お肉を食べると糖尿病になるってホント?「結局、お肉は体にいいのか悪いのか? #5」
シリーズ4回めでは、「お肉と肥満」の関係を見てみましたが、ここでは「肉を食べると糖尿病になるの?」って問題について考えてみたいと思います。実は、昔からベジタリアン支持者の間では「肉こそ糖尿病の原因!」って主張があるんですよ。
赤肉と加工肉は糖尿病と関連あり!
たとえば、2009年の観察研究(1)では、約6万人の健康データを調べたところ、
- ベジタリアンの糖尿病率は2.9%
- 肉を食べる人の糖尿病率は7.6%
って結果だったそうな。かなり肉好きに不利な数値が出ちゃってますねー。
ただし、ここには統計の問題がありまして、BMIの要素を組み込んでデータを調整したところ、肉を食べる人の糖尿病率は半分にまで減ったそうな。つまり、糖尿病の原因はあくまでも「肥満」であって、肉に特有の要因があるわけじゃないのでは?ってことですね。
では、お肉の種類によって糖尿病のリスクが変わるのかといえば、多くの研究で「魚と鶏肉は無罪!」(2,3,4,5)との結果が出ております。このあたりはガンや肥満の研究のデータとも一致する感じですねー。やっぱ魚すごい。
ところが牛肉、豚肉、加工肉には厳しい結果が出てまして、ここ数年の研究(6,7)でも「赤肉と加工肉は糖尿病と関連あり!」って結論が多め。ただ、いずれのデータでもハッキリと関連が出てるのは加工肉で、牛と豚については「ちょっと気にしたほうがいいかも…」ぐらいのレベルではあります。
肉を食べて糖尿病が改善するケースも多い
続いて、実際に糖尿病の患者さんを対象にした実験を見てみますと、
- 49人の糖尿病患者に野菜だけの食事を22週間にわたって続けてもらったら、43%に症状の改善がみられた(2006年,8)
- 49人の糖尿病患者に野菜だけの食事を74週間にわたって続けてもらったら、アメリカ糖尿病学会のガイドラインよりも症状の改善がみられた(2009年,9)
なんて結果が出ております。やっぱベジタリアンな食事は糖尿病を改善するみたいっすね。
この結果だけ見ると「肉抜きの食事は糖尿に効く!」って結論が出ちゃいそうですが、実際はそうでもありませんで。「肉を食べたら糖尿の数値が良くなった!」ってデータもあるのが面白いところです。たとえば、
- 29人の糖尿病患者にパレオダイエットを12週間にわたって続けてもらったら、全員の糖代謝が改善した(2007年,10)
- 13人の糖尿病患者にパレオダイエットを3カ月にわたって続けてもらったら、全員の血糖コントロールと心疾患の症状が改善した(2009年,11)
などなど。これらのデータを見ると、いずれも肉や野菜の量は症状に関係なくて、ダイエットの成功によって糖尿病が良くなった面がデカい感じ。結局は「糖尿病の対策は減量が第一!」って話になりそうであります。肉と糖尿病の関連が大きいのは、加工肉が太りやすいからでしょう。
ただし牛や豚の鉄分には注意したい
そんなわけで、基本的に肉は無罪だと思うわけですが、1つだけ気になるのが牛や豚に多くふくまれる鉄分の存在であります。というのも、体内の鉄分量が多い人ほど糖尿病やメタボになりやすいってデータが昔から結構あるんですよ(12,13)。
さらには、糖尿病の患者さんから血を抜いて、体内の鉄分量を減らしたら血糖のコントロールが改善したなんて実験(14)もありまして。鉄と糖尿病に深い関係があるのは間違いなさそう。心当たりのある方は、ちょっと気にしたほうがいいかもです。
まとめ
以上の話をまとめますと、
- 糖尿病の第一の原因は肥満
- 太らないように肉の量には注意
- 鉄分の摂り過ぎにも注意
といったところです。とりあえず肉と糖尿病の関連にはさほどの根拠はないので、まずは太り過ぎのを気にするのが先決かと思われますねー。