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【質問】休日にいくら休んでも疲れがとれないんですが、どうすればいいですか?



 

こんなご質問をいただきました。

 

休日が明けても疲れがまったく取れません!翌日はだるいし、午後3時ぐらいになると、なぜかこめかみが痛くなって頭が働かなくなります。これは休み方が悪いせいですか?いちおう体をちゃんと休めているつもりなのですが?アドバイスありませんか?

 

ということで、休日にガッツリと休んでいるにも関わらず、翌日に疲れまくってしまうのはなぜなのか、と。こりゃあよくあるお悩みですね。

 

 

で、このご質問者さんが具体的にどのような休日を送っているかはわからんのですが、体は休めているということであれば「あとは脳の問題じゃないかなー」ってのがお答えになりますね。このブログでも何度か書いてますけど、近年の研究では「脳を休めないといくら体を休めてもねぇ……」って話になってますし。

 

 

ただし、脳を休めるといっても、脳の活動を遅くするって話ではないのでご注意ください。というのも人間の脳ってのは、リラックスしているときでもガンガンに働いていてまして、そのあいだを使って、注意力やモチベーション、創造性、記憶力などを発揮するための基礎づくりをしてるんですよ。ダウンタイムに脳が働いてくれるおかげで、私たちは過去の記憶を整理し、未来への計画を立てることができるわけっすね。

 

 

このように、ダウンタイムに活性化する回路は「デフォルトモードネットワーク(DMN)」と呼ばれてまして、南カリフォルニア大学の先生方によるレビュー(R)によりますと、

 

  • 私たちが脳を休めているとき、実際には脳はめちゃくちゃ活動し、自分のアイデンティティを確認し、人間の行動に対する理解を深め、倫理観を身に付ける精神プロセスを働かせている

 

  • 脳のダウンタイムは、脳が最近学んだことを理解し、人生における未解決の問題を掘り下げ、内省のパワーを発揮する時間を与えてくれる

 

といった働きをしているんだそうな。要するに、脳を意図的にぼーっとさせないと、その日に学んだ出来事やトラブルから学習する機会を失ってしまうわけですね。

 

 

言い換えれば、脳をダウンタイムにする時間を作らないと、

 

  1. 脳が日中の情報を処理する時間がなくなる

  2. 処理されない情報がそのまま頭に残り続ける

  3. 平日になって仕事がはじまっても、未処理の情報が頭に浮かぶ

  4. 頭が疲れる!

 

みたいな流れになるんですよ。事実、「超一流になるのは才能か努力か?」のアンダース・エリクソン先生も、「1日平均4時間以上は練習せず、その後の休息や夜間の睡眠で平衡感覚を取り戻さないと燃え尽き症候群に陥ることが多い」と指摘しておられます。

 

 

それでは、脳をうまくダウンタイムに持っていくにはどうすればいいのか?ってことですが、これについては、過去にこのブログで扱ってきた内容のくり返しになります。具体的には、以下の内容をお試しください。

 

  • こまめに休む:基本的に、1年に数回のペースで長期休暇をとるよりは、1〜2日の細かい休暇を定期的にくり返したほうが効果は高い。というのも、休暇の効果はそこまで長続きしないため、細かく休んだほうが全体的な休息の効果は高まるからである(R)。これは1日単位でも同じことで、1日に2〜3時間のまとまった休息をとるよりは、15分ぐらいの短い休息をこまめにとったほうが、最終的にはよい結果を得やすい。

 

  • 瞑想をする:ライデン大学などの研究(R)では、90日間の瞑想を続けた者は脳の情報処理の効率が高まり、特定のタスクを行う際にもより少ない注意力ですむようになった。まだ、具体的にどれぐらの瞑想をすべきかのガイドラインはないものの、休日に20分ぐらいの瞑想を行うのはあり。

 

  • 昼寝をする:昼寝は集中力を高め、仕事のパフォーマンスを向上させる働きがある。2004年の研究(R)では、イタリアの警察官が起こした高速道路の交通事故に関する4年分のデータを分析したところ、仮眠をとることで事故の発生件数が48%減少したと結論づけている。ただし、昼寝はあまりに多すぎると夜の睡眠を損なうので、30分ぐらいにとどめておきたい。

 

  • 自然を歩く:ミシガン大学の学生38名を対象にしたテスト(R)では、半数の学生に樹木園を約1時間歩いたあとで数字の記憶作業をしてもらったところ、木々の間を歩き回った被験者は、最初にテストを受けたときよりも平均して1.5桁多く数字を記憶していたのに対し、街中を歩いた被験者はわずか0.5桁しか記憶していなかった。これは、自然のなかを歩くことにより注意がほどよく散乱し、脳がぼーっとしたモードに切り替わるからだとされる。

 

  • 逆に運動をするウィーン医科大学などの研究では、ストレッチやジャンプなどの軽い運動を12.4分行ったグループは、もっとも元気度が上がり、認知の機能を改善させた。リラックス系の休憩は疲労を減らす効果はあったが、脳までは休まっていなかった。

 

  • デジタル禁止:休みながらSNSや動画サイトを見ていると、そちらの情報処理に脳の機能が使われてしまい、頭がぼーっとするヒマがない。そのため、本人は体を休めているつもりでも、実は脳がフル回転していて、平日に取り込んだ情報を処理できないままに終わる。

 

ってことで、いろいろ書いてみましたが、全体的にいえば「ひたすら何もせずぼーっとする時間が大事だよー」ぐらいの話です。人間は退屈が嫌いなので、家でゴロゴロしているときもつい脳に負荷を与えたりしがちなんですけど、それを避けるのが大事って感じですね。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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