「夜になると眠れない!」をたった15分で解決できる2つの心理テク
「睡眠の処方性(The Sleep Prescription)」って本をチラホラ読んでおります。著者のアリック・プラザー博士はUCSFの心理学者で、認知行動療法をベースに睡眠の改善指導をしている先生らしい。
で、本書の内容も、タイトルどおりメンタルから睡眠にアプローチした一冊で、日本だと「認知行動療法で改善する不眠症」に近いですね(この本も、メンタルをベースに睡眠の改善を行う本のなかではかなりおすすめ)。
プラザー博士の本も、認知行動療法をベースにしつつ複数の方法が述べられているんですが、特に本書では、「睡眠を妨げる一番の原因」として、「反芻思考」を最大の問題としてピックアップしておられます。
当ブログをお読みの方なら、反芻思考はおなじみでしょうが、簡単に言えば「脳内でネガティブな思考をいつまでも考え続けること」みたいな意味です。過去にうまくいかなかったこと、いまでも後悔していることなどに、何度も何度も意識が向いてしまう状態ですね。
たとえば、ベッドに横たわりながら、「ああ……あのときギャグを言って滑ったな……」みたいなシーンが何度も再生されて眠れなくなったような経験は、誰にでもあるんじゃないでしょうか。そんな瞬間は、その時まわりにいた人は、たいてい忘れてるもんですが。
いずれにせよ、プラザー博士は、ソーシャルメディアやら寝心地の悪い枕などよりも、反芻思考を睡眠不足の第一の原因としてまして、これは私もかなり賛成できるところであります。いったんネガティブが回りだすと、ホント眠れないですからねぇ。
このようなネガティブな思考や感情を、神経科学者は「サリエンシー」と呼んでまして、特に寝室のように暗くて静かなときに起きやすく、私たちの睡眠を妨げる要因になっております。
それでは、この問題に対してどうすればよいかと言いますと、博士いわく「反芻を完全に止める魔法のスイッチはない」とのこと。夜間の脳ってのは、情報を整理して、新しいシナプスを作る作業を行うので、どうしても過去の嫌な出来事や記憶を掘り起こすようにできているんだそうな。うーん、確かに。
ってことで、この事実をふまえたうえで博士は、夜の反芻を止める方法を2つ提案しておられます。
1. 早めに悩んでおく
これは、以前に当ブログで書いた「定番の不安撃退テク『心配の先延ばし』」とほぼ同じやり方ですね。ただし、博士の提案はさらに簡単にまとまっていて、
- 午後3時ぐらいから夕方にかけて、15分間のフリータイムを確保する。
- トイレに入ったり、外を散歩したりと、誰にも邪魔されない環境を作る。
- 15分のタイマーをスタートさせ、1つのトピックについて心配する自由を自分に与え、自分が最も不安に感じていることを徹底的に悩む。
- もし、それ以外の時間に心配になったら、「あ、これは15分のフリータイムで心配すべきやつだ」と自分に言い聞かせる。
- 就寝時にまた心配事が出てきたら、同じようにあ「あ、これは明日の15分のフリータイムで心配するやつだ」と自分に言い聞かせる。
みたいになります。だいぶシンプルなテクニックで、使い勝手もよいのではないでしょうか。博士はこれを週に2~3回ずつ行うように推奨してまして、そのうち夜の反芻が少しずつ薄れていくとのこと。これは個人的にも試して効果を実感してまして、ダマされたと思ってお試しいただきたいところです。
2. "建設的な心配 "を実践する
こちらも、認知行動療法のテクニックをシンプルに改定したものです。実践の方法は簡単で、
- 適当な紙を用意し、その上に「問題 」と「解決」と書いた2つのエリアを作る。
- 「問題」のエリアに、あなたがいま抱えている問題を短文で書き出す。特に、夜に反芻思考になりそう問題を重点的にピックアップする。
- 「解決」のエリアには、それぞれの問題に対して、次に取れそうなステップを1~2つほど考えて書き出す。ここで書き出す解決策は、明日か数日以内に実行可能なステップに限るのがポイント。問題を完全に解決しようとはしないこと。
- 書き終わったら、紙を折りたたんでベッドの横に置き、「私には問題を解決するための計画がある」と自分に言い聞かせる。
みたいになります。なんともバカバカしい手法のようですが、いったん「自分はすでにその問題に取り組んだのだ!」という事実を作ることで、夜中にその問題に悩みにくくなるんだそうな。これもわかるなぁ。
ってことで、ベッドに入っても眠れない問題を解決するための心理テクを見てみました。どちらもシンプルながら、神経科学にもとづいたナイスな手法なので、お試しいただくとよろしいのではないでしょうか。