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睡眠が足りないと、なぜだらだらして仕事が進まなくなるのか?


  

先延ばしをしたくなければよく眠れ!」って研究がいくつか出てたんで、内容をチェックしておきましょう。

 

  1. ウルム大学などの研究(R)では、154人のビジネスパーソンに睡眠日誌を記入してもらい、その内容を日中の仕事ぶりと比較した。結果、よく眠れる人は先延ばしが少なく、睡眠の量が多い人ほど仕事にすぐに取りかかり、生産性が多いことがわかった。


  2. 上記と同じチームが行った別の研究(R)では、66人のシフトワーカーへ週に2回の仕事のアンケートを取り、332日分のデータを分析。仕事中のエネルギー、意志力、先延ばし、睡眠の質を追跡したところ、よく眠り、概日リズムと仕事のスケジュールが適合している人ほど、日中のエネルギーと意志力が強く、翌日の先延ばしが少ないことがわかった。逆に、よく眠れず、概日リズムと仕事のスケジュールがずれていた日は、より先延ばしにする傾向があった。

 

ってことで、睡眠不足と仕事の先延ばしには、一貫した相関が見られたらしい。というと、「よく眠れなかったら頭が働かなくなるから当然でしょ!」と思う人は多いでしょうが、実際には、もうちょい別のニュアンスがあったりします。研究チームによると、睡眠不足で先延ばしが起きる原因ってのは、

 

  1. そもそも「仕事の先延ばし」が起きるのは、感情コントロールができない人に多い(失敗を恐れたり、不安になったり、退屈で他のことに目が行ったりとか)。

  2. 睡眠のメリットはいろいろあるが、なかでも大きなものに「自己調節リソース」の回復がある。自己調整とは、感情や行動を管理して行動する能力のことで、感情をうまくコントロールする能力もこれに該当する。

  3. 睡眠不足になると感情のコントロール能力が回復しないので、退屈を我慢したり、報酬がなくても努力をしたり、不安を無視したりといった能力が低下する。それによって、先延ばしが発生する。

 

みたいな流れになります。研究を見ていると、一日でも睡眠が足りないと扁桃体の機能が低下するとのこと。扁桃体ってのは感情を処理する脳の部位なので、こいつがダメージを受けると、当然ながら感情はコントロールできなくなるわけです。

 

これに加えて、人にはそれぞれ自前のクロノタイプがあるのも問題の一因。夜型の体内時計を持つ人が、出勤の時間が早い会社などに勤めてしまうと、やはり睡眠の質が下がってしまい、それによって「先延ばし」が起きやすくなるんですな。

 

前にも書いたように、「先延ばし」って現象は感情コントロールの問題なので、寝不足で頭が回らないのが原因じゃないんですよね。言い換えれば、睡眠不足で先延ばしが起きているときってのは、感情が暴走しちゃうわけです。

 

もうちょい簡単にまとめておくと、

 

  1. 睡眠不足で、脳の感情コントロール機能が不調を起こし、ネガティブな感情が蓄積していく。

  2. ネガティブな感情から抜け出したい!という気持ちが増幅し、 手軽に気分が回復しそうな方法を求め始める。

  3. その結果、スマホのゲーム、SNSのスクロールなどに目が向いて、仕事に手がつかなくなる!

 

みたいな流れですね。ちなみに、ちょい前の研究(R)では、睡眠障害やレム睡眠が足りない人は、前日の失敗をより恥ずかしく感じるようになるんだそうな。寝不足だと扁桃体の不調が起こり、それによって恥の感覚がブーストしてしまい、そのせいで「もう恥をかきたくないから何かを避けたい!」って気持ちになり、なかなか仕事をやらないような心持ちになってしまうらしい。

 

さらに、この先延ばしによってさらに恥の感覚がブーストし、ネガティブな感情のせいでまた睡眠の質が低下。そのせいで、いよいよ感情コントロールが下手になってしまい、それでますます先延ばしが加速していくんだそうな。嫌ですねぇ……。

 

まこの問題を解決するには、大きく2つの方向性があって、

 

  1. どうにかして、よく眠る:先延ばしは睡眠不足による脳の機能不全で発生するので、もっとよく眠れば、感情のコントロール能力が復活して先延ばしは減る。ただし、睡眠不足の人は、先延ばしによる不安や罪悪感で眠れていないケースが多いので、意外と改善は大変。具体的には「「夜になると眠れない!」をたった15分で解決できる2つの心理テク」などを参照。


  2. どうにかして、先延ばしを減らす: 先延ばししたくなる気持ちをぐっと乗り越えて、どうにか仕事を片付けていくと、ネガティブな感情が減るので、それによって睡眠の質が改善する。ただし、先延ばしをする人は、睡眠不足のせいで感情コントロール能力が落ちているので、先延ばしをクリアするのは超大変。具体的には「やるべきことに手が付けられない!を克服するにはどの方法がベストなのか?を調べた研究の話」などを参照。

 

って感じになります。どっちを選ぶかは個人の特性によりますが、個人的には「睡眠を改善するほうがまだ楽かなぁ……」って印象を持っております。いずれにしても、「自分がだらだら仕事をしているのは睡眠不足が原因かもしれないなぁ」と考えてみると、より原因が明確になってよいんじゃないでしょうか。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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