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アイスバス vs. ホットバス:筋トレ後の回復に最適なのはどっち?

 

最近アイスバス(冷水浴)の人気が高まってまして、私もサウナのついでに週3〜4で水風呂をたしなんでおります。個人的には筋トレや有酸素運動のあとのリカバリー用に使っているケースが多めっすね。

 

もっとも、実際のところ、本当にアイスバスが筋トレ後の回復にベストなのかは議論が残るところで、一方では2024年頃から「ホットバス(温浴)のほうがアイスバスよりも肉体が回復するんじゃない?」って議論も出てきたんですよ。

 

そこで今回は、最新の研究をもとに「アイスバス vs. ホットバス、どっちが本当に筋トレ後の回復に効くのか?」ってところを考えていきましょうー。

 

参照するのはフランスの研究(R)で、30人のトレーニーを対象に以下の3つの回復法を比較しております。

 

  1. アイスバス(11°C、11分)
  2. ホットバス(41°C、25分、体温38.5-39°Cまで上昇)
  3. コントロール(36°Cのぬるま湯に浸かるだけ)

 

実験では、全員に7セット×10回のレッグエクステンションをやってもらって筋肉を限界まで酷使。その後、それぞれの回復法を実施し、24時間後・48時間後の回復度合いを評価したんだそうな。チェックしたのは最大筋力の変化、筋肉痛、筋疲労などでして、これによって疲れた体は冷やすべきか、それとも温めるべきか問題への答えを提示してくれたんですな

 

では、結果を見てみましょうー。

 

  •  ホットバスは48時間後の筋発揮速度(RFD)の回復が最も早かった。これはどれだけ素早く筋力を発揮できるかを示す指標で、「100kgのバーベルをどれだけ速く押し上げられるか?」「ジャンプでどれだけ瞬時に力を発揮できるか?」といった能力に関わる。

  •  ホットバスグループは24時間後に筋肉痛が回復していたが、アイスバスグループとコントロールグループは48時間経っても痛みが残っていた

  • 最大筋力の回復はアイスバスのほうが早く、24時間でほぼ回復

 

ということで、ホットバスは「爆発的なパワーの回復」「筋肉痛の軽減」に優れ、アイスバスは「最大筋力の回復スピード」に優位って結果ですな。もちろん小さなテストなので、これが必ずしも正しいとは言えないし、過去のデータを見ても「どちらが絶対に優れている!」とは言い切れないんですけど、ざっくり以下のように整理できます。

 

  • ホットバスが向いている人:爆発的なパワー(スプリント、ウェイトリフティング、ジャンプ系競技)を回復したいか、筋肉痛を早く和らげたい人。冷水に浸かるのが苦手な人(←ここ大事)
  • アイスバスが向いている人:最大筋力(パワーリフティング、ウエイトトレーニング)の回復を優先したい人。「アイスバスに入ることでメンタルが鍛えられる!」という心理的メリットも得てみたい人。短期的な筋損傷の回復を優先すべく炎症を抑えたい人。

 

どちらにもメリットはあるんで、自分の用途に合わせてお選びいただくと良いんじゃないでしょうか。

 

ちなみに、以上の効果をふまえて、一応ホットバスが肉体の回復を役立つメカニズムも押さえときましょう。ここらへんを簡単にまとめると、

 

  1. 血流の増加(血管拡張):温浴によって血管が拡張し、酸素や栄養素が筋肉に届きやすくなるため、損傷した筋繊維の修復が促進されると考えられる。また、代謝産物(乳酸や老廃物)の除去もスムーズになるため、筋肉の疲労回復が早まる。


  2. 衛星細胞の活性化:動物実験では、ホットバスが筋損傷後の衛星細胞(筋肉の修復に関与する細胞)の活性を高めることが示唆されている。

 

みたいになります。このあたりが効いて、ホットバスってのは細胞レベルで筋回復を促進する可能性があるわけですね。

 

とはいえ、アイスバスやホットバスもいいんだけど、優先すべきはそもそものトレーニング管理でして、もし「いつも疲労が抜けない…」ってお悩みがある場合は、回復法を模索するより先に、以下のポイントをチェックしてみたほうが良いかもしれません。

 

  •  トレーニング量が過剰になっていないか?(オーバートレーニング)
  •  十分な睡眠を取っているか?(最低でも7時間)
  •  タンパク質とカロリーが足りているか?(筋合成に必須)
  •  日常のストレスが多すぎないか?(ストレスホルモンの影響)

 

要するに、「回復法を探す前に、まずはトレーニングと生活習慣を見直しましょう」って当たり前の話なんですが、ここらへんがおろそかなのにアイスバスやホットバスをやりまくっても全く意味がないんでご注意ください。

 

ってことで、今回の研究をまとめた上で、個人的には以下のような使い方を推奨。

 

  •  筋肉痛がひどいとき → ホットバス(10-15分)

  •  試合や重要なトレーニングの前に素早く筋力を戻したいとき → アイスバス(10分)

  •  普段は基本的に「何もしない」でもOK

 

まぁ後は好みの問題なので、最終的には「アイスバス or ホットバスを試してみて、自分の体に合うかどうか」をチェックするのがベストですが。どうぞよしなにー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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