このブログを検索




今週末の小ネタ:亜鉛で疲労回復? 昆虫で筋肉アップ? ガムで消費カロリー増加?

Summary

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

    

 

 

亜鉛で高齢者の疲れがやわらぐかも?

亜鉛で疲れが取れるかも?みたいなデータ(R)が出ておりました。血中の亜鉛濃度が正常範囲(70~120μg/dL)を下回ると、全身に疲れが起きてしまうのはよくある話なので、不足ぎみな人の疲労感がやわらぐ可能性は確かにあるんですよね。

 

 

これは60歳以上の男女150名を対象にしたもので、

 

  1. グルコン酸亜鉛を1日30mg飲む
  2. 何も飲まない

 

って2グループに分けたうえで10週間の様子をチェックしております。メインのチェックポイントは、ベースラインから10週目までの睡眠の質の変化と、亜鉛を飲む前後での疲労の変化だったそうな(MFIを使ったらしい)。

 

 

すると、結果は、

 

  • 血中の亜鉛のレベルの高さと疲労スコアの低さの間には、有意な関係が見られた(r = -0.24)

  • 1日30mgの亜鉛を10週間補給したグループは疲労スコアが約19%低下し、血中の亜鉛レベルが上昇した(+14.2µg/dL)
  • 性別も疲労スコアに有意な影響を与えており、男性は女性よりも亜鉛サプリの効果が大きかった

 

だったそうな。これを見る限りでは割と有望そうな結果じゃないでしょうか。

 

 

もちろん、この研究には限界がありまして、

 

  • 亜鉛が足りない高齢者が対象なので、若者や中年でも同じメリットを得られるかは不明
  • 高齢者の疲労度に対する亜鉛の効果を調べた試験は初なので解釈が難しい

 

といったあたりはご注意ください。個人的には有望に感じてますけど、なんせ類例が少ないので、もうちょい様子を見ないとなんとも言えないとこではあります。まぁ亜鉛不足がいろんな健康問題につながるのは間違いないので、血液検査などで数値が低く出た方は、積極的に摂取すべきなのは間違いないですが。

 

 

 

昆虫を食べると筋肉がつくんじゃないか?説

昆虫は高タンパク食!って話をよく耳にするようになりましたが、新しい研究(R)では「昆虫は筋肉をつけるのにも役立つか?」って問題をあつかってておもしろかったです。一般に、動物性タンパク質は植物性よりも筋肉や体力の増加に優れていますけど、果たして昆虫はどうなの?ってポイントですね。

 

 

この試験では2つのサプリメントを比較してまして、

 

  1. ミールワーム由来のサプリメント:総カロリー312kcalのうちタンパク質46%、炭水化物6%、脂肪46%

  2. ミルク由来のサプリメント:総カロリー142kcalのうちタンパク質91%、炭水化物6%、脂肪5%

 

のいずれかを24人の若い男性に摂取してもらってます。でもって、サプリを摂取してからサイクリングや足の筋トレをしてもらいつつ、その後の300分間いろんな時点で血液サンプルを採取したところ、結果はこんな感じでした。

 

  • 基本的に、血中のロイシンとフェニルアラニンは、ミールワーム由来のサプリメントよりも牛乳由来のサプリメントの方が高く、血中のチロシンはその逆だった(いずれも筋肉の発達に必要なアミノ酸)

 

  • ミルク由来のサプリは、全身のタンパク質の合成と分解をより活発にしたが、タンパク質の酸化とネットバランスについてはグループ間で差がなかった

 

  • 同じように、筋タンパク質の合成についてもグループ間で差がなかった

 

ということで、この研究だけを見るならば、昆虫のタンパク質は牛乳のタンパク質と同じぐらい筋肉の発達に役立つかも?って感じがするわけです。まぁそれぞれの組成を見ると、ミールワーム由来のサプリは、牛乳由来のサプリに比べてカロリーと脂肪分がめっちゃ高いので、個人的には「これならミルク由来の方がいいのでは……」って印象を受けたわけですが、なんせ昆虫は環境に優しいので、そこをどう考えるかってとこですけども。

 

 

 

ガムを噛みながら歩くと消費カロリーが増加するかも?

ガムはストレスが減るよなー」みたいな話を過去に取り上げまして、新たなデータ(R)は「ガムを噛みながら歩くとカロリーを消費できるかもよ!」って結論を出しててタメになりました。

 

 

この研究では、20~69歳の参加者50名(男性25名、女性25名)に協力をお願いして、

 

  1. 15分間のウォーキング中にガムを噛む

  2. 上記のガムと同じ成分とカロリー量を持つタブレットをウォーキング前に食べる

 

ってふたつのパターンをランダムな順序で実践してもらい、みんなの心拍数や歩行時のエネルギー消費量を調べたんだそうな。ちなみに、ウォーキングのペースは参加者が自分で選択し、総距離、歩数、心拍数などは研究者が記録したそうです。

 

 

で、結果はと言いますと、

 

  • ガムを噛みながらウォーキングをすると、歩行距離、速度、歩数、心拍数、歩行時のカロリー消費量などすべての要素に有意な差が見られた


  • ガムを使った場合はのカロリー消費量は、タブレットを使った場合より5.1%高かった

 

みたいになってます。なんか良さげな数値が出てますね。

 

 

ただ、くわしく数値を見てみると、カロリー消費量の差は約3kcalだし、ここで使われたガムには1食あたり6kcalのカロリーが含まれていたことを考えると、実際にガムを噛みながら歩くべきかどうかは難しいっすね。カロリーゼロ系のガムで試してみるか……。


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item

search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM