やるべき仕事を先延ばししちゃうなあ……の最大原因と、その解決方法のお話
「やらなきゃいけない仕事があるんだけど、なんか先延ばししちゃうんだよなぁ……」ってのは誰にでもあること。その原因はいろいろありまして、過去には「前の晩によく眠らないと先延ばしが起きる」なんて話があったり、「セルフコンパッションが低いと先延ばしが起きる」といった話があったりと、いろんなことが言われてるわけです。
が、すべてをひっくるめれば「先延ばしは感情の問題である」ってのがもっとも有力で、簡単に言えば、
- 私たちは、ネガティブな感情に対処するために先延ばしをする!
って感じです。たとえば、「企画書を上司に提出する」ってタスクが不安を感じさせる場合、そのタスクをなくせば少なくとも短期的には不安を解消できますからね。こういったネガティブ感情の回避が積み重なり、先送りにつながっていくわけです。
で、新しいデータ(R)も「ネガティブな感情と先延ばし」に焦点を当ててまして、
- ネガティブな感情のせいで先延ばしが起きるのか、それとも先延ばしのせいでネガティブな感情が起きるのか?
ってところを調べてくれています。従来の研究によれば、ネガティブな感情と先延ばしに深い関係性があることはわかってたんですけど、果たしてどっちが原因でどっちが結果なのかまではよくわかってなかったんですよ。
そこで研究チームがどんな調査をしたのかと言いますと、
- 1,200人の学部生を集めてオンライン調査を実施。そこからさらに少数のボランティアを募り、10日間の日誌調査を行う
- 日誌調査を行った参加者は、毎日のネガティブな感情とポジティブな感情と、先延ばしの度合いを毎日記録し続けた
って感じで、「ネガティブな感情のせいで先延ばしが起きるのか、それとも先延ばしのせいでネガティブな感情が起きるのか?」を調べたんだそうな。
すると、その結果はやはり従来の考え方を裏づけるものになってまして、
- やっぱりネガティブな感情が強い日の翌日は、作業の先延ばしが増える傾向があった
- しかし、ポジティブな感情(幸福感)は翌日の先延ばしとは無関係だった(前日にポジティブでも翌日に先延ばしが起きるかもしれないし、起きないかもしれない)
- 先延ばしをした日の翌日は、必ずしもネガティブな感情になるわけでもなかった
だったそうです。どうやら「ネガティブ感情→先延ばし」って因果関係が正解で、「先延ばし→ネガティブ感情」って方向には働かないみたいっすね。
要するに、「みんな気分を良くしようとして先延ばしするのだ!」みたいな話でして、それにも関わらず多くの人は「先延ばしは自制心や時間管理の問題では?」とか思いすぎてて、そのせいで対策がうまくできないんじゃないかと指摘しておられます。本当は感情コントロールの問題なのに、みんな「自分の意志が弱いから……」とか「時間の使い方がへたで……」とか思っちゃうのが原因なのだ、という話ですね。
研究チームいわく、
学生たちが自分のネガティブな感情を受け入れ、許容することで、ネガティブな感情をうまくコントロールできるようになり、ひいては生産性を向上させることができるだろう。
とのことで、あらためて感情コントロールの重要性が強調されておりました。感情コントロールの方法はいろいろとありまして、「無(最高の状態)」なんかにもいろいろ書いてますんで、興味がある方はこちらを参考にしていただければ幸いです。
ちなみに、「自分は感情コントロールがうまくできているのか?」ってところについては、昔から「感情調節尺度」ってのが使われていますんで、自分の現状を知りたい方はお使いください。ほんの10問で構成された尺度でして、具体的には以下の文章を読みつつ「1:全くあてはまらない〜7:非常にあてはまる」で採点していただければと。
感情調節尺度
- 私は,自分が置かれている状況についての考え方を変えることで,感情をコントロールする
- 私は,否定的な感情をあまり感じたくない時は,考えていることを変える
- 私は,自分の感情を表に出さないことで,感情をコントロールする
- 私は,もっと肯定的な感情を感じたいときは,考えていることを変える
- 私は,否定的な感情をあまり感じたくないときは,その状況についての考え方を変える
- 肯定的な感情を感じたときは,感情を表に出さないように注意する
- ストレスを感じる状況では,考え方を変えて落ち着いていられるようにする
- 私は自分の感情を表には出さない
-
私は,もっと肯定的な感情を感じたいときは,その状況についての考え方を変える
- 否定的な感情を感じたときは,その感情を決して表に出さないようにする
で、すべての採点が終わったら、以下の要領で採点を行います。
- 再評価方略:自分の考え方を変えて感情をコントロールできるかどうかを示すポイント。質問1,2,4,5,7,9の点数の平均を出す。
- 抑制方略:自分の感情を抑制して感情をコントロールしているかを示すポイント。質問3,6,8,10の点数の平均を出す。
2003年の研究(R)によると,各戦略の平均スコアは以下のようになってます。
- 再評価方略:男性4.6、女性4.61
- 抑制方略:男性3.64、女性3.14
この点数については、基本的に「再評価方略」の点数が高い人ほど主観的なネガティブ感情が減り、対人関係もうまい傾向があったりします。このパートの点数が低い場合は、「感情的になったら捉え方を変える」って方法を意識したほうがいいかもっすね。
一方で「抑制方略」のスコアが高い人は、表に出る感情こそ抑えられるものの、主観的なネガティブな感情や生理的な経験が減りにくいこと言われてますんで、やはり「再評価方略」を意識したほうがよいでしょう。