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この記憶術がすごい!2023年6月版

 

例によって例のごとく調べものをしていたところ、「記憶力を上げる方法」に関するデータがたまったので、個人的に参考になったもののまとめです。「なんか大事なことが覚えられない……」という方は、参考になさってくださいませ。

 

 

 

 

記憶法1.適度なストレスを与える

基本、ストレスは脳に悪いんですけど、ジョージア大学などの研究(R)では、「低~中程度のストレスがワーキングメモリを向上させる!」みたいな話になっておりました。これは1,000人以上を対象とした研究で、日頃のストレスレベルとワーキングメモリの機能を比較したところ、

 

  • 「低レベルから中レベルのストレスを感じている!」と回答した人は、脳のワーキングメモリーに関わる部分の活動が活発だった。
  • 慢性的に大きなストレスを経験した人は、脳のワーキングメモリーの活動が低下していた。

 

みたいな感じだったそうな。「低レベルから中レベルのストレス」ってのは、定義が難しいんだけど、「こんなストレスはもう耐えられない!だめだ!」ってレベルを10ポイントぐらいだとすれば、だいたい3〜5ポイントぐらい。「イライラするけど、これなら対処できるな……」と思えるぐらいのストレスだとお考えください。

 

 

 

記憶法2.新しい場所に行く

ライデン大学などの研究(R)では、「新しい場所や見慣れない場所が記憶を刺激する!」って結論になっておりました。こちらは400人以上の学生を対象にしたテストで、PC上に作った仮想の森林を自由に探索するように指示。その際に、半分のグループには、2回続けて新しい仮想空間を探索してもらったところ、

 

  • 新しい環境を経験した人の方が記憶テストのスコアが高い!

 

って結果だったらしい。研究チームいわく、

 

新しい環境を訪れた青年や若年層は、単語のリストをよりよく記憶していることがわかった。"新しい環境 "はドーパミンを高め、そのドーパミンは海馬という脳の中の学習に関係する部位に影響する。そして、ドーパミンは学習の効果を高める。

 

とのことで、「新しい体験」によって脳内のドーパミンが増え、そのおかげで記憶力がブーストするってことですね。なので、新しいことを覚えたいときは、新しいことをしながらやってみるといいかもしれません。

 

 

 

記憶法3.いろんな強度の運動をする

中程度の強度の運動でエピソード記憶が上がる!」ってデータ(R)が出ておりました。エピソード記憶ってのは、場所、時間、関連する感情、その他の文脈情報(「先週週末にあれをした」みたいな)などの、出来事に関する記憶のことですね。

 

で、こちらは113人のFitbitユーザーを追跡した調査で、全員の運動レベルを計測しつつ、みんなに記憶テストをしたんだそうな。すると、

 

  • 中強度の運動(早歩きとかジョギングとか)をする人はエピソード記憶が高い!
  • 高強度の運動(インターバルトレーニングとか)をする人は空間記憶が高い!

 

みたいな結果が出たらしいんですよ。ちなみに、空間記憶ってのは、周囲の状況を把握し、「あの店はどこにあるか?」みたいな情報を記憶・検索する能力のことです。

 

ってことなので、エピソード記憶を高めたい人はちょい辛い運動を行い、空間記憶を高めたい人は辛い運動を行うとよいかもしれませんねー。

 

 

 

記憶法4.目を閉じる

目を閉じるだけでも昔のことを思い出しやすくなるぞ!」って話(R)が出ておりました。これがどのような研究かと言いますと、

 

  1. 参加者に「民家で作業中の電気工事士が、家のものを盗む様子」を見てもらう。

  2. その後、参加者の半分には目を開けたまま、残りの半分には目を閉じたまま、電気工事士の犯罪について思い出してもらう。

     

みたいになります。その結果、目を閉じた人の正解率は75%だったのに対し、目を開いていた人の正解率は41%だったらしい。

 

このような現象が起きる理由は謎ですが、目を閉じることで外部からの情報がシャットアウトされ、そのおかげで記憶にアクセスしやすくなるのかもですなー。

 

 

 

記憶法5.テストを想定する

何かを覚えたいときはテストを想定せよ!」ってデータ(R)も、かなりいい感じでした。これは100人の人々に数字と文字の列を記憶してもらったもので、結果だけをざっくり言うと、

 

  1. 「この後で内容をテストしますよー」と言われない状態で記憶すると、正解率は25%だった。

  2. 「この後で内容をテストしますよー」と言われない状態で記憶すると、正解率は65~95%にまで上昇した。

 

みたいな感じです。事前にテストを想定するかどうかで、覚えたことを思い出す能力が2倍にも3倍にもなるってことでして、逆にテストを想定しない場合は、だいたい1秒ぐらいで記憶が消えちゃうケースもあったそうな。

 

研究チームいわく、

 

「記憶」とは、ある種、ビデオカメラのようなものだ。ビデオカメラの「録画」ボタンを押さなければ、レンズを向けた対象を「記憶」することはできない。

 

しかし、もしあなたが 「録画」ボタンを押せば、その情報は保存される。

 

ってことで、「あとでテストするぞ!」って気持ちが、脳の録画ボタンとして働くって話ですね。まー、テストの学習効果はすでに証明されているので、非常に納得の結果じゃないでしょうか。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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