今週の小ネタ:朝の光で睡眠の質が上がる、結婚はメンタルに効く? 問題、「みんな愛を求めて結婚してるのか?」 問題
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
朝の光で睡眠の質が上がる説リターンズ
「朝に光を浴びよ!」ってのは、このブログで何度も言ってきた話であります。「朝スッキリ起きられない……」みたいなお悩みがあるなら、とりあえず朝に太陽の光を浴びてみるのがよかろうと思うわけです。人間の体内時計は太陽の光にかなり左右されてるんで、朝しっかり光を浴びると理想的な睡眠サイクルを作れるんですよ。
で、最近の研究(R)も、朝の光をしっかり浴びるほど、夜の寝つきが良くなり、翌朝もスッキリ起きられるぞ!って話になってて良い感じでした。
こいつはブラジルの高校生35人を対象にした研究で、1日の光の浴び方が睡眠にどう影響するかを調査したもの。参加者はリストバンド型の「アクチグラフ」を装着してもらい、同時に1日の光の浴び方を記録したんだそうな。その上で、朝・昼・夕・夜の4つの時間帯に分けて、どれくらい光を浴びたかを分析したところ、こんな結果が認められました。
- 朝の光を浴びると、夜の寝つきが早くなる:朝6時~9時の間に強い光を浴びると、その日の夜に早く眠れる 傾向があった。100ルクス多く浴びるごとに、約8分早く眠りについた。
- 光をたくさん浴びた日は、翌朝も早く起きられる:日中の光を浴びる量が多いほど、翌朝の起床時間が早くなった。具体的には、100ルクス増えるごとに、約7分早く起床 していた。
- 夜に強い光を浴びると、寝つきが遅くなる:逆に、夜に強い光(スマホやPCの画面など)を浴びると、就寝時間が遅くなりやすかった。
- 平日と休日で光の浴び方が違う:平日は朝6時~9時に光を多く浴びる傾向(学校があるから)。休日は、午後3時~6時に光を多く浴びる傾向(外出が増えるから)。休日のほうが夜ふかししがちだが、その分長く眠ることが多かった。
ざっくりまとめると「朝の光をしっかり浴びるほど、自然に早寝早起きになれる!」 ってことですな。つまり、睡眠の質を改善したいなら、
- 朝起きたらすぐにカーテンを開けて日光を浴びる
- 学校や仕事前に散歩やジョギングをする
- 日中はできるだけ外に出る
って対策が重要だと考えられるわけです。私の場合は、住んでる部屋の窓がデカいので、起き抜けに遮光カーテンを全開にして、太陽の光を浴びるようにしております。
もちろん、今回の研究はたった35人の高校生を対象にした小規模な調査なので、「光が睡眠を改善する」と100%断言するにはさらなる研究が必要ではあります。ただし、過去の研究でも「朝の光が睡眠を整える」ことは何度も確認されている ので、今回の結果はかなり妥当なんじゃないかなーと思ってたりします。「最近、寝つきが悪いな……」と思ったら、まずは 「朝の光習慣」 を試してみてくださいませー。
結婚はメンタルに効く? 問題の大規模研究
結婚したほうが幸せなのか? それとも独身のほうが自由でストレスが少ないのか? これまた昔から議論が続くテーマでして、このブログでも何度か関連研究を取り上げてきたわけです。最新の研究(R)は「結婚はメンタルヘルスにメリットがあるのか?」を調べてくれてて参考になりました。
こちらはアメリカ・イギリス・中国・韓国・メキシコ・インドネシア・アイルランド の7カ国で行われた調査で、10万人超のデータを分析。さらに、2万人以上を数年間追跡するという二段階の分析を行って、「現在のうつ症状と結婚の関係」「未婚者が将来的にうつになりやすいか」って2つのポイントを検証しております。全体として、かなりガッチリした分析だなーって印象でして、このテーマに興味がある方には、参考になるんじゃないでしょうか。
さて、気になる結果ですが、ざっくりまとめると以下のようになります。
- 未婚者は、既婚者よりうつ症状を抱えるリスクが高い
- リスクの上昇率は国ごとに異なり、西洋(米・英・アイルランド) の未婚者は特にリスクが高い。東アジア(中国・韓国・インドネシア) では、未婚の影響は比較的少なめ。
- 未婚男性のほうが、未婚女性よりリスクが高い。特に「独身男性」は危険。
- 高学歴の未婚者ほど、うつのリスクが高い
つまり、「結婚してるほうがメンタル的に安定する」ってのは、どうも世界的にほぼ共通の傾向らしいんですな。ただし、文化や社会背景によって、その影響の強さは違うってことらしい。
さらに、この研究では「なぜ未婚者はうつになりやすいのか?」という点にも注目してまして、こんな知見も確認されております。
- メキシコ・韓国・中国の未婚者 は、飲酒と喫煙がメンタル悪化の原因になっている
- 未婚のメキシコ人(独身・離婚・死別) の場合、最大43.8%のうつリスクが喫煙によるもの。ただし、アメリカやアイルランドでは、酒・タバコの影響は少なめ
ということで、どうも「東アジアやラテン系の文化を見る限り、未婚者がストレス発散のために酒やタバコに走りやすい」って可能性が示唆されるわけです。要するに「未婚が直接うつを引き起こす」のではなく、未婚によるストレスが「酒・タバコ」を増やし、それがうつを悪化させているのかもしれないなーってことですね。
さて、このデータを見て「じゃあ結婚すればハッピーになれるの?」と思った方もいるかもしれませんが、個人的にはちょっと微妙な感じもしております。というのも、確かに未婚者はメンタル的にリスクが高い傾向にあるんだけど、このデータってのは、未婚でも健康習慣を改善すればリスクを下げられるってとこを示してるとも言えるんで。未婚者だろうが、飲酒・喫煙をコントロールし、社会的なサポートを確保できれば、独身だろうが何の問題もないはずなんですよね。
つまり、このデータは「結婚=幸福」って話ではなく、「結婚は社会的なサポートを得る一つの手段」くらいに捉えた方がよさそうっすね。
「みんな愛を求めて結婚してるのか?」 問題の大規模研究
「みんなどんな理由で結婚してるの?」って疑問がよくありますな。これは昔から議論されてきたテーマでして、「愛なの?金なの?顔なの?」みたいな話は誰もが思ったことがあるんじゃないでしょうか。
で、最新の研究(R)は、「結婚の理由」問題を掘ってくれてまして非常に良かったです。
こいつは世界90カ国の8万6,000人以上を対象にした調査(R)で、みんなに 「あなたが結婚相手を選ぶとき、愛はどれくらい重要ですか?」って質問をぶつけて、「絶対に愛が必要な人たち」「愛がなくても結婚できる人たち」を分別したんだそうな。
その結果、なにがわかったかと言いますと、
- 低所得者ほど愛を重視する:全体的に、「お金がない人ほど愛を大切にする」 傾向が多め。低所得者ほど愛がないと結婚せず、高所得者ほど 愛よりも他の要素(経済的安定、相性)を重視しやすかった。この傾向は「愛がパートナーシップの安定剤になる」ことを示唆しており、経済的に不安定な人ほど、精神的な支えとしての愛が必要になるのだと思われる。
- 女性は男性よりも愛を求める:性別による違いも顕著で、女性のほうが愛を結婚の条件として重視していた。男性は「愛がなくても結婚できる!」と考える傾向がやや強く、これは女性は妊娠・出産のコストが大きいため、「パートナーがちゃんとコミットしてくれるか?」を重要視するからだと思われる(つまり、愛が「パートナーの本気度」を測る指標になってる)。
- 子どもが多い人ほど愛を求める:子どもがいる人ほど、愛を重視する という結果も出ていた。これは、子育てにはパートナーとの協力が不可欠だからだと思われ、育児の負担が増えてしまうリスクを避けようとする心理のせいだと思われる。
- 「発展した国」ほど愛を重視する:国の発展度 との関係も確認され、先進国(アメリカ、ヨーロッパ、日本など)は愛を重視する傾向が強く、発展途上国(アフリカ、中東、アジアの一部) は愛よりも経済的安定や家族の意向が優先された。これは、文化的な違いが影響していると考えられ、先進国では 「個人の幸福」が最優先 されるため、愛のない結婚は受け入れられにくいのだと思われる。一方で、発展途上国では 「結婚=家同士の結びつき」 という考え方が根強いため、愛がそれほど重視されない。
って感じだったらしい。いずれも納得の理由ってかんじでして、もし「私は愛のある結婚をしたいのだ!」と思っているのであれば、経済的な安定を目指さない!ってのが有効になったりするのかもしれません。まぁ愛のために経済的な安定を捨てるのはさすがに嫌なので、地道に「あなたにコミットメントしてますよ!」ってのを伝えるしかないんでしょうが。