このブログを検索




ノルウェイ大学の専門家「水風呂が体にいいかどうかはまだよくわからんから注意しようぜ!」



サウナブームのおかげで、近ごろは冷水浴も流行っているわけです。都内のサウナ施設とかだと、10℃を下回る極寒の水風呂なんかも出てまして、「よくそんなもん入れるな!」って気がするわけですが。

 

 

では、この冷水浴の効果は実際にどれほどあるのか?ってことで、ノルウェイ大学などの先生が、冷水浴のメリットを探る良いレビュー(R)を出してくれておりました。具体的には、過去の冷水浴に関する研究から104のデータを調査したもので、一般的な水風呂や寒中水泳の効果を掘り下げてくれてます。水風呂の効果を示したデータはいくつかあるんだけど、正味な実力をガッツリと調べたものって少ないので、これはありがたいところですね。

 

で、論点はいろいろあるんですけど、ここでは大きな結論からまとめてみましょう。主筆のジェームズ・マーサー先生は、以下のようなことを言っておられます。

 

冷たい水に身をさらすことで、いくつかの健康効果を得られる可能性を示した科学的なデータが増加している。冷水浴によって、生理的・生化学的パラメータが変化を起こすことは、多くの研究で実証された話だ。

 

しかし、これらが健康にとって本当に意味があるかどうかについては、評価が難しい。冷水浴に関する複数のデータをレビューしてみると、定期的な冷水浴で得られると言われる健康上のメリットの多くは、因果関係がない可能性がある。

 

冷水浴で得られるメリットとは、アクティブなライフスタイル、ストレス処理のうまさ、社会的な交流の多さ、ポジティブな考え方など、他の要因によって説明できる可能性が高い



ということで、先生が主張するポイントをざっくりまとめると、

 

  • いまの時点では、冷水浴に関するデータはイマイチなものが多く、これといった結論は出せない。

 

  • ただし、いろいろとデータを総合してみると、冷水浴の効果って、冷水そのものが原因じゃないかもよ。

 

って感じになります。まだ明確なデータがないので、冷水浴のメリットについては何も言えないし、どちらかというと「冷水は体に良い!」ってわけではなく、「冷水を浴びれるような人はもともと元気なのだ!」って可能性のほうが高いんじゃないか、と。これは水風呂好きには、ちょっといやーな結論ですね。

 

 

まー、これは以前からちょこちょこ出てた話ではありまして、例えばビクトリア大学などが2014年に行ったテスト(R)では、健康な男性30人を集めたうえで、全力のサイクリング(自転車で30秒×4回の全力疾走)を行った後、3つのグループに割り振ったんだそうな。

 

  1. アイスバス(10℃前後)

  2. ぬるめのバスコントロール(35℃前後)

  3. プラセボ(新開発の「リカバリーオイル」の効能を詳しく説明した偽のパンフレットを見せ、運動能力の回復に氷浴と同等の効果があると信じ込ませる)。

 

すると、おもしろいもんで、アイスバスとプラセボを実践したグループは、運動から48時間後の筋力の回復が同じレベルだったんだそうな。また、温浴コントロールと比較した場合は、プラセボの方が脚力の回復が早かったそうで、いかにプラセボの効果がすごいかがわかるわけです。

 

 

もちろん、研究チームも、アイスバスの生理学的な効果を否定しているわけじゃないものの、「冷水浴の効果ってもしかしたらプラセボじゃないの?」とは言ってまして、判断が難しいところなんですよ。うーん。

 

 

もっとも、今回のノルウェイ大学のレビューでも、「冷水浴による効果があるかも?」ってとこは否定していなくて、ざっくり以下のようなメリットを推測してたりします。

 

  • 冷水浴をすると、褐色脂肪細胞が増える可能性はあるから、悪い体脂肪をカットし、糖尿病などの障害のリスクを減らす……かもしれないよなぁ。

 

  • 冷水浴をすると、体に一時的なストレスがかかって、体内のノルアドレナリン、β-エンドルフィン、脳内のノルアドレナリンの量が増えるから、メンタルヘルスと脳の発達に良い影響を与える可能性も………否定はできないよなぁ。冷水によって皮膚の冷受容体が刺激されて、これが抗うつ効果をもたらすかもしれないしなぁ……。

 

  • 冷水浴をすると水中または空気中で寒さにさらされると、脂肪組織がアディポネクチンというタンパク質の産生を増やす可能性もある。このタンパク質は、インスリン抵抗性や糖尿病などの病気から身を守るために重要な役割を担っているから、これが健康によい可能性も十分にあるよなぁ……・

 

  • 冬季に冷水につかったらどうなるかを調べた研究でも、参加者のインスリン感受性が有意に高まり、インスリン濃度が低下したと言われてるから、糖尿病の予防になるかもなぁ……。

 

ってことで、歯切れの悪い話ばかりで恐縮ですが、やはり冷水浴にはそれなりのポテンシャルがあるのだろうとは言えましょう。ただ、これらのデータを見ても、定期的な冷水浴で現実的なメリットを得られるかどうかは定かではなく、やはり「もともと健康な人が冷水浴をやってるだけでは?」って可能性は否定できないわけであります。

 

 

というわけで、以上のデータをふまえたうえで、個人的には「まぁプラセボの可能性もあるけど、冷水浴が気持ち良い人はやればいいんじゃない?」ぐらいに思ってます。私も水風呂にはすっかり慣れてしまってるんで、今後もやっていくつもりです。寒冷ショックや低体温症のリスクを押さえつつ、「あくまでもリラックスがメインで、もしかしたら体に良かったらいいなぁ」ぐらいの気持ちで望むのがよさそうっすね。


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item

search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM