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やるべきことに手が付けられない!を克服するにはどの方法がベストなのか?を調べた研究の話

 
 

「仕事をつい先延ばししちゃう……」ってのはどの世界にもある問題で、このブログでもさんざん取り上げてるテーマっすね。こないだも「先延ばしが起きる最大の原因ってネガティブ感情だよねー」って話を書いたばかりですしね。まぁそれだけ私自身が先延ばしに悩んでいることの証左だったりするわけですが。

 

 

で、こないだは「先延ばしの原因=感情」ってのを確かめたので、今回は「先延ばし対策」についてです。参考にするのはバージニア工科大学の調査(R)で、研究チームはこんな指摘をしておられます。

 

大学生の70~95%がある程度コースワークを先延ばしにし、20~30%は慢性的または重度の先延ばしをしていると言われている。「先延ばし」とは、「遅れることでより悪い結果になると思っているにもかかわらず、自発的に遅らせてしまうこと」を意味する。

 

ってことで、ほぼ全員と言っていいぐらいの学生が課題を先延ばしにしているので、対策が急務なんだ、と。これだけみんなが悩んでいると思うとホッとしたりもするわけですが。

 

 

そこでチームがどんな実験を行ったかと言いますと、締め切りまで約1ヶ月のプロジェクトに挑む前の学生たちに、3種類の先延ばし対策を教えたんだそうな。

 

 

 

方法1:アクティブ・リフレクション


過去に先延ばしで起きた失敗について考え、その対策を4つ書き出してもらう手法。

 

「前回のプロジェクトに取り組み始めたのが遅すぎた。パートナーと合うタイミングを探ってプロジェクトを進めたせいで、結局スタートが遅くなった」

「知識不足で情報を集めるのに思ったより手間取った。次回はもっと早く開始したい」

 

って感じで、だいたい15〜20分ぐらいをかけて、過去の反省と対策を練ったらしい。これは企業とかでもよく使われている手法っすね。

 

 

 

方法2:スケジュールシート

大きなプロジェクトを細かく分けて管理しやすい状態にし、それぞれにかかる時間を見積もってカレンダーに割り振る方法。例えば、「プレゼン資料を作る」みたいなタスクだったら、「必要な資料を集める」や「ページ構成を考える」みたいに、どんどん細かくしていくわけですな。時間管理のライフハック系テクニックとして、超定番のやり方ですね。

 

それぞれのタスクには、設計時間、コーディング時間、テスト時間の目安と、タスク全体を完了させるための個人的な目標期限を設定するように指示されたとのこと。

 

 

 

方法3:メールアラート

学生たちに「いまから課題に取り組むと高得点が得られるよ!」って内容のメールを定期的に送る方法。ただし、普通のリマインダーとは違って、「あなたは現時点で1000行のコードを書いているから、進捗状況としてはいまいちだよ!」って感じで、学生たちの進捗状況に応じた個別のフィードバックを送ったんだそうな。確かに「もうすぐ締め切りだよ!」とだけ言われても無視しちゃいそうなんで、これは良いやり方かもしれないですね。

 

 

でもって、以上3つのテクニックを使ったうえで、みんながどれぐらい締切を守るようになったかと言いますと、

 

  • もっとも効果が高かったのはメールアラートだった!

 

って結論でした。なにもテクニックを使わないグループは締切を破った人の割合が約40%だったのに対して、メールアラートグループは約29%だったらしい。その他のテクニックについては、スケジュールシートが34%、アクティブ・リフレクションが36%って結果でして、そこそこの違いが出たかなーって感じです。

 

 

ちなみに、それぞれのテクニックの効果をもうちょい掘り下げてみると、

 

  • アクティブ・リフレクション=みんな自分の「どこをグズグズしてたのか?」とか「時間管理の弱点はどこか?」ってことはちゃんと正確にわかっていたし、前回の反省文を書くことでプロジェクトへのモチベーションも上がる傾向は見られた。が、それでもほとんどの人は締め切りを守るようにはならなかったので、要するに反省よりも「実際に自分が動き出せるような仕組みを作る」ほうが大事なのだと思われる。

 

  • スケジュールシート=タスクを分割するのは悪いことじゃないものの、だいたいみんな作業時間の見積りを大幅に間違っており、たいていは本当にかかる時間よりも少なめに設定していた。

 

  • メールアラート=ほとんどの学生は「メールアラートで自分の生産性が上がったとは思えない」と主観的には感じていたが、実際には締め切りを守らせる効果が確認された。

 

みたいになります。「タスクを分割するのはいいけど、時間の見積もりが甘い人がやると逆効果かもねー」ってのは、個人的にも痛感させられるところですね。いっぽうでメールアラートについては、ほとんどが「こんなのムダでしょう」と思っていたのに、自分でも気づかぬうちに成果が上がってたってのはおもしろいポイントですな。

 

 

ってことで、本論の結論としては、

 

  • 定期的なフィードバックとリマインダーは、いかに自分では「意味ないなぁ」と思えても使う価値がありそう

 

って感じになりましょうか。この実験では、学生の進捗状況をもとに研究チームがフィードバックを送ってくれる仕組みだったので、自分で試すときは「いかに正確なフィードバックを計算するか?」ってのが課題になるでしょうが(まぁこれまでの作業記録と照らし合わせて残り時間を見積もる時間を定期的に作るしかないんでしょうけど)。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。