「どれくらい運動すれば長生きできるのか?」に、ハーバード大学の研究が出した答えとは?
「どんな運動が一番寿命が延びるのか?」ってのは、アンチエイジングにおける永遠のテーマ。長生きしやすいのは筋トレ?ランニング?ヨガ?みたいな疑問は昔からありまして、いまも決定的な答えは出ていない難しい問題であります。
で、近ごろこの疑問に対して、割と「精度が高そうだなー」と思える研究(R)が出てきたんで紹介しときましょう。なんせ対象者は10万人超だし、追跡期間は30年以上だし、ハーバード大学の研究だしで、こいつはなかなか信頼度の高い結果を出してくれてるんじゃないかと。
これはハーバード大学の研究チームが手がけたもので、アメリカの「看護師健康調査」と「医療従事者追跡調査」というド定番の疫学データを使い、約7万人の女性と4万人の男性を30年以上にわたって追跡。運動の習慣と死亡リスクとの関係を調べた内容になっております。
研究の参加者には定期的にアンケートに回答してもらい、1週間のうちにどの運動(ウォーキング、ランニング、サイクリング、水泳、テニス、筋トレなど)をどれくらいの時間行っているかを調べたんだそうな。それぞれの運動量は「MET(代謝当量)」って単位で標準化され、たとえばウォーキングなら3 METs、ランニングなら12 METsといった形で評価してますね。
でもって、研究チームは、食事の質、BMI、血圧、コレステロールなどの因子を調整したうえで、すべてのデータを分析。どんな運動で寿命が伸びるのかを検討してくれたんですな。非常に丁寧な研究で、まことによろしいですね。
それでは、細かいところは置いておいて、この研究から私たちが参考にできそうなとこをピックアップしてみましょう。
参考になるところ、その1:「運動はしすぎるとダメ」説はどこまで本当か?
繰り返しになりますが、今回の研究では、参加者がどれくらいの運動をしていたかを「METs(代謝当量)」で換算してまして、ざっくり言えば、
- ウォーキング:3 METs(ソファで寝てるときを1とした場合の3倍)
- ランニング:12 METs
という感じっすね。これを使うと、たとえば「1日1時間のウォーキングだったら週21METs」みたいに運動の強さを定量的に把握できるわけですな。
で、この研究で最も大事だなーと思ったのが、
- 週に20 METs(=1日40〜60分のウォーキング)を超えると、死亡リスクの低下は“頭打ち”になるっぽい。
って傾向が認められたところです。要するに、ある程度の運動量を超えると、それ以上やっても寿命はあまり伸びないってことでして、これを見ると「やっぱ運動も過ぎたるは及ばざるがごとしだなー」とか思ってしまうわけですな。
ただし、これについては個人的に「どうかなー」と思うところもありまして、冷静に読むと「統計的調整」のところに疑問がわくんですよね。というのも、この研究チームは、運動の効果を純粋に測るため、BMI・血圧・コレステロールなどを調整しているんですけど、「ん?でも、運動って、それらを下げるためにやってるんじゃなかったっけ?」という気がするんですよ。つまり、「運動をすると健康指標が改善して、それによって寿命が延びる!」という正の連鎖を、わざわざ調整で打ち消しちゃってないか?ってことです。
なので、私としては、これだけで「20METsで効果は打ち止め!」と断言するのは早計かなーってところです。まあ、シンプルに健康を維持するって目的なら、これぐらいを目指せば十分なのかもしれませんが。
参考になるところ、その2:「◯◯みたいな運動はダメ」ってホント?
本研究のウリのひとつが「運動の種類別分析」です。ウォーキング、ジョギング、水泳、自転車……みたいに、9つのトレーニングに対して「寿命への効果曲線」を描く形で分析してくれております。
デモって、このグラフがどうだったかと言いますと、これまた納得できるところと、「ん?」と思うところにわかれておりました。結論をざっくりまとめると、
- ウォーキング:右肩下がりで順調に死亡リスクが低下してるので、歩けば歩くほど寿命は伸びるっぽい(ウォーキングの効果は昔から言われてるので、これは納得)。
- ジョギング:グラフはU字型になってる。つまり、ジョギングはやりすぎると逆に寿命が縮む!って結果だけど、ちょっと疑わしい気もする。
- サイクリング:少しだけやると寿命が伸びるが、中くらいだと寿命が縮み、大量にやるとまた寿命が伸びるってグラフになっていて、かなり謎。
って感じになってまして、ウォーキングは完全に良さそうだけど、他の運動に関するグラフは謎が残るなーって感じですねぇ。これらの謎について、研究チームは「たぶんノイズじゃない?」と言ってまして、要するに「統計的にいろんな操作をしてるから、それでグラフがバグったのかも?」みたいなことっすね。観察研究ではようあることではありますけども、なかなか判断が難しいですねぇ。なので、これをもとに「ハンパなサイクリング好きは死にやすい!」とか思わないほうが無難でしょう。
参考になるところ、その3:「運動は種類が多いほどいい」説は正しいか?
今回の研究から得られた知見のなかで、最も健康クラスタで話題になってたのが、
「いろんな運動を組み合わせた人ほど長生きしていた」
ってデータであります。まあ、これについては全面的に納得の結論でして、筋トレだけやったら心肺は鍛えられないし、有酸素運動だけだったらは筋力は上がりませんからねぇ。両方やったほうが強いのは当然でしょう。
ただしここでも注意点もありまして、
- 運動の種類が多い人は、単に運動時間が多いだけでは?
- 運動の種類が多い人ほど、もともと健康な人なのでは?(=逆因果)
といった注意をしつつデータを解釈する必要はございましょうな。私としては、「週に1〜2回は普段と違う動きをする!(たとえば筋トレ+ウォーキング+ピラティスとか)」ぐらいに考えておけばいいのかなーぐらいに思ってますが。
ってことで、研究の大事なポイントは以上です。いろいろと細かいところに難癖をつけちゃったので、「結局はどうすればいいんだ!」と思った方も多いかもしれませんね。
なので、この研究から得られる収穫をひとことでまとめてしまうならば、
- 「ほどほどにいろんな運動をするのが吉!困ったら、とりあえず歩け!」
みたいになります。うわー、シンプル! 拍子抜けするような結論ですけども、今回のデータを見る限り、どうしてもこれぐらいの落とし所になっちゃうよなーって印象なんですよね。
逆に言えば、長寿を目指すためにはそこまで複雑に考えなくても良さそうなんで、皆さま上記のガイドラインだけを守ってお好きなように動いていただければと。



