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食肉の抗生物質ダメージってどんなもんですか?【イベント質問のお答えシリーズ#13】

  

ということで、「対談イベントの質問にお答えしていくシリーズ」の第13弾です(#1,#2,#3,#4,#5,#6,#7,#8,#9,#10,#11,#12)。今回も、対談のテーマとは関係ない、雑多な質問にお答えしていきまーす。

 

 

食肉の抗生物質ダメージとか

腸内環境の悪化が怖く友人と外食にいけないのですが、鶏肉や食肉の抗生物質に関する最新の知見を教えて欲しいです。

 

正直、食肉に残る抗生物質にどれぐらいのダメージがあるのかは、これといった長期研究もないので判断が難しいところです。なんだけど、ここ数年はWHOとかが「家畜への抗生物質を控えようぜ!」と提案してまして、世界的に使用量が減りつつあるのはトレンドじゃないかと思うわけです。

 

それは日本でも同じで、トレンドに合わせて使用量を減らす取り組みが進んでる印象っすね。いまの残留の基準値もかなり厳しめに設定されてるし、これを超えたら出荷が停止されたりするしで、おそらくこのブログを始めたころと比べれば、状況はかなり改善してるんじゃないかと。あくまで推測になっちゃいますが、基準値を下回っていれば腸内細菌バランスを大きく乱す可能性は低いと思われるんで、腸内環境がよほど乱れている方でなければ、そこまで不安を感じなくてもいいんじゃないかなーと最近は考えております。

 

 

 

昇進のメリットデメリットとか

職場における昇任について立場が上になればなるほど、業務負担と自己犠牲が多い職場にいます。健康を害するような勤務時間なども見て明らかなのですが、科学的に昇任するべきか否か等は示されていますでしょうか。

 

イギリスの公務員を対象にした試験(R)だと、「会社の中で地位が高い人ほど健康だよー」と報告してたりしますね。これは、昇進によって“裁量権”と“コントロール感”が増して、ストレスが減るからだと考えられてまして、昇進が一概に悪いとは言えないかもです。もちろん、この研究は「公務員」が対象なので、質問のように「業務負担と自己犠牲が多くなる職場」だと、同じ知見は当てはまらない可能性が高いでしょうね。

 

ただ、「職場のストレスってどうして増えるの?」って問題については、割と複数の研究で知見は一致してまして、

 

  • ジョブ要求(仕事量・時間・責任・難易度など)が大きいとストレスが高まる
  • コントロール(裁量権・自由度)が小さいとストレスが高まる

 

ってあたり間違いないんじゃないかと思うわけです。そう考えると、質問者さんのように業務負担と自己犠牲が増えればストレスは上がるのは間違いなく、さらにそこで組織文化や上層部のせいで仕事の自由度が上がらないなんてことがあれば、昇進の健康メリットは得られづらいでしょうねぇ……

 

 

 

仕事をすると健康を害しちゃう問題

(前略)一つだけ悩みがあります。私は仕事に集中するあまり姿勢が悪化しがちで、そのせいでストレスも抱えていました。その過程で、「仕事をする=健康に害悪がある」というイメージが自分の中で成立してしまい、全く仕事にやる気が出ません笑

 

でも、そうは言っても、資本主義社会の中では働いて稼がないと、社会の役に立たないと、、、みたいなジレンマもあります。いまのこんな私に何か特効薬的なものってありますか?笑

 

んー、ご質問を拝見すると、「仕事をするほど健康に悪い」って認知が脳に染みこんだ状態だと思われるので、特効薬的なものを処方するのは難しいんじゃないでしょうか。実際に仕事が健康に悪いというよりは、あくまで「物事の捉え方」の問題だと思いますんで、これは毎度おなじみ認知行動療法が役立つんじゃないでしょうか。実践法としては、最近の本だと、

 

 

を参照するのがわかりやすくて良いんじゃないかと。簡単に言えば、いまは「働くほど体が壊れる!」って自動思考がある状態だと思いますんで、これがいつ発生するかをモニタリングして、「本当に仕事がすべて健康に害悪を及ぼすのか? そう思う根拠は何か?」「全員が同じように体を壊しているのか? そうではないとしたら、違いはどこにある?」みたいに自問してみる感じになるでしょうね。

 

 

 

小中高生の健康習慣とか

生涯にわたる運動習慣や、健康的なライフスタイルの獲得のために、高校生以下への教育、特に学校教育ができることには、どのようなことがありますか?

運動習慣や食習慣についての研究は、成人以上を対象としたものが多い印象です。小中高生への介入の効果を調査した研究や、成人期の生活まで追跡した研究があれば教えてください。

 

子供や十代の食事介入だと、CATCH(R)ってプログラムが有名だと思います。このタイプの介入はどれもよく似ていて、行動経済学の知見を使ってることが多いんじゃないかと。たとえば、

 

  • 食事の内容を、「たくさん食べよう!」「ほどほどに食べよう!」「控えめに食べよう!」に分類して、子どもたちにも分かりやすく教えてあげる。
  • Googleがやってるみたいに、食品をヘルシーな順に取りやすい位置に配置してみる。
  • 子どもたち自身が食べたものや運動内容を記録させ、日々の達成を実感しやすくする。

 

みたいな感じです。ここらへんは長期の追跡もやってて、数年後も健康的な習慣が続いたと報告されてますね。どれも行動経済学の基礎みたいな考え方なので、「行動経済学の使い方」みたいな本を参考にしていただくと、オリジナルの介入を設計できるようになって良いのではないでしょうか。

 

 

 

元気とはなにか問題

最近、元気の根源と言うのをテーマに仕事をしています。ただ、曖昧さが目立つテーマ故にどうしていいかわからずにいます。ただ、現段階の行き着いた答えは、ポジティブな刺激とネガティヴの排出が主な元気かな?と思っています。

 

ポジティブな刺激は、魅力的である人、すなわち自分にないものを持っている人、なのかな?と感じています。ただ、魅力には個体差があるので、ネガティヴの排出の方が根源になりやすい?テーマへの近道ではあるのかな?と感じています。

 

祐さんの考える元気とはどのような状態で、元気の根源はありますか?また、会えば元気になれるような方はいますか?

 

私が考えてる元気は「肉体が設計どおりに動き、環境と齟齬を起こしていない状態」みたいな感じですかねぇ。なにせ進化医学が好きなので、どうしてもこの考え方に沿った発想になっちゃうんですよね。

 

もちろん、ご質問にあるような「前に進むエネルギーが満ちている状態」こそが“元気”だと捉えるのもありなんですけど、私の場合はなにせ根が陰キャなもので、

 

  • ネガティブな感情があってこそのポジティブだから、常にポジティブを目指すのもなぁ

  • 前に進むエネルギーがあればよいけど、それを狙って出すのは難しいから、基本は低体温で動くことを考えたいなぁ

 

とかすぐに思っちゃうんで(笑)、やはり上記の考え方がしっくりきますかねぇ。なので、私にとっての元気の根源は「体を機能させるために必要なことをちゃんとやる」みたいになります。あと、私はぶっ飛んだ人の話を聞くのが好きなので、そういう人は「会えば元気になれるような人」と言えるかもしれません!

 

 

 

上司への対応とか

ASD傾向が強い上司への対応笑

 

んー、難しい。「ASD(自閉スペクトラム症)傾向が強い上司への対応」とひと口に言っても、個人差が大きすぎますからねぇ。なのであくまで一般論になってしまいますが、

 

  • ASD傾向が強い人は比喩や婉曲表現が苦手なので、「〇〇していただけると助かります」「締め切りは○月○日までにお願いします」みたいに、はっきり具体的に伝えるべし!特に数値や具体的根拠を示すのが大事!

 

  • ASDっぽい人は専門分野へのこだわりを持つ人が多く、苦手なコミュニケーションパターンがはっきりしている人も多い。たとえば、「メールのやり取りは速くて完璧なんだけど、電話応対は苦手!」みたいな状態が出てきたりするんで、そこらへんの得手不得手を見極めておくと、いらぬ摩擦が減るんじゃないでしょうか。「上司は完璧を求めるタイプだから、作業工程をいちいちチェックする!」「エビデンスを根拠に話すとすぐ納得するが、ふわっとした報告は嫌う!」みたいな感じっすね。

 

  • ASD系の人は、やたらポーカーフェイスなせいで感情を読み取るのが難しかったりするので、勝手に「嫌われた!」「何も響いてない!」とか思って落ち込まない。

 

みたいな対策は心がけておくと良いのではないでしょうかー。とにかく、具体的かつ明確なコミュニケーションが基本って感じでよろしくお願いします。

 

 

 

内向的な男のモテとか

質問は「内向的な男がアゲマン美女にモテる科学的アプローチ」についてです。ふざけているようで、脳の目的の「生存」と「繁栄」の片面と思い、真面目に気になっております。

 

たとえば、人生の成功者(社会的地位が高い、年収が高いなど)男性にはどのようなパートナーの傾向があるのか、「魅力的な女性」に関する研究のお話がありましたら是非お聞きしてみたいです。

 

当然、“アゲマン”の研究なんてないので、そこらへんは何とも言えないですけど、後段のご質問については「有害な男性のふるまい」のデヴィッド・M.バス先生がかつて出した「科学者が徹底追究! なぜ女性はセックスをするのか?」って本が参考になると思います。ヒドい邦題ですけどバス先生はちゃんとした研究者で、どんな男性がどんな女性からモテるのかってのを大規模なリサーチで調べてくれているので、なにかしらの参考になるんじゃないでしょうか。

 

ただ問題点としては、

 

  • すでに絶版で、中古市場ではバカみたいな値段がついてるので、図書館で探さねばならない
  • 日本語版は割と重要なところを削除しているので、原著からボリュームがだいぶ減ってる

 

ってとこなんですよねー。なので個人的には、原著である「Why Women Have Sex」を当たることをおすすめします。バス先生の英語はシンプルで読みやすいので、そんなに英文が得意でない人でもいけるはず!

 

 

結局

  結局何の話をされてたんですか?

 

このシリーズの過去エントリ(#1,#2,#3,#4,#5,#6,#7,#8,#9,#10,#11,#12)をお読みいただくと、全容がつかめるんじゃないかと!笑

 

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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