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言語化の能力を高めて創造性を上げるにはどうすればいいんですか?【イベント質問のお答えシリーズ#2】

 

 

ということで、前回お伝えした「対談イベントの質問にお答えしていくシリーズ」の第2弾です。今回もまた、対談イベントの大きなテーマだった「創造性アップ」に関するご質問にお答えしていきましょうー。

 

 

 

創造性とリラックスのバランス

創造性や年収、成果を最大化する集中とリラックスの目安の時間やバランスはあるのでしょうか。1日や1週間の内に何時間集中する時間やリラックスする時間を作った方がいいのかある程度の目安を知りたいです。

 

このご質問は、「良いアイデアを出すためには、定期的にリラックスしてぼーっとする時間を作ったほうがいいよ!」って知見をふまえたものだと思われます。集中して作業に取り組んでいる時ってのは、どうしても脳が凝り固まって良いアイデアが出ないことが多いので、意図的に頭をゆるめてやらねばならないんですよ。

 

では、1日のうちにどんぐらいリラックスすべきかってことですが、私としては自分のクロノタイプを見極めた上で、体内時計に適したスケジュールで「ぼーっとする時間を組み込むのがおすすめです」。目安としては1日30分〜1時間を確保しつつ、仕事をしている際にも30分ごとに5〜15分休むぐらいにしておくと良いのではないでしょうか。私の場合は、寝る前の1時間を「ひたすらぼーっとする時間」に当てております。

 

 

 

小説を映像化した作品は創造性アップに効くか?

小説を読むことのメリットを伺い、また「パレオな男ブログ」も拝見しました。小説を読む時、映画化等された作品を観た後に読むのと、映像化されたものを見ずに小説を読むのとでは、創造性アップという効能に違いがあるでしょうか。

 

映像化された作品を先に観るか観ないかが、創造性の向上に影響するのかを調べた研究ってのはないんですが、私の意見としましては、

 

  • 映像化作品を観た後に小説を読む:登場人物や舞台設定のビジュアルが固定され、小説を読む際の想像力が制限される可能性は普通にありそう。とはいえ、映画で得た視覚情報をベースにして、小説の細部や内面的描写をより深く理解できる場合もありそうなので、そこは善し悪しかも。とはいえ、イメージが制限されるデメリットのほうが大きそうな気もしているので、「作者が作った世界を可能な限り細かくイメージして読む」という岸本スタイルの読み方をする人には、映像は足かせになるかもしれない。

 

  • 映像化作品を観ずに小説を読む:映像情報に頼らず、文章から自分なりのイメージを構築するため、創造性や想像力に関わる脳のエリアがより活発に働く可能性がある。そのため、創造性を高める目的で小説を読む際には、映像化作品を観ずに原作を読む方が、自分自身の想像力をより活用できて良いんじゃないかなーって気がする。あくまで気がするだけですが。

 

みたいになりますかねぇ。先行研究をもとにした推測でしかないので断言はできないものの、私としては文字情報だけのほうが脳を刺激する力は強いんじゃないかなぁ……と。

 

 

 

リアリストと創造性

リアリストは創造性が低い傾向ありますか?

 

んー、どうなんでしょうね。一般的なリアリストの定義ってのは「客観的な事実や現実に基づいて物事を判断する人」みたいな感じになりますが、これは確かに抽象的な思考や新しいアイデアを出すのが得意なタイプとは脳の使い方が違う気もしますな。

 

とはいえ、創造性ってのはいろんな形で表に出てくるものなので、たとえリアリストであっても、現実的な問題解決や実践的なアイデアを出す際には高い創造性を発揮することも十分にあるんじゃないでしょうか。リアリストはアート系のぶっ飛んだアイデアは出さないかもですが、現実の課題や制約を正確に把握して、その中で最適な解決策を見出さねばならないような場面では、良い発想を出す可能性は十分にあるんじゃないかと。まぁ、これも研究がないので、どこまでも私見ですが。

 

 

 

言語化と創造性

言語化が苦手です。どのようにすれば上手くできるようになりますか?

 

頭の中ではイメージが浮かんでいるのに、それを言葉にするのが難しいと感じます。例えば、ターゲットについて話しているときに「雰囲気のある人ってどんな人?」と聞かれた際、頭の中にイメージはあるのに言葉で表現できませんでした。どうすれば言語化できるようになりますか?

 

言語化力も創造性に欠かせない能力のひとつ。なんせ言語化ができないと頭の中の漠然としたアイデアや感覚を外に出せないし、思考を整理することもできなくなりますからね。これに対して言語化力があれば、アイデアの構造や関連性も明確にしやすくなり、さらに新たな発想や洞察が生まれやすくなるんですよ。

 

ってことで、言語化の能力を鍛える方法ですけど、これもまた無数にありますんで「これ!」ってのは難しいところです。基礎的な力を高めたいなら読書や日記が定番ですが、さらに集中して鍛えたいと思うのであれば、以下の方法も良いかもしれません。

 

  •  好きな作品(映画・小説・ドラマ)をひたすら要約する:自分が面白いと思った映画やドラマを、あえて「A4一枚」「300字以内」など、文字数や紙面を決めて要約。書き終えたら、誰かにその要約を読んでもらい、「話がわかりやすかったか」「内容に興味を持ったか」などフィードバックをもらう。自分が面白いと思っている作品でも、どこが好きだったのかを言葉にするのは意外と難しいので、良いトレーニングになる。

 

  • 「なりきり実況」をしてみる:日常生活の中で目に入るものや、自分が行っていることを“実況中継”のように言葉で説明してみるトレーニング。たとえば料理をしている最中に、「今フライパンに油を入れました。次に玉ねぎを入れて炒めています。徐々に透き通ってきたので、塩をひとつまみ……」という具合に、スポーツ実況アナウンサーがその場をレポートするイメージで行っていく。頭の中に浮かんだイメージを即座に「言葉」に変換する訓練になる。

 

  • 「具体的要素」の分解トレーニング:抽象度の高い表現ほどイメージを言語化するのが難しくなるので、具体的に分解していく癖をつけるのが吉。たとえば、「雰囲気のある人」を言葉にするときは、「“雰囲気”とは何を指しているのか?」を可能な限り細分化するのがポイントになる。具体的には、「声のトーンは低めで落ち着いている」「立ち居振る舞いはゆったりとして姿勢がいい」みたいな感じで、抽象的なものは具体的なパーツの集まりとして捉えると、言語化しやすくなるはず。

 

  • 感覚の掘り下げトレーニング:イメージを言語化する際には、「自分がなぜそう感じたのか?」 を掘り下げてみるのも有効であります。「雰囲気のある人」を言葉にしたいのであれば、「どういうところに“雰囲気”を感じたか?」「どの瞬間に“雰囲気がある”と認識したか?」「自分はどんな気持ちになったか?」などと自問して、答えを探っていってくださいませ。たとえば、「初対面で話したとき、声の落ち着きや喋るテンポが心地よくて、安心感を覚えた」みたいに、自分の反応や印象に注目して言葉を引き出すと、言語化しやすくなるでしょう。

 

また、言語化とは別の観点ですが、自分が感じたことを言葉にする際には「ストーリーテリングの技術」も役立ちますんで、拙著「最強のコミュ力のつくり方」なども参考になるんじゃないかと。こちらもお試しください。

 

 

 

創造性に必要な雑多な情報をどう扱うか

くだらないことも覚えているという話から、私自身も日常生活で多くの情報を取り入れてると感じました。しかし私の場合、重要ではないけど、どうでもよくもない中途半端なことが頭に残り、疲れを感じることがあります。この疲労は対処できますか?それとも創造性的によいからそのままにしておくが良いとかでしょうか?

 

対談イベントでは「創造性を発揮するには、くだらない情報でも頭に残しておくのが大事」みたいな話をしました。どんなに些細な情報でも、頭の中でぼーっと転がしておくことで意外な情報がつながり、思わぬひらめきにつながったりすることが多いんですよね。ということで私は、「そこまで重要じゃないけれど、完全にどうでもいいわけでもない」という中途半端な情報を記録するようにオススメしているわけです。

 

が、このご質問にもある通り、「中途半端な気になりごと」が頭の片隅でぐるぐる回ってしまう問題もよくあることだったりします。小さな情報が思考のスイッチを半端にオンにしてしまい、意識のリソースを微妙に消費し続けちゃうような状態っすね。

 

この問題に立ち向かうには、以下のような対策が考えられるでしょう。

 

  • 書き出して“外在化”する:基本、人間の脳ってのは「気がかりなこと」を外部のツールやリストに書き出すと安心するようにできてまして、これは専門的に“外在化”などと呼ばれます。これは、きちんと文章化する必要はなく、思いついたキーワードだけでも書き出しておけば十分。紙のメモ、スマホのメモアプリ、タスク管理ツールなど、とにかく“頭の外”に移すだけでも、疲労は減るでしょう。

 

  • 定期的に見直しをして“判断”する:外部化したメモやリストを、週に1度でも見返してみると、「まだ必要なのか」「もう不要になったのか」を判断しやすくなります。この“判断”のプロセスが、頭の中の中途半端なタスクを減らし、余計な疲労を防いでくれるはず。

 

  • あえてモヤモヤし続けるのもアリ:創造性って観点からすると、ある程度の“もやもや”を残しておくことでひらめきにつながることも多いので、あえて一部の情報は外在化はせずにほっとくのもよしでしょう。それがあまりにストレスになるなら別ですが、脳に適度な刺激を与えている限りは放置プレイも吉であります。

 

 

ってことで、今回も長くなったのでこのへんで。イベントの回答シリーズは、まだまだ続きます!

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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