炭水化物を食べ過ぎてもめったに脂肪には変わらない「インスリンは肥満ホルモンではない・その4」
「インスリンは肥満ホルモンではない(1)(2)(3)」シリーズの4回目。今日は「インスリンが糖を脂肪に変えるから太る!」って説について考えてみたいと思います。
めったに糖は脂肪に変換されない
「インスリンが糖を脂肪に!」は糖質制限ダイエットの解説における定番のフレーズでして、江部先生の説明(1)によりますと、
<糖質を摂取すると太るメカニズム>
糖質を摂取した場合
1)血糖値が上昇しインスリンを大量に分泌。
2)脂肪は燃焼せず、血糖が中性脂肪に変わり脂肪細胞に蓄えられる。
といった感じ。これは「デノボ脂肪合成」と呼ばれる現象で、15年前から確認されてきた事実であります(2)。
が、この話には大きな問題点がありまして、実は、よほどの状況じゃないとデノボ脂肪合成って起きないんですよね(3)。
脂肪がつくのに必要なご飯の量はお茶碗で7杯分
有名なのは、2001年に行われた実験(4)。13人の女性を対象に、1日に必要なカロリーに50%を上乗せした食事(そのうち炭水化物27%、脂肪23%)をしてもらいまして、糖が脂肪に変わる割合を調べたんですな。
その結果、研究者いわく、
360〜390gの糖質に対して、デノボ脂肪合成は3〜8gしか起きなかった。
とのこと。ざっくり換算すると、1日にお茶碗で7杯分ぐらいのご飯を食べて、ようやく3gほどの脂肪がつくイメージですかね。
ただ、2011年に出た最近の論文(5)によれば、太った人ほどデノボ脂肪合成が起こりやすく、脂肪を燃やしにくくする傾向は確かにあるみたい。もっとも、研究者いわく「さほど明確な差ではない」とのことなんで、そこまで気にしなくてもいいかもですが。
まとめ
そんなわけで、今回は「インスリンが糖を脂肪に変えるから太る!」って説はどうも怪しいぞ〜ってお話でした。確かに糖は脂肪に変わるものの、どうやら体脂肪の増加にはつながりにくいみたい。
ただし、もちろん炭水化物を食べ過ぎると、貯めた脂肪が先に消費されなくなるのも確かなんで、あくまで適切な炭水化物量を守るのが大事かなーと思う次第です。
credit: Ervins Strauhmanis via FindCC