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人間は脳から太っていく「初めてのセットポイント理論 その2」


初めてのセットポイント理論 その1」では、人間の体は、本来はスリムな体型を維持するようにできてるんだよーって話を書きました。


おさらいしますと、人間の体には一定の体重を自動的に保つ仕組みが備わってまして、神経学の世界では「セットポイント」と呼ばれております。この機能が正常に働いていれば、カロリーを気にしなくても太らずにすむわけですが、いったん何らかの原因でセットポイントが上がっちゃうと、どんなにダイエットをがんばっても痩せなくなっちゃう。逆にいえば、セットポイントさえ正常に働いていれば、ツラいダイエットをしなくても自動で体がスリムになっていくわけですね。


じゃあ、「セットポイントはなぜ上がるの?」ってのが、今回のお題であります。セットポイントが上がる原因としては、大きく「脳」と「細胞」の2つに分けられますので、今回は脳の話を。



 

 

 

1・美味いものを食うと太る

脳のセットポイントが上がる原因の第一としては、まず「食事報酬度の高さ」が挙げられます。どういうことかというと、

 

  1. 美味しいものを食べる
  2. 脳の報酬系が刺激される
  3. 快楽物質のドーパミンが出る
  4. もっと食べたくなる!


って感じ(1,2)。要は「美味しいものを食べると太りやすい」ってシンプルな話であります。


といっても、もちろん「旬の野菜がうまい」とか「採れたての魚がうまい」ってレベルであれば問題はないんですが、これが加工食品やファストフードのような近代の食品だと、一気に脳が許容できる刺激の量を超えちゃうんですな(3,4)。当然ながら、人間の脳ができあがった数十万年前には、ジャンクフードなんて存在しませんでしたから、人工甘味料や添加物の味に体がついていけないわけですね。


そのせいで、加工食品を取りすぎると脳の食欲コントロール機能に狂いが出まして、栄養じゃなくて快楽だけを求めて食事するようになっちゃう。その結果、セットポイントが大きく上がって、異常な食欲に苦しむことになる、と。

 

 

2・食事の種類が多いと太る

もう1つ、脳のセットポイントを上げるのが「食事の多様性」であります。たとえば、さっきまで満腹だったのにデザートは食べる余裕があったりとか(いわゆる「別腹」)、バイキングに行ったらいつもより食が進んだとか、誰でも覚えがある話ではないかと。


食事のバラエティが豊富になるほど食欲が増すことは、いくつかの実験(5)でも確認されてまして、2001年の論文(6)によれば、

 

食事のバラエティは肥満の増加につながりえる。食事の多様性とカロリー摂取について研究した39の論文を調べたところ、いずれも食事の種類が多くなるほど、体重と脂肪が増える傾向が確認された


 とのこと。もともと、人間は食べ物の種類がとぼしい環境で進化してきたんで、バラエティに富んだ食事を見ると、脳が必要以上に喜んじゃうみたい。

 

 

3・よく眠らないと太る

太る原因の3つ目は、「睡眠不足」であります。睡眠の大事さについては、当ブログでもたくさん書いてきましたが、特にダイエットに関しては超重要。人間の体内時計は脳の視床下部がコントロールしてまして、ここに狂いが生じると、報酬系が壊れて食欲が異常に増えちゃうんですな。



実際、不規則な睡眠がデブにつながるって研究も死ぬほどありまして(7,8,9)、いずれも体内時計に異常が起きることで、肥満はもちろん、糖尿病・心疾患・ガンの原因になるとの恐ろしい結論であります。睡眠が足りないと、体が生命の危険を感じて「脂肪貯蓄」モードに入ってしまうのも大きな原因らしい。

 

 

まとめ

そんなわけで、ここでは脳の不調により体重のセットポイントが上がる理由を見てみました。とにかく、不自然に脳を刺激しすぎると、肥満の原因になっちゃうわけですね。では、次回は「ホルモン」の不調について見ていくことにしましょう。

 

 

【初めてのセットポイント理論シリーズ】

 


 credit: ajeofj3 via FindCC


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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