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「ADHDの人は、ADHDの強みを活かそう!」ってアドバイスは正しいのか問題

 
 

「ADHDの人は、ADHDの強みを活かそう!」みたいなアドバイスはよく聞くところです。ADHDの人ってのは、集中力が続かない、衝動的に行動してしまう、整理整頓が苦手といった悩みを持ちやすいんだけど、これは「神経多様性(ニューロダイバーシティ)」のひとつだと潔くあきらめて、この特性が持つ「良いところ」にフォーカスして生きるほうが幸せになれるんじゃないかって話ですな。

 

なんとなく納得できるようでもあり、たんなるきれい事のようにも聞こえるアドバイスですけども、果たして「ADHDは本当に強みを活かすほうがいいのか?」ってことで、そのへんをイギリス・バース大学の研究チームが調べてくれておりました(R)。

 

これはイギリス国内から集めた400人(ADHD診断あり200人+診断なし200人)を対象にした研究で、みんなにいろいろと調査を行いまして、

 

  • 注意力や衝動性といったADHD傾向

  • 生活の質やメンタルヘルス

  • 自分の強みをどれだけ自覚し、日常で活かしているか

 

をチェックしたんだそうな。ここで言うADHD関連の「強み」ってのは、

 

  1. 創造力
  2. 想像力
  3. ユーモア
  4. 好奇心
  5. 直感力
  6. 問題解決力
  7. 即興力
  8. 柔軟性
  9. 高い集中力(集中しやすい)
  10. 情熱
  11. 活力がある
  12. 興味が幅広い
  13. 新しい体験への開放性
  14. 社交性
  15. 共感力
  16. 協調性
  17. 挑戦心
  18. 決断力
  19. 自主性
  20. 観察力
  21. 負けず嫌い
  22. 楽観性
  23. 行動が早い
  24. 逆境への強さ
  25. あきらめない力

 

みたいな感じで、合計25項目をリストアップしております。これらの中から、自分に当てはまるものを選んでもらったわけですな。

 

でもって、分析の結果どんなことがわかったかと言いますと、

 

  • 全体的な傾向としては、やはりADHDグループのほうが「ウェルビーイング(心の健康)」「生活の質」「メンタル症状」のいずれも、定型発達のグループよりも低い傾向が見られた。これは過去の多くの研究と一致しているところ。

 

  • しかし、「自分の強みを積極的に使っている」と答えた人は、ADHDの有無を問わず、明らかにウェルビーイングと生活の質が高かった。特にADHDグループでは、「強みの活用度が高い」人ほど「生活の質が最高レベル」になる傾向があった。しかも、この効果はADHD症状の重さに関係なく見られた。

 

みたいになります。研究チームの読みどおり、やはり「強みを活かすことで生活の質や心の健康が高まる」ってことですね。

 

ちなみに、この分析では、他に以下のような結論も得られてまして、

 

  • ADHDグループは「自分には強みがある」と認識している割合が、定型発達のグループよりもわずかに高かった(平均17.6個 vs 16.3個)。
  • 特にADHDグループの55〜70%が「自分の強み」と回答したのは、「創造性」「想像力」「ユーモア」「直感」「ハイパーフォーカス」「新しいことへの好奇心」だった。
  • 一方で、「強みの自覚」や「日常での活用度」は、ADHDの有無にかかわらず同じくらい(認識率72%、活用率69%前後)だった(つまりADHDだからといって、強みに気づきにくいわけではない)。

 

こちらも興味深いところっすね。つまり、ADHDの有無に関係なく、「自分の強み」を認識して活かすことができるのだと申せましょう。

 

じゃあ、具体的にどうすればいいの?ってところが気になりますが、残念ながらこの研究チームではそこまでの言及はなし。ただし、上記の調査をもとに推測してみると、今からできることとしては、

 

  1. 自分の「強み」をリスト化してみる:自分が「得意だな」「人から褒められたことがあるな」と感じたことや、逆に「無意識にやっていること」なども含めて、思いつくまま紙に書き出してみる。過去の経験や日常のちょっとした成功体験を振り返るとよさそう。

  2. 日常や仕事で、意識的にその強みを活用できる場面を探す:たとえば、「アイデア出しが得意」なら会議や企画の場面で積極的に意見を出す、「行動が早い」ならタスクを細かく分けて即スタートする、みたいな感じで、自分の強みを活かせるシーンを意識的につくってみるのもよさげ。

  3. 他人の評価や一般的な「欠点」イメージからいったん離れて、「自分にとって自然にできること」を見直してみる:ADHDの人は、どうしても「普通」に合わせなきゃと思いがちなんだけど、自分にとって楽にできることや無理せずできることに注目してみるのも大事。それが他人とは違う「自分だけの強み」であることも多いはずなんで。

 

などを試してみるといいんじゃないでしょうか。「どうしても苦手なところに目が行ってしまう……」という方も、「自分ならではの特性を使っていいんだ」と思えるだけで、ちょっと肩の力が抜けるんじゃないでしょうか。もちろん苦手な部分へのサポートも大事だけど、「社会が求める“普通”」に合わせるだけでなく、「自分の強みをどう活かせるか?」を考えるってのは、いろんな問題に当てはまるポイントでしょうな。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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