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今週末の小ネタ:良い友人を作ると腸内細菌も良くなる? 心臓病のリスクを下げたきゃ朝の運動がいい? 記憶の劣化を遅らせるにはクロスワードパズルが良い?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

 

良い友人を作ると腸内細菌も良くなるかもよ

人体のパフォーマンスを万全にするには腸内細菌を養うのが大事!って話は、「最高の体調」でも強調したポイント。腸内細菌が乱れると体調がガタ崩れしやすいのは、よく知られた話でしょう。

 

 

でもって新たな研究(R)では、「良い友人を作ると腸内細菌も良くなるかもよー」って話になってておもしろかったです。

 

 

といっても、これはまだ動物実験の段階なので、話半分にお読みいただければ幸いですが、まず結論から申し上げますと、

 

  • 仲間の数が多く、仲間とコミュニケーションする回数が多いサルほど、腸内環境が健康的だった。

 

みたいになります。社交的なサルほど腸内フローラがけん前で、有益な細菌であるフェカリス菌やプレボテラ菌が多く、レンサ球菌みたいな悪い細菌が少なかったんだそうな。

 

 

これはオックスフォード大学などの研究で、38匹のアカゲザルを観察しつつ、すべての個体の便サンプルを収集。そのうえで、すべてのサルが毛づくろいをしている時間や毛づくろいされている時間などを調べ、これを社交性の基準として使ったらしい。

 

 

でもって、それぞれのサルの性別、年齢、集団の階層内での順位などを考慮して調整したところ、

 

社会的なコミュニケーションの多さは、有益な免疫機能を持つ特定の腸内細菌の量と正の相関があり、病気の原因になる微生物の量とは負の相関があった。

 

特に、腸内細菌のフェカリバクテリウムの多さと、動物の社交性の高さの間に強い正の関係が見出されたことは、驚くべきことである。フェカリス菌は強力な抗炎症作用があることで知られており、健康との関連が指摘されている。

 

といった傾向が確認されたそうな。とにかく社交性なサルほど腸内が健康だったわけですね。

 

 

まー、社交性と腸内細菌の関係については、原因と結果を区別するのが難しいので、「友人を増やせば腸内も健康に!」ってわけじゃないないのでご注意を。腸内が健康だとメンタルも健やかになり、おかげで友人が増えるのかもしれないですからね。そこらへんはよくわからんのですが、社会的なつながりが心身の健康に欠かせないのは間違いないので、「友人は腸内にも良いかも?」ぐらいに考えておくとよいんじゃないでしょうか。

 

 

 

心臓病のリスクを下げたきゃ朝の運動がいいかも?

運動は朝すべきか?それとも夜すべきか?って議論は昔からあって、いまのところ「どちらにもメリットがある!」って結論なわけです。ざっくり言えば、早い時間に運動をすると脳機能に良い影響があり、遅い時間の運動は身体のパフォーマンスが上がりやすい、みたいな感じですね。

 

 

でもって、新しいデータ(R)も「朝の運動」に有利な話で、こちらも結論から申し上げますと、

 

  • 朝早く運動する人は、脳卒中になる確率が17%低い

 

のようになります。これは42〜78歳の健康な男女86,657人を調べた研究で、まずは全員の運動量を活動量計で7日間にわたってチェックし、それからみんなを6年から8年ほど追跡し、どれぐらいの人数が脳卒中や心臓の病気にかかったかを調べたそうな。

 

 

すると、運動の時間帯と心臓病と脳卒中リスクには、わりとはっきりした関係が認められまして、

 

  • 午前8時から午前11時の間に最も活動的な人は、心臓病と脳卒中の両方のリスクが最も低かった。

 

って結果だったらしい。ちなみに、午前中だけでなく深夜に活動的だった人も発症リスクが下がっているんですが、総合的には、早朝に最も活動的だった人がベストだったみたいっすね。

 

 

研究チームいわく、

 

この研究分野は非常に新しいものなので、朝の運動を優先すべきだとアドバイスしたいわけではない。しかし、いつの日か、「運動するときは、朝にすることをお勧めします」と一行加える日がくるかもしれない。

 

とのこと。観察研究なので、なんで朝の運動に有利な結果が出たかはわからんのですが、もしかしたら病気の予防には朝の運動のほうがいいのかも?って気がしてきますな。

 

 

 

 

記憶の劣化を遅らせるにはクロスワードパズルが良い?

クロスワードパズルはデジタルの記憶ゲームよりも脳に良い!」って話(R)が出ておりました。

 

 

これはコロンビア大学などの研究で、軽度認知障害(MCI)に悩む男女107名が対象。実験では全体を2つのグループにわけまして、

 

  1. クロスワードパズルのトレーニング
  2. 認知ゲームのトレーニング

 

のどちらかへにランダムに割り付けたんだそうな。認知ゲームってのは記憶や情報処理の増加を目指して作られたゲームで、いわゆる任天堂の脳トレみたいなものです。

 

 

トレーニングは12週間で、その後に78週間までブースターセッションを行ったとのこと。クロスワードパズルに脳を刺激する効果があるってのは昔から言われてることですが、認知の問題にメリットがあるかを確かめた調査はないので、実にありがたいことですね。

 

 

で、結果はこんな感じでーす。

 

  • クロスワードパズルは、12週間および78週間のいずれにおいても、ADAS-Cog(認知の働きを表す指標)が、認知ゲームよりも優れていた。

 

  • FAQ(日常生活機能の指標)は、78週時点でクロスワードパズルの方が優れていた。

 

  • 脳の縮小レベル(MRIによる測定)も、78週目のクロスワードパズルの方が少なかった。

 

ということで、クロスワードのすばらしさについて、チームは以下のように申しておられます。

 

これは、他の介入と比較して、自宅でのクロスワードパズルのトレーニングが短期的にも長期的にも有益であることを証明した最初の研究だ。認知機能だけでなく、日常生活でも効果が見られ、MRIで脳の縮小予防が示されたことから、臨床的に意味のある効果だと考えられる。

 

まー、この実験は、認知トレーニングを受けなかった対照群を作ってないし、あくまで軽度な認知障害の人が対象なので、若くて健康な脳についても同じことが言えるかどうかは不明であります。とはいえ、私たちにとってなじみ深いクロスワードパズルが、良い脳トレになるかもしれないってのは、ちょっとおもしろいっすね。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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