オーディオブックでも内容の理解度は変わらないの?問題
こんな質問をいただきました。
オーディオブックってどうなんでしょうか?車の運転が多いのでよくオーディオブックで本を聴いてるのですが、これって普通に本を読むのより悪かったりしますか?頭への定着が悪いなど。気になります。
とのこと。私も何冊かオーディオブックは持ってまして、たまーに聴いたりしております。耳と目のインプットにはどのような違いがあるか?って問題はちょっと気になるとこっすね。
で、参考になりそうな研究としては、2016年のペンシルバニア大学論文(1)があります。121人の男女を対象にした実験で、
- オーディオブックを聴く
- kindleで本を読む
- kindleの読み上げ機能を使い、耳と目から同時に情報をインプットする
って感じにわけて、果たしてどのグループがもっともテキストの理解度が良かったかを調べたんですな。ちなみに、ここで採用されたテキストはローラ・ヒレンブランドの「不屈の男 アンブロークン」だったそうです。
でもって、読書が終わったあとで、本の内容を問うクイズを全員に解いてもらったところ、
- どのグループも内容の理解度には差がなかった!
って結果だったんですよ。クイズの成績はほぼ横並びで、ほとんど差が確認できないレベル。
そんなわけで、とりあえず「オーディオブック問題なし!」の結果が出たわけですが、ただしこの実験では対抗馬にkindleを使ってるのが気になるポイントではあります。
というのも、ちょっと前に「読書は紙がいいのか?それとも電子書籍がいいのか?問題」にも書いたとおり、
2つのメタ分析を行った結果、現時点での研究ではあきらかにデジタルのほうが劣っている。デジタルのテキストと印刷されたテキストをくらべた場合、デジタルのほうが文章の理解力は低い
っていう信頼度が高めな結果が出てるもんですから(ただし効果量はそこそこ低い)。このデータを押し広げると、
- 電子書籍とオーディオブックの理解度は同じぐらい
- 紙の本は電子書籍にまさる
- すなわち、オーディオブックより紙の本が良い!
みたいな考え方もできちゃうわけですな。
電子より紙のほうがいいかもしんない理由には諸説あるんですけど、よく言われてるのは、
- 紙のほうが、いま自分がどこらへんを読んでるのかがわかりやすいからじゃない?
って説です。物理的な書籍のほうが「いま本全体の何割ぐらいを読んでるんだな……」ってのが直感的につかみやすく、おかげで「あのあたりにこんなことが書いてあったなぁ」みたいな予備の情報として使えるのではないか、という。
言われてみれば、わたしも電子書籍だと「あとどれぐらいで読み終わるんだろう?」ってのがわかりづらいせいで、軽くイラっとすることがあるんですよねぇ。たんにわたしがデジタルネイティブじゃないからなのかもしれませんが。
で、もし「電子は予備情報が少ないからよくない」説が正しければ、オーディオブックにも同じ問題が当てはまるわけです。音声だと全体量の把握は難しいですからね。
そんなわけで、いろいろ書いてきましたが、以上の話をまとめますと、
- できれば紙の本を読むのがいいよねー
- でも、別に電子書籍がそこまで劣ってるわけでもないし(効果量-0.21ぐらいなんで)、紙の本を持ち歩くのがめんどうなときは普通に電子でいいでしょ
- 電子とオーディオブックに差はなさそうだから、状況に応じて好きなメディアを選べばいいんじゃない?
ぐらいの感じです。個人的にオーディオブックを使うケースは少ないんですけど(読み飛ばしができないんで)、旅行先とかでは普通に電子書籍を愛用しつつ、自宅では紙の本を優先して読むことが多いですねー。