現代人が不幸なのは『孤独』が足りないからだ!という本を読んだ話
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『孤独の喜び(The Joy of Solitude)』って本を読みました。著者のロバート・コプランさんはカールトン大学の心理学教授で、「人はなぜ独りになりたがるのか?」「独りでいることは幸福につながるのか?」を何十年も追い続けている研究者なんだそうな。
本書のテーマをひとことで言いうと、「孤独は“寂しさ”ではなく、むしろ幸福に不可欠なスキルである!」みたいな感じ。現代人は、SNS、仕事、家族、友人など、とにかく「つながり」に押しつぶされがちなので、意図的に孤独の時間を増やして脳をメンテナンスしようねーみたいな話であります。
ということで、いつもどおり本書で勉強になったポイントを整理してみましょうー。
- まず大前提として、「孤独(Solitude)」と「孤立(Loneliness)」は別物だってのを押さえておきたい。孤立はネガティブな情動で、孤独は中立〜ポジティブな状態を指し、「どれだけ人に囲まれているか」ではなく、“本人がその状況を望んでいるかどうか”で決まる。
- 心理学では、「孤立」は「欲しいつながり」の量・質が、現状とズレているときに生まれる失望感と定義されており、以下のような特徴を持つ。
・主観的に「足りない」と感じる
・ネガティブな感情(悲しみ、不安、嫉妬など)
・身体ストレスが増す(炎症、睡眠悪化、免疫低下など)
・社会的な“痛み”として脳が処理する(実験で裏付けあり)
つまり、孤立とは“もっとつながりが欲しいのに得られない状態”に脳が反応しているのだと考えられ、極端な例では、
・満員電車の中で疎外感
・職場で皆が打ち解けているのを横目で見る
・友達がSNSで盛り上がっているのに、自分だけ混ざれない
といった感じで、人に囲まれていても孤立は発生する。
- 一方で「孤独」は「自分の意思で人から離れる状態」であり、心理的メカニズムがまったく違う。孤独がもたらす恩恵は多く、
・情動のリセット
・ストレス回復
・集中力アップ
・自己理解
・創造性の増加
といったものが考えられている。これは、脳の「DMN(デフォルトモードネットワーク)」が働くからだとされており、記憶の整理、感情の処理、自己認識などを行う領域で、定期的に働かせる必要がある。
- そのため、物理的な状況は同じでも、個人の体験は逆転することがわかっており、たとえば「1人で旅行」というシチュエーションでも、
・望んで1人旅 → 孤独により心拍が下がり、リラックスホルモン増加
・仕方なく1人旅 → 孤立のせいでストレスホルモン上昇、自己否定
という違いが出る。これは完全に“意味づけの違い”だと言える。そのため、これまでの研究では、慢性的な孤立が早死にリスク(喫煙レベル)を高めるのに対して、健康な孤独は創造性、幸福、ウェルビーイング向上に役立つことがわかっている。
- 多くの人は、「1人になる=人間嫌い」と誤解するが、実際には、
・良い対人関係にいる人ほど、質の良い孤独を求める
・孤独を確保した人ほど、他者に優しくなる
・孤独があると、社会性が回復する
といった傾向が見られる。つまり、孤独は対人関係の燃料タンクだと考えられる。
- 「独りになる時間が足りない」というストレスも存在する。世の中に「孤独=寂しい」というイメージは強いが、現代では「“独りになりたいのに独りになれない”ことが、ストレスを生む」という現象も確認されている。この現象を、著者は「Aloneliness(アロンリネス)」と名付けている。
- アロンリネスは、「望む独り時間」と「現実の独り時間」のギャップによって生じるネガティブ情動と定義される。つまり、「独りになりたいが、なれない」というズレのことであり、これによって、不快感・イライラ・倦怠・怒り・疲労が増えてしまう。
興味深いのは、これは“社交性の問題”ではなく、“自律性の問題”だという点。人は社会的動物であると同時に、心理的な“領域”を守りたい生き物でもあるため、その領域が侵害され続けると、攻撃性すら高まってしまう。
- コプラン先生の研究では、恋人と暮らす人に「独り時間がどれくらい欲しいか」を尋ねたところ、その不足度(=アロンリネス)が高い人ほど、恋人のブードゥー人形にピンを刺す回数が増えたという。
ここでポイントなのは、「恋人が嫌い」だから呪いの人形に針を刺したのではなく、脳の余白が奪われて“暴発”しただけということ。つまり、“独り時間不足”は愛情を攻撃性に変換する働きも持っている。
- アロンリネスが危険なのは、脳が意思決定・感情制御・共感を行う余地がなくなるからである。独り時間とは、感情の解毒、注意の再配分、価値観のアップデート、ストレスのクールダウンなどが行われる時間であり、これがゼロになると、私たちの脳は処理しきれない“感情のゴミ”を他者にぶつけるしかなくなってしまう。
そのため、アロンリネスが慢性化すると、
・不眠
・無気力
・些細なことで怒る
・パフォーマンス低下
・SNS過剰依存
・人間関係の摩耗
などが起きることが確認されている。
- アロンリネスが起きやすいのは、以下のような場面である。
・小さな子どもがいて、常に「ママ/パパ!」と呼ばれる
・パートナーに“話しかけ癖”があり、無限に話しかけてくる
・友人が常にLINEやDMに反応を求めてくる
・職場に「Slack即レス文化」が蔓延している
・SNSの通知が頻繁に届く
つまり、自分が意図しないコミュニュケーションが増えるほど、アロンリネスは悪化すると言える。
- 「つながり疲れ」は、社会がつくった現代病である。本来、人間は“離脱”を必要とする動物なのに、現代は、「つながりは善」「応答は礼儀」「沈黙は不安」といった社会規範が強すぎる。その結果、現代では「離脱の権利」が奪われており、この文化圧力が、アロンリネスを慢性化させている。
- ではどうするか? コプラン先生は「私は15分だけ、誰ともつながりません!」と、自分に宣言する習慣をつけることをおすすめしている。これは“関係拒否”ではなく、関係を長持ちさせるためのメンテナンス作業だと考えるのがよい。
1日15分でOKなので、この時間は完全に他者とのコミュニケーションを避け、散歩、読書、音楽、編み物など、なんでも良いから「完全に社会から切り離された時間」を確保する。
- この問題に特に悩まされているのが、現代の子どもである。いまの子どもは“過密スケジュール”になりがちで、宿題、習い事、SNSなどにより「独り時間」がどんどん消えている。しかし、孤独は子どもにとっても欠かせない機能があり、小児期は「自律性」、児童期は「挑戦と練習」、思春期は「自己探索」を養うのに必須である。
コプラン先生いわく、「つまらなさは創造性の入り口」であり、“1人で遊ぶ時間”を自分でスケジューリングしたり、思春期には“部屋にこもる権利”を尊重することで、メンタルの能力が成長していく。
- コプラン先生が強調するのは、孤独は「多けりゃ良い」「少なけりゃ良い」という単純な話ではないという点である。そもそも孤独は刺激と一緒で、
・多すぎれば不安・回避・抑うつが増える
・足りなければ疲労・混乱・情緒不安が出る
という働きを持っている。孤独も用量(時間)を間違えれば毒にもなるため、「ゴルディロックス・ルール」を守る必要がある。これは、「人にはそれぞれ最適な孤独・社交のバランスがある」という意味であり、このバランスを保ち続けるのが重要となる。
- しかし、孤独のゴルディロックスは、各人の性格・環境・年齢・メンタル状態で毎日変動するため、正解の“分量”を決めるのは思いのほか難しい。現代人は、「◯分瞑想すべき」とか「睡眠は◯時間」とか「運動は◯分」といったアドバイスに慣れているが、コプラン先生は「孤独の最適量はレコメンドできないので、セルフ実験するしかない」と主張している。
なぜなら、個人に必要な孤独の量は諸条件の変動によって変わり、たとえば、
・外向型ほど短時間で回復する可能性がある
・内向型は長めの独りを必要とする
・メンタルが弱っている日は、孤独が危険になりやすい
といった違いが生まれるからである。これをどうにかするには、自分で実験するしかない。
- そこでコプラン先生が推奨するのは、「孤独日誌」を1〜2週間つけることである。記録すべきポイントは3つで、
1 今日の“独り時間”は何分か
2 他者との交流時間(対面/オンライン)
3 寝る前の気分(+3〜−3程度)
だけで良い。これだけで、最低限必要な独り量と、孤独を増やすと逆効果になる領域が浮き上がってくる。
- 孤独を実践する目安として、以下の感覚が出てきたら“適正量”だと判断できる。
・気持ちが落ち着く
・思考がまとまる
・SNS欲求が減る
・他人への苛立ちが下がる
・早寝できる
・頭が軽い
逆に、
・孤独後に不安が上がる
・考えが暗くなる
・ネガティブ反芻が増える
なら、それは孤独ではなく「心理的な隔離」になっているかもしれない。
ということで、いろいろ書いてきましたが、「孤独は悪ではなく“回復の場所”だ!」ってのは実におっしゃるとおりだと思いますんで、頭に置いておくとよさそうであります。あと、コプラン先生がおっしゃる『孤独を奪われると、人生の「編集権」を失う』ってのは芯を食った表現だなぁ、と。


