このブログを検索

体を冷やして健康になりまくる「ヴィム・ホフ・メソッド」は本当に体に良いのか?


ICEMAN 病気にならない体のつくりかた」って本があるんですよ。

 

著者のヴィム・ホフさんは「冷水浸漬療法」の推奨者で、「とにかく体を冷やそう!」って健康法をオススメしている人です。その実践として、氷の詰まった浴槽に90分も入り続けたり、北極圏をショートパンツ一丁でマラソンしたりと、ヤバい伝説を大量にお持ちの先生です。

 

彼の手法は「ヴィム・ホフ・メソッド」と呼ばれて、日本の一部でも人気があったりしますね。多くの健康インフルエンサーや専門家が、「ヴィム・ホフ・メソッドは炎症を減らす!」「 体重も減る!」「心臓が健康にな!」 などと、 様々なメリットを宣伝しておられます。

 

でもって、近ごろ、この極端なメソッドには効果があるのか?ってところを調べた系統的レビュー(R)が公開されておりました。

 

これは、ウォーリック大学医学部などの先生方が行った調査で、 チームいわく、

 

この研究では、ヴィム・ホフ・メソッドに「健康な男女の炎症を抑える」効果があるのかどうかを調査した。

 

とのこと。 果たして、体を極端に冷やす行為は、万病の元である炎症に効くのかどうかを調べてくれたわけですね。

 

では、まずはこの研究の大きな結論からまとめていくと、

 

  • ヴィム・ホフ・メソッドの 有効性を示すデータはまだない。
  • ウィム・ホフ・メソッドはまだ研究の初期段階にあり、これまでに実施された臨床試験は限られている。
  • 系統的レビューに含まれる全ての研究が、方法論的な質が低く、サンプルサイズも小さい。

 

みたいになります。とりあえず、今のところは 研究が少なくて何とも言えないってところですね。 まぁ、よくある結論ですよね。

 

なので、ヴィム・ホフ・メソッドについてはもっと研究が必要ではあるものの、今回の調査を見ていると、ある程度の希望がありそうな感じもしております。 いくつか事例を挙げていくと、

 

  • 2023年の研究(R)によると、冷水浴はインスリン抵抗性を予防し、糖尿病リスクを低下させる可能性がある。
  • 2022の研究(R)ではと、冷水に浸かることで褐色脂肪が刺激され、熱を発生させるためにカロリーが消費されるとの指摘がある。
  • 冷水浴により炎症が抑えられ、血液循環を促進することで、損傷した組織がより早く修復される可能性も示唆されている(R)。 冷たい温度によって血管が収縮し、氷風呂から出ると拡張するため。
  • 冷水浴は神経を麻痺させ、一時的な痛みの緩和と不快感の軽減をもたらす可能性がある。
  • 人間の体には、体温を一定に保とうとする働きがあるため、冷水浴によって身体の代謝率が一時的に上昇することがある。
  • 2023年の研究(R)によると、冷水浴はエンドルフィンやその他の気分を高める神経伝達物質の放出を誘発するとされる。

 

といったメリットがささやかれております。 どれも初期段階の研究なので、はっきりしたことが言えないんですけど、それなりに見所あるんじゃないでしょうか。

 

とはいえ、ヴィム・ホフ・メソッドには批判も多いのも事実。2022年には、 アメリカでヴィム・ホフ・メソッドを実践していた10代の少女が溺死したとして、ホフに対して6700万ドルの訴訟が起こされてたりもします(R)。また、2023年には、少なくとも3人がウィム・ホフの呼吸法を実践して溺死し、もう1人が冷水に浸かって死亡したとされてまして、ガチでヴィム・ホフ・メソッドを実践したい人は、 くれぐれも安全性にはご注意ください(たいていの死因は水中での意識喪失と過呼吸らしい)。

 

また、ガチのメソッドをやるわけでは無い人も、冷水浴を試す際は、自分にとって安全なやり方で行うようにしてください。冷水浴は、特定の持病を持つ人に悪影響を及ぼす可能性もありまして、なかでも心臓病、高血圧、糖尿病、血行不良などの方は避けたほうが良いでしょう。

 

さらに、健康な方が冷水浴をやる場合も、 以下のポイントに注意して実践する方が無難です。

 

  1. 冷水に入る前に、軽い運動や動作で ウォーミングアップする。 これによって血流が促進され、冷水浴に耐えられるようになる。

  2. 水温については、多くの人は10~15°Cくらいからスタートし、時間をかけて徐々に温度を下げていくのがベター。

  3. 最初は1~2分程度の短い時間から始め、徐々に長くしていくこと。ただし、決して自分が快適さを感じられる時間よりも長く浸からないこと。

  4. 初心者は週に2~3回からスタートし、慣れてきたら必要に応じて回数を増やす。

  5. 全身を冷水に浸すときは体をリラックスさせ、最初のショックを和らげるために、深呼吸に集中する。最初に全身を浸すのが強すぎる場合は、足から浸し、徐々に上半身へと沈めていく。

  6. 呼吸をコントロールすると寒さに対する身体の反応をコントロールしやすくなるので、冷水に入っている間は、深くゆっくりとした呼吸を心がける。

  7. 寒さにさらされると脱水症状になることがあるので、冷たい水の前後に十分な水分補給を心がける。

 

ということで、ヴィム・ホフ・メソッドに ついては、まだ未知数のところがありますが、安全性に配慮すれば試す価値はあるんじゃないかと。どうぞよしなに。


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item

search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM