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アメリカ心理学会が「老いを味方につける科学」をまとめてくれてたぞ

 
 

社会の高齢化にともなって、「年を取るのも悪くない!」なんてアドバイスをよく耳にすることが増えたわけです。まあいかにもポジティブな考え方なんでちょっとうさんくさい気もしますし、一方では「加齢を受け入れよ!」みたいなアドバイスも出回ってるんで、私のように日々老いを実感しつつある身としては、「どうすりゃいいんだ!」って気にもなってくるわけです。

 

そんな折、近ごろみんな大好きアメリカ心理学会(APA)が、『加齢の視点(Perspectives on Aging)』という小冊子を無料で公開してくれてまして(R)、これがなかなか参考になる内容だったんで簡単にチェックしておきましょう。

 

この冊子は、心理学の専門家や研究者によるエビデンスベースの提言を詰めこんだもので、加齢をめぐる偏見を打ち破りつつ、いかにして「幸せな老い」を実現できるかをわかりやすくまとめたみたいな内容になっております。コロラド州立大学のマンフレッド・ディール教授が冒頭でおっしゃるには、

 

「“老いは悪くない”というのは、ただの楽観主義ではない。厳密な科学に基づいた話だ。」

 

とのこと。なかなか希望が持てることを言ってくれますなぁ。

 

この結論を導き出すために、研究チームは「年齢に対するステレオタイプ(=エイジズム)をどうやって乗り越えるか」という点を冊子の中心テーマのひとつにすえております。エイジズムについては本ブログでも何度も書いているとおりで、

 

「年取ったら物忘れは仕方ないよね」

「どうせもう挑戦する年じゃないし…」

「若い人に任せるのが一番」

 

みたいな、加齢に対するネガティブなイメージのことです。こいつは意外とやっかいな存在でして、単なる差別意識にとどまらず、自分自身のメンタルや体調、認知機能にまで悪影響を及ぼすことがあるんですよね。「年寄りへのネガティブな印象」が広まってると、それだけで社会全体に広い悪影響が出ちゃうってことですな。

 

では、どうすればいいのか? ってことで、この冊子では「年齢は“他人の物差し”じゃなく、自分で定義しようぜ!」って考え方が提案されております。たとえば、本冊子の中で、ある先生はこんな指摘をされております。

 

「カレンダーではなく、“内なる自分”で自分を定義することが、最も健康的な老いを実現するカギになる。」

 

ってことで、いまいちわかりづらい表現ですけども、要するに加齢にともなって失うものもあるけど、その一方で「得られるもの」もあるんだから、そっちに意識を向けようぜ!みたいなことです。たとえば、

 

  • 人生経験によって鍛えられた“判断力”

  • 人間関係における“しなやかさ”

  • 小さな幸せに気づける“感性”

 

みたいな話っすね。心理学者エルリーン・ロソウスキー博士も「苦労して得たスキルは、年齢とともに研ぎ澄まされていく!」とコメントしてまして、確かにここらへんは加齢の良いところなんで、意識しておくとよさそうっすね。

 

さらに、加齢の良いところとしては、

 

  • 他人との比較に振り回されにくくなることで、メンタルが安定してくる
  • 「がんばる」よりも「うまく手を抜く」技術が身について、余裕が持てる
  • 他者への共感力が増すことで、人間関係がより温かくなる

 

みたいなものもありますんで、ここらへんも意識しとくと良さそうであります。私も年を取れば取るほど「他人との比較に振り回されにくくなる」ってのは実感してまして、これだけでも「年を取るのはなかなかよいぞ!」と言えそうな気がしております。

 

さらにこの冊子では「目的意識」の重要性も強調されてまして、『Aging Well』ってブログを書いているキャサリン・エスティ博士の指摘はこんな感じです。

 

「人生の意味を見出せる人は、最後の日まで“愛し、成長し、与え続ける”ことができる」

 

つまり、日々のなかで「このために生きてるんだなー」と思うことができれば、わりとみんな元気に生きていけるんだ、みたいなことですね。これはポジティブ心理学の研究でも裏づけられていて、人生の目的が明確な人ほど、

 

  • うつ病や不安症のリスクが低くなる

  • 認知症の発症率が下がる

  • 健康寿命が延びる

 

といった報告が出ているんですよ。ここで言う“目的”ってのは、たとえば「週に一回、孫に読み聞かせをする」「町内会のイベントで司会を引き受ける」といった小さな目標でもOK。「自分にはまだやるべきことがある!」と思えるような目標であれば問題ないんだそうな。なので、

 

  • 週1回できそうなことを1つ決める(例:5分の散歩、読書1ページ)
  • 人と話す・助ける・教えるみたいな、誰かと関わる目的を作る(例:孫に電話、近所の人に挨拶)
  • 昔から気になってた趣味や昔好きだったことを思い出してみる

 

 

って感じで目標を作っていくのが良さそうであります。こちらも重要なポイントっすね。

 

ちなみに、この冊子では「認知症に関する最新の知識と“修正可能なリスク因子”の紹介」とか「高齢者に特化したカウンセリングや心理療法のアプローチ」みたいなお役立ち情報がいろいろ出てますんで、そこらへんが気になる方もぜひお読みいただければと思う次第です。

 

最後に、この冊子でワシントン大学のブライアン・カーペンター博士は、こんな発言をしておられます。

 

「人は年を取っても、変化と成長にコミットする力を持っている。」

 

確かに、近年は「年を取ったら、もう変われない」って考え方は否定されつつあって、人生の後半にこそ「レジリエンス(回復力)」や「パーソナリティの柔軟性」が活きてくるって知見のほうが優勢ですからねぇ。なかなか希望のある話ではないでしょうか。

 

というわけで、話をざっくりまとめると、

 

  • 老いに対するネガティブな思い込みを見直す
  • 自分の年齢を“再定義”する
  • 小さな目的意識を持って、日々を過ごす

 

といったあたりを意識するだけでも、「年を取るって悪くないかも」と感じられる日が増えるのではないでしょうかー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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