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今週の小ネタ:呼吸のタイミングが記憶を左右する、やる気を出したい時は「脳のモード」に気をつけよう、酒の好みにも性格が反映してるぞ


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

呼吸のタイミングが記憶を左右する

「呼吸と記憶が結びついてるぞ!」って論文(R)がおもしろかったのでメモしときましょう。「呼吸が人体の機能に大きく関わっているのでは?」ってのは昔から言われていて、これまでの研究でも、

 

  • 吸っているときのほうが顔の表情を正確に識別できる

  • 吸気中のほうが触覚刺激を敏感に感じ取れる

  • 睡眠中も呼吸リズムが脳波を調整している

 

みたいない知見が報告されてきました。呼吸は睡眠や覚醒の脳活動にも影響するので、いろんな機能に関わってることが多いわけですな。

 

ただし、これまで不明だったのが「呼吸は記憶にも関わっているのか?」ってところでして、研究チームはここを調べてみたわけですね。今回の研究では、平均21歳の健康な若者18名を対象に、以下のような実験を行っております。

 

  • 参加者に、動詞(例:jump)と画像(物体や風景)を結びつけて覚えてもらう。その後、動詞だけを手がかりに画像を思い出すテストを実施。
  • その間、脳波(EEG)と呼吸(吸気・呼気)を同時に計測し、「どの呼吸のタイミングで記憶に変化が出たか」を調べる。

 

すると、結果はおもしろいもんでして、以下のようなパターンで記憶した時に、テストにに成功しやすい傾向があったんだそうな。

 

  1. 息を吸ってる時に記憶すると
  2. その後、息を吐く時に記憶の再活性化が進む

 

ということで、ざっくり言えば、「 吸う → 情報を受け取る、吐く → 記憶を再構築する」 という役割分担が起きている可能性があるわけですな。呼吸と脳活動の連動は「偶然」ではなく、機能的な意味がある可能性が高いってことなんでしょう。

 

となると、当然「意識的に呼吸をコントロールすれば記憶力は上がるの?」 という疑問が湧いてきますけど、ここで研究チームは慎重な姿勢を見せておられます。今回は今回は自然な呼吸を測定しただけで、呼吸を意図的に操作したわけではないし、効果サイズも「控えめ」ですからね。

 

なので「呼吸法で記憶力アップ!」とは言えない感じなんですけど、とりあえずは、

 

  • 記憶課題の前に数回ゆっくり深呼吸をする
  • 吸気で情報を受け取り、呼気で整理するイメージを持つ
  • 呼吸を乱すストレス状態を避ける

 

ぐらいは意識しといて損はないでしょう。個人的にも、呼吸が記憶の足場になっている可能性はあるだろうなーと思ってますんで、「勉強の時は呼吸を整えてみよう」みたいに考えておくといいんじゃないでしょうか。

 

 

 

やる気を出したい時は「脳のモード」に気をつけよう

「やる気とはなにか?」と問われたら、おそらく多くの人は「努力の量を上げるスイッチ」みたいな答えを返すのではないでしょうか。やる気が出れば集中力が高まり、作業量が増え、パフォーマンスも上がる、といった捉え方

 

まあ、この理解でも別にいいんですけど、新しいレビュー(R)では、「やる気は努力を引き出すスイッチ」ではなく、「脳の記録モードを変えるスイッチなのだ!」みたいになってて、ちょっと役に立ちそうな知見でした。

 

まず前提を押さえておくと、これまでの研究では、私たちの脳の働きには2つのパターンがあることが明らかにされております。

 

  1. 探究モード好奇心、不確実性の解消、探索などの状況で優位になりやすいモード。海馬や前頭前野の関与が強く、情報を関連づけて覚え、スキーマ(知識の地図)を作りやすい

  2. 実行モード:締め切り、脅威、高額報酬など「今すぐ何とかしなければ」って状況で優位になりやすいモード。扁桃体や感覚野が強化され、注意が一点に収束する。

 

簡単に言えば、探求モードの時の脳は「全体像をつかむ」のに向いていて、応用が効く柔軟な記憶を作りやすいのたメリット。一方で、実行モードの時は細かいところが鮮明に記憶に残るのがメリットで、逆に情報の背景や関係性は落ちやすいって感じですね。

 

で、このレビューでは、研究チームが上記の脳の2つのモードをあらためて調べまして、「私たちの脳のリソースは有限なので、環境に応じて最適な学習モードに切り替わるのだ」ってあたりを強調しておりました。人間の脳はそこまでエネルギーがあるわけではないので、目標が一つだけに定まっている時には「実行モード」を使い、学ぶ対象が分散しているときは「探究モード」に切り替えて、脳のコストを節約してるわけですな。

 

そう考えますと、私たちが何かを学棒とする時は、その目的に合わせて脳モードを意図的に寄せるのが良いと考えられまして、

 

1.全体理解したいとき → 探究モードを起動

  • 締め切りを遠ざける
  • ご褒美を設定しすぎない
  • 「なぜ?」を繰り返す
  • 散歩や自由時間を挟む

 

2.集中して覚えたいとき → 実行モードを起動

  • 時間制限を設ける
  • 小さな報酬を設定する
  • 雑音を減らす
  • タイマーを使う 

 

みたいに意識するのがいいんでしょうな。やる気を無理やりに上げようとするんじゃなくて、「いまの環境を判断して、どの脳のモードを使うか選ぶ」って発想が重要になるってことですね。

 

 

 

酒の好みにも性格が反映してるぞ

「ワインの好みにも性格が関係してるぞ!」って研究(R)が面白かったんでメモ。この実験のテーマはシンプルで、「ビッグファイブでワインのアルコール度数(ABV)の好みを予測できるのか?」みたいになります。ビッグファイブってのは、ご存じ性格を5つの軸で捉えるモデルで、以下の特性からなっております。

 

  • 開放性:好奇心・新奇性への欲求
  • 誠実性:自己管理・計画性
  • 外向性:社交性・活動性
  • 協調性:対人調和志向
  • 神経症傾向:不安・情緒不安定さ

 

で、この研究では、ECサイト上のワインレビュー9,917件を収集し、自然言語処理(BERT)で文章から性格傾向を推定。これを、みんなが購入したワインのアルコール度数と照らし合わせて傾向を見たんだそうな。ビッグファイブの研究はたくさんありますけど、アルコール度数との関係を調べたものは珍しいっすねぇ。

 

で、結果がどうだったかと言いますと、

 

 

  • 開放性が高い人は“強め”を好む:まず最も明確だったのが、開放性が高い人ほど、アルコール度数が高いワインを選ぶって点です。アルコールが多いワインは、ボディが重くて粘性があって味わいが複雑なんで、好奇心旺盛な人は、こうした性質を求めやすいらしい。

 

  • 協調性が高い人も“強め”を選ぶ:これは少し意外でしたが、協調性が高い人も、アルコール度数の高いワインを選びやすいらしい。その理由は彼らが社会的だからで、高アルコールワインは「格が高い」イメージがあるため、社会的規範への適応として度数の高いワインを選ぶんだそうな。つまり、「みんなが良いと思っているもの」を選ぶ傾向があるってことですな。

 

  • 外向性はむしろ“弱め”を選ぶ:ここもちょっと意外で、外向的な人は強い酒を好みそうなイメージがあるんだけど、実際には低アルコールワインを選ぶ傾向があったとのこと。これについては、外向的な人はできるだけコミュニケーションを長くしたいので、酔いすぎないために度数を抑えるのだろうと考えられております。

 

  • 神経症傾向が高い人も“弱め”:不安傾向が強い人も、アルコール度数が低いワインを選ぶ傾向があったとのこと。強いアルコールは、コントロール感の低下や不安の悪化を引き起こしやすいんで、それを防ぐために弱い酒を選んでいるんでしょうな。

 

  • 誠実性だけは関係なし:唯一、誠実性は有意な関係が見られなかったとのこと。その理由はおそらく相殺で、健康志向な人は低アルコールを選ぶし、品質志向の人は高アルコールを選ぶしで、この2つが打ち消し合った可能性があるんじゃないかと。

 

って感じだったそうです。どうやら私たちの好みは「味覚」だけでなく「心理」でも決まるようなんで、自分が酒を選ぶ時にはそこに意識を向けてみるのも面白いかもですねー。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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