本気で長生きしたければ、 あなたの 寿命を縮める「死の四騎士」の 対策をせよ!という 本を読んだ話
https://yuchrszk.blogspot.com/2024/04/blog-post_11.html
「OUTLIVE(長生き)」ってタイトルの本を読みました。著者のピーター・アティア先生は長寿学の権威で、スタンフォードの医科大学院からアメリカの国立がん研究所に進み、さらにマッキンゼーで起業のリスク管理もやっているという才人であります。
個人的には「また長生き本かぁ……」と思ったんですけど、 なにせアメリカでバカ売れしているので、 後学のために 手に取ってみた次第。 いざ読んでみると、長寿のためのロードマップを大まかに提示した上で、「まずは心臓疾患が一番ヤバいからこれ取り組め!」「次はガン予防を行え!」って感じで、実践的なアドバイスを提示していくスタイルが面白かったです。
もちろん、ここで処方されるアドバイスは 基本的なものばかりで、 そこまで目新しいものでは無いのですが、 あたかも車のオーバーホールでもやるようなノリで、 戦略的に健康改善を進めていく語り口が受けたんでしょうな。さすがマッキンゼーって感じで、 これは邦訳が絶対に出るでしょう。
ってことで、いつもどおり本書から勉強になったところをまとめてみましょうー。
- まずは「死の四騎士」への対策を立てたい。これは、 私たちの寿命を縮める最大要因であり、1.心血管疾患、2.癌、3.脳血管疾患(アルツハイマー病など)、4.代謝性疾患(糖尿病など)の4つに分類される。
近年では心臓病の予防に進歩が見られたが、他の3つの疾病についてはまだ これといった対策がない。 なかでも糖尿病などの代謝性疾患はかなり過小診断される傾向がある。
- 心臓の健康を守るためには、アポBを監視・管理する必要がある。様々な治療ガイドラインでは、LDL-Cの目標範囲を定めているが、 現在の基準は高すぎる可能性がある。 定期的にアポBとLp(a)を測定し、LDLとHDLコレステロールの評価を補完しておくとよい。
- 運動は最も強力な長寿薬であり、毎日のちょっとした活動でも、何もしないよりはずっといい。週1回の運動がゼロの状態から、週90分の運動をするだけで、全死因による死亡リスクを14%減らすことができる。この効果に匹敵する薬は存在しない。アティア博士は、 現在では運動を食事よりも重要だと位置づけている(個人的には食事の方が大事なような気がしますが)。
75万人以上の退役軍人を対象とした研究によると、運動不足のグループは、年齢・性別の上位2%のグループに比べて死亡リスクが4倍も高いことが明らかになった。 これはどんな心臓の危険因子よりも影響が大きい。
運動の内容としては、筋力トレーニング、 持久力トレーニング、VO2マックスのトレーニングをミックスした総合的な運動が望ましい。特に、年齢を重ねても頑健な能力を維持するためには、中年期に良い体型を保つことが重要であり、運動能力よりも長期的な健康を重視した運動を重視したほうがよい(具体的なワークアウトルーティンについては本をご覧ください)。
- 食事に関して、アティア博士は、以前はケトン食(超低糖質ダイエット)の提唱者だったが、現在は以下の3つのアプローチのうち1つ以上を含む、よりバランスの取れたアプローチを推奨している。
1.カロリー制限(体重を維持するのに必要なカロリーから25%ぐらいを引く)
2.加工度の少ない食事に制限する(パレオダイエットなど)
3.時間制限のある食事(要はプチ断食)
以上に加え、高齢者の場合は、筋肉量をサポートし、強化するために、政府のガイドラインで推奨されている量の2倍にあたる高タンパク質を摂取する(1日当たり体重1kg当たり1.8〜2グラムぐらい)。
- 年齢を重ねても可能な限り身体を動かし、自立した生活を送れるようになるためには、「人生の最後の10年に何をやりたいか?」の願望を明確にし、その活動のためのトレーニングを、現在から逆算して行ったほうがよい。特に人生の後半には筋肉の重要性が増すため、十分な筋肉量と筋力をつける必要がある。
そのためには、事前に「80〜90歳になったらやりたいことのリスト」を作っておき、目的意識を持ちながら筋力や心肺機能を高めるトレーニングを行うとよい。加齢とともに始まる身体の衰えを想定することで、将来により充実した人生を送るための対策を立てることができる。
たとえば、いま40歳の人が「80歳で孫を高い高いしたい」という目標を立てた場合は、「筋力は10年ごとに8~17%ずつ自然に低下する」という事実を認めることが極めて重要になる。つまり、80歳で孫を持ち上げたいなら、40歳の現時点では、最低でも30kgを持ち上げる筋肉が必要となる。
- 30代になってからの健康トラブルの多くは、食事や運動だけでなく、睡眠不足によって引き起こされる。全体的な健康のためには、運動よりも睡眠のほうが重要かもしれない可能性もあり、睡眠不足は、代謝の健康、がん罹患率の増加、事故、自殺などのリスクを大きく高める。
ちなみに、本書の睡眠アドバイスは、私のブログで書いているものとほぼ同じなので割愛。また、アティア先生は、睡眠薬を制限または完全に避け、その代わりに、 グリシンやアシュワガンダなどのサプリメントを推奨しておられました。
- 健康寿命を延ばすためには、心の健康も忘れてはいけない。怒り、人間関係のストレス、優先順位の間違いといった問題をほうっておくと、せっかくの長い人生に生きる価値がなくなってしまう。それと同時に、原題では、「感情による健康障害の蔓延」が長寿の重大な障害となっている。
メンタルの問題に取り組む方法はいろいろあるが、アティア博士は、弁証法的行動療法(DBT)を推奨している。 このような対策で、 感情の問題をクリアすると、心血管疾患予防のような長期的な 健康効果を得ることができる。
また、 近年では、人とのつながりや健康的な人間関係によって、グルコース代謝を管理し、最適なリポタンパク質プロファイルを維持できる可能性が上がることも指摘されている。
- 長寿において意外と見過ごされがちなのが、骨密度のモニタリングである。特に、65歳以上の股関節骨折や大腿骨骨折は、1年以内の死亡率が15%から30%と高く、65歳以上の3分の1が 骨折から1年以内に死亡しており、その多くは転倒が原因である。 骨を折ると長期の療養中に筋力低下が加速するのが原因である。
骨の健康状態を 定期的に評価するために、骨密度(BMD)を測定するDEXAスキャンを毎年受けるのがよい。また、タンパク質に重点を置いた食事と、重いウェイトを使った筋力トレーニングが 重要になる(ランニングのような衝撃を与えるスポーツよりも、骨の成長という点では有効)。
- アルコールは、どのような量でも体に良いものではない。全く飲むべきではないという意味ではないが、低用量であれば健康に良いと錯覚するのはやめたい。
アルコールは、栄養面でも健康面でも何のメリットもなく、特に栄養過多の人にとっては大きな邪魔になる。これは、栄養価のない空のカロリーを提供し、脂肪の酸化を遅らせ、食事の乱れにもつながる。また、アルツハイマー病との関連や、睡眠への潜在的な悪影響も指摘されている。
そのため、博士は、スペイン産ワイン、ベルギー産ビール、メキシコ産テキーラをたまに飲むぐらいにし、アルコールの摂取量は週7杯以下、1日2杯以下に抑えることを勧めている。
- 「安定性」も、長寿において見過ごされがちな要素である。「安定性」とは、動いているときでも体のバランスとアライメントを維持する能力のこと。安定性がないと、怪我や痛み、疲労を経験しやすくなり、健康寿命は劇的に短くなる。
この点で最も重要なのは足であり、安定性において重要な役割を果たす。アティア博士は、足の指を自然に広げる能力を高めるために、足指スペーサーを使うことを勧めている。また、背骨の可動域を改善するために、キャットキャメルエクササイズを行うのもよい。
同時に、肩も安定性にとって重要な部位である。肩の安定性を向上させるためには、デッドハングとCARなどが良い。これらのエクササイズは、肩甲帯の神経筋コントロールを向上させるのに役立つ。