら、誰でもセカンドオピニオンを求めるよ!」「私も同じことをしたよ!」などと心から伝えることができれば、それだけでもコミュニケーションスムーズに進むことも少なくない。
- 最後の「共感スキル」は、気づき、理解、共感を相手に一挙に伝える技術のこと。中でも大事なのは「感情移入」で、相手の悲しい話に涙が溢れたり、良いニュースを聞いて嬉しくなったりといった状態を自然に呼び起こすのが重要となる。いわば感情移入とは、能動的な参加者として相手の経験に入り込む行為だと表現できる。
- 以上のスキルには、よく見かけるアドバイスが多い。しかし、その本当の力を実感するためには、これらのスキルを使うタイミングを見極める必要がある。タイミング、テクニック、必要に応じて方向転換する方法を理解するといった些細な調整が、「承認」の強さに影響する。
- 人の話をチェックする場合は、特に相手の感情をジャッジしないように注意が必要である。人間の感情は常に「正しいもの」であり、相手が感じていることを判断してはいけない。
たとえば、相手が「ワクチンは体に悪い!」と信じていたら、不安や恐怖を感じるのは当然のことである。その結果として、相手が反ワクチンの政治家を支持するのも妥当なことだと言える。このようなケースでは、この人物の思考は誤った情報に基づいているが、そこから派生する感情と行動は理解できるものとして扱う必要がある。