このブログを検索

結局、卵は1日に何個まで食べて良いのか?問題【2024年バージョン】


「卵は1日に何個までOKなのか?」って疑問は紆余曲折ありまして、かつては「週に2〜3個まで!」なんて説もありましたが、その後で食品から摂取するコレステロールはそこまで心配しなくてもよいってのがコンセンサスになり、現在では、

 

  • まぁ1日1個ぐらいならなんの問題もないんじゃない?

 

ぐらいのところに落ち着いてるんじゃないでしょうか。まぁ、この見解もこれから移り変わりそうな気がしますが、全体的には「そんなに卵の個数とか心配しないでもいいんじゃない?」って方向に向かってる感じですね。

 

でもって、新たに米国心臓病学会で発表された研究(R)では、「週に12個の卵を食べても大丈夫なんじゃない?」って結論になってて面白かったです。まぁまだ査読論文じゃないし、かなり小規模な研究なので話半分に読んで欲しいんですが、ざっくり結論から言いますと、

 

  • 週に12個の卵を食べる人のコレステロール値は、週に2個以下の卵しか食べない人と同じぐらい。

 

みたいになります。4ヶ月間の期間であれば、週12個でもなんら影響がないんじゃないかって結論ですね。

 

これはデューク臨床研究所の研究で、心血管疾患を持っているか、そのリスクが高い50歳以上の140人を対象にしてます。参加者は平均66歳で、そのうち約半数が女性だった沿うな。つまり、高血圧、高コレステロール、肥満、糖尿病などの高齢者でも、卵は問題を起こさないんじゃないかって話なわけです。

 

実験では全体をいくつかのグループにわけまして、

 

  1. 強化卵を週に週に12個食べるグループ
  2. 卵の種類を問わず週に2個以下しか食べないグループ

 

って感じの食事を指示。4ヶ月間の追跡を行ったところ、週に12個の強化卵を食べた人に、心臓や血管への悪影響は見られなかったらしい。ちなみに、強化卵ってのは、ビタミンD、セレン、ビタミンB2、ビタミンB5、ビタミンB12、オメガ3脂肪酸などを追加した卵だそうです。日本でもよく見ますね。

 

もうちょい具体的な結果を挙げておくと、

 

  • 血中コレステロール値は、強化卵を定期的に食べている人、卵をほとんど食べない人、卵を全く食べない人の間で同程度だった。

 

  • 強化卵を食べたグループは、総コレステロール値、インスリン抵抗性スコア、高感度トロポニン(心臓障害のマーカー)が減少。ビタミンBのレベルも上昇した。

 

  • 特に高齢者や糖尿病患者が強化卵を摂取すると、HDL(善玉)コレステロールの増加やLDL(悪玉)コレステロールの減少などのメリットを得られる可能性があった。

 

みたいになります。あくまで強化卵の実験なんで、通常の卵でも同じ結果になるかは謎ですが、卵ラバーには勇気づけられるデータじゃないでしょうか(もちろん、この結果だけで「糖尿病こそ卵を食べよう!」みたいに思っちゃダメですけど)。

 

ちなみに、上にも軽く書いたとおり、卵の消費量と心臓と血管の病気については、いまのところ研究の結果はバラバラです。いくつか例を挙げてみると、

 

  • 2022年に行われた先行研究のレビューとメタ分析(R)では、卵を1日1個食べると、心血管疾患のリスクが有意に上昇する可能性があると報告している。

 

  • 2020年のレビューとメタ分析(R)では、1日1個ずつ卵を食べても心臓や血管の病気リスクは増えず、特にアジア人の集団ではリスクが減少する可能性もある。

 

って感じでして、信頼度が高いメタ分析でも結果が食い違っちゃうんだから、いまんとこ誰にも正確なことは言えない段階だと言えるでしょうね。

 

この問題について、いろいろとデータを見てて思うのは、

 

  • 卵の研究には厳密な実験が少なく、観察データに依存したものが多い。そのため、結果にブレが出るのはよくわかる。

 

  • おそらく、特に西洋の食文化では、卵をベーコンやソーセージなどと組み合わせることが多い。これらの加工肉が体に悪いのは常識だし、塩分が多いので心臓や血管に悪い結果が出がちなのも当たり前な気がする。

 

  • 一方で、アジアの食事では、卵を健康的な料理法で食べることが多いため、2020年のメタ分析で「アジア人は卵を食べるほどよい」って結果が出てるのもわかる気がする。

 

のように思っております。あくまで推測でしかないんだけど、個人的には、健康な人が1日1個か2個ずつ食べるぐらいなら、心臓病のリスクを高めるどころか、体に良いんじゃないかなぁ……ぐらいに思っております。実際、私も卵は毎日食べてますし、そっちのほうが健康診断の結果が良いことが多いんですよねぇ(逆に果糖の量が増えると中性脂肪が上がる)。

 

といっても、くり返しになりますが、これはまだ確実に言える話ではないので、各自が自分の体で試すしかないでしょう。特に、現時点で糖尿病や特定のタイプの心血管疾患を持つ人は、必ず医師とよく相談してくださいませ。どうぞよしなに。


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item

search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM