インスリンは食べ過ぎを抑えてダイエットに役立つ!「インスリンは肥満ホルモンではない・その1」
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糖質制限ダイエットの重要ポイントといえばインスリン。近ごろは「肥満の元凶」とまで呼ばれちゃって、すこぶる評判の悪いホルモンでありますが、ここでは「インスリンで太るって説は言うほど実証されてないんだよ〜」って話をします。
そもそもインスリンってなんだ?
まずは、インスリンの働きをおさらいしてみましょう。糖質制限の第一人者である江部先生の解説(1)をお借りしますと、<インスリンは三重の肥満ホルモン>
◇インスリンは脂肪細胞内の中性脂肪分解を抑制する。
◇インスリンは血中の中性脂肪を分解し脂肪細胞内に蓄える。
◇インスリンは筋肉細胞に血糖を取り込ませるが、余剰の血糖は脂肪細胞に取り込ませて中性脂肪として蓄える。
って感じ。これらの働きは数十年前から確認されきたことでして、いずれも完全なる事実であります。
で、これだけ見ると「やはりインスリンこそ肥満の元凶!」って思っちゃうんですが、コトはそう単純に運ばなかったりします。というのも、実は「インスリンは痩せるのに役立つ!」って研究もいろいろあるんですよね。そのへんを見て行きましょう。
インスリンは食べ過ぎをおさえてくれる
言わずもがな、肥満の原因は食べ過ぎであります。が、高脂肪食と高炭水化物食をくらべた実験では、インスリンには食事の満足度をアップさせて、結果的に食べ過ぎを防ぐ効果があるって結果が出ております(2, 3, 4)。なかでも面白いのが2010年の論文(5)で、タンパク質の摂取量を変えて被験者のインスリン分泌量をくらべたところ、インスリンが多いほど満腹感が高くなる傾向がハッキリ見られたそうな。
インスリンは脳に「痩せろ!」と命令を出す
次に参照したいのが1986年の動物実験(6)。これによると、マウスに大量のインスリン注射を打っても低血糖症は起こらず、食事の摂取量も増えなかったというんですな。ヒトと哺乳類はインスリンに対して同じ反応を示すことがわかってまして、これはかなり参考になる結果。同様の実験は1980年と2002年にも行われてるんですが(7,8)、こちらも結果はほぼ同じ。定期的に体内のインスリンを増やしても体重の増加は起こらず、それどころか食事量が減ったうえに体重も軽くなったとか。これは、インスリンが脳に働いて、レプチンのように食欲をおさえてくれるのが原因と考えられております(9)。
また、この点でさらに興味深いのが2000年の実験(10)。脳をいじってインスリンに反応しないマウスを作った実験でして、その結果、インスリンが食欲をおさえてくれなくなっちゃったもんで、マウスたちはガンガンと脂肪を増やしていったそうな。インスリンは細胞に働きかけて脂肪をためる一方で、脳に対しては痩せるように指示を出してるわけですね。うーん、ツンデレ。
まとめ
そんなわけで、ここでは「インスリンには食べ過ぎを防ぐ効果がある!」って話をしてみました。ちなみに、インスリンが分泌されると、同時にアミリンってホルモンも出るんですが、これには強力な食欲抑制効果がありまして、なかには「インスリンはダイエットホルモンだ!」と主張する研究者もいるほど(11)。この点を見ても、「インスリンで太る説」にはまだまだ検討の余地があるかと思いますし、実際のところ、世界の肥満研究家で「インスリンで太る説」を支持している人はそんなに多くないかと思います。
とはいえ、ここで紹介した論文は動物実験がメインだったので、次回はヒトを対象にした研究も取り上げつつ、さらには「じゃあなんで糖質制限ダイエットは効くのか?」についても考えてみようかと思います。
credit: aldenchadwick via FindCC