長い増量と短い減量をくり返して良い肉体を作る「ミニカット法」にはどこまでの根拠があるのか?という話
肉体作りには増量期と減量期の区別が必須!みたいな話を書いたことがあります。簡単に単語をおさらいすると、
- 増量期=普段よりカロリーを増やす時期。おかげで筋肉が増えやすくなるが、同時に脂肪も増えてしまう
- 減量期=普段よりカロリーを減らす時期。おかげで脂肪は減りやすくなるが、同時に筋肉も増ってしまう
みたいになりまして、このサイクルを意識的にくり返すことで、バキバキな体を作れると考えられてるんですよ。言い換えれば、減量時にはできるだけ脂肪を減らし、増量時にはできるだけ筋肉を増やせれば、見め良い肉体ができあがるわけっすね。 肉体作りの基本ですな。
で、この増量と減量のサイクルを回す際によく耳にするのが「ミニカット」って手法です。名前のとおりカット(減量)をミニ(少なく)する食事法のことで、増量期のあとに軽度の減量期をはさむことで「増量期で得られる筋肉の量がさらに増えるのでは?脂肪を無闇に増やさずにすむのでは?」と言われております。
ただ、この手法がどこまで効果的なのかはまだ謎も多いんですが、新たな試験(R)ではそのあたりをチェックしてくれておりました。この研究は、やや痩せ型の男性20名を対象にしたもので、BMIは20〜25kg/m2で年齢は18〜30歳だったとのこと。彼らにどんなテストをしたかというと、以下のようになります。
- 専用マシンで参加者の安静時エネルギー消費量を測定
- 安静時エネルギー消費量に1.3をかけ、その値にさらに1.6をかけて「増量期のカロリー摂取量」を算出する
- 参加者はモバイルアプリを使って食事を記録し、30日後に体重が5%増加するようにがんばる
- 増量期が終わったらすぐに減量期に移り、最初に測った安静時エネルギー消費量までカロリー摂取量を減らし、みんなが実験前の体重にもどるまで続ける
みたいになります。減量期といっても、安静時のエネルギー消費量ぐらいまでしか食事量を落とさないので、わりと楽に取り組めそうなのがいいですね〜。
いちおう「増量期のカロリー摂取量」についても説明しておくと、最初に1.3をかけたのは1日に消費するカロリー量を算出するため、さらに1.6をかけたのは、増量期に必要な60%のカロリーオーバーを達成するためです。これもまた手軽に増量期の食事量を出すのに使えそうな計算法でいいですね。
その上で、みんなのインスリンレベルや体脂肪率の変化などを調べたら、結果はこんな感じになりました。
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増量期のあと体重は平均で3.5kg増加。体脂肪率は15.2%(10.2~26.4)から18.7%(11.8~28.7)に変化し、つまり平均3.5%ほど増加した
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その後の減量期には体脂肪が15.8%まで減少、体重も3.4kgほど減ってエネルギー消費量は約5%減少した
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減量期に反応して空腹時のインスリンは8pmol/Lほど減り、インスリン抵抗性のマーカー(HOMA-IR)も有意に減少した
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減量期には空腹時における血中の脂肪酸がも増え、脂肪の燃焼スピードが増えたことが示唆された
ということで、この違いをどう解釈するかってところですが、個人的な感想としては以下のようになります。
- 増量期にはやっぱり好ましくない変化が起きるものの、その後のミニカットで十分にリカバーできそう
- 短期間の減量期に反応してインスリン感受性が向上したので、その後の増量期には筋肉がより栄養を取り込んでくれる可能性はある(要するに、通常の筋トレでより多くの筋肉を成長させられるかもしれない)
残念ながら、今回の試験では定期的な筋トレを行っていないので、「ミニカットが本当に筋肉量アップに効くか?」ってのは謎です(そもそも心血管の健康に焦点を当てた研究なので、そこは仕方がない)。ただし、このデータをみる限り「長期の増量期と短期の減量期を組み合わせる方法にはメリットがありそうだな〜」って印象はありまして、個人的には試してみたくなりました。
そんなわけで、ミニカットが肉体作りに効くかどうかはまだまだ検討の余地がありつつも、「少なくとも生理学的なメカニズムとしてはあり得る話だなー」って感じでした。個人的に近ごろは増量期と減量期をまったく気にしてなかったので、ちょっとやってみようと思った次第です