意志力が強い人に共通する3つの特徴 |「意志力3.0」 #4
意志力が強い人たちの特徴とは?
意志力について考えるシリーズの4回めでーす。初回では「意志力は使うほど減るって説が間違ってたかも」って話を書きまして、2回目では「意志力は無限のリソースなのかもよ?」って展開になり、さらに3回目では 「意志力ってその場その場の戦略の問題だよねー」みたいなとこまで進めてまいりました。
要するに、意志力に対して「使うと減るかも…」とか「適切に使っていかないと…」とか悩むよりは、一般的な意思決定の問題と同じように考えたほうがラクだよー、って話です。いろいろ悩むよりも、状況に応じた戦略を考えたほうが効率的なはず。
と、次に出てくるのが「具体的にどんな戦略を立てればいいの?」って疑問でしょう。「ダイエット中なのにケーキが食べたい!」と感じたときに、どういった方向で対策を考えて行けばいいのか、と。
この問題を考えるには、「そもそも意志力が強い人ってどういう人なの?」を知るのが一番。というわけで、今回は「意志力が強い人に共通する特徴」について見てみようかと思います。
1.意志力が強い人は「君子危うきに近寄らず」
まず有名なのは、2011年にドイツで行われた実験(1)であります。205人の男女にスマホをわたして、1日のうちに「どんな誘惑を経験したか」や「どれぐらい意志力を使ったか」を記録してもらったんですね。
そこで何がわかったかと言えば、
- 性格テストで「誘惑に抵抗するのが上手い」と評価された参加者ほど、1日で誘惑を感じないように行動している
って事実です。意志力が強い人は、意志力が弱い人より誘惑に勝つのがうまいわけではなく、そもそも誘惑が強い場所に身を置かないように動いてるんだ、と。
この現象は2016年の追試でも確認されてまして、かなり精度は高い感じ。意志力が強い人は「君子危うきに近寄らず」を地で行ってるわけですね。
2.意志力が強い人は共感レベルが高い
もうひとつ、近ごろ意志力に関する話題でおもしろいのが、チューリッヒ大学が行った研究(2)。43人の対象者の脳に磁気でショックを与えて、どんな変化を見るかを確かめた論文であります。
この実験で調べたのは、脳の「右側頭頭頂接合部」(rTPJ)ってエリア。昔から共感力を発揮するのに必要とされてまして、ここの灰白質が多い人ほど倫理観が強かったりするんですな。
で、一時的にrTPJの働きが乱れた参加者がどうなったと言うと。
- 目先の金をガマンできなくなった
- 他人の目を盗んでズルを働くようになった
みたいな変化が出たらしい。共感能力がダウンしたら、一気にセルフコントロール能力も下がっちゃったわけですね。
実は、共感能力と意志力の関係は結構前から言われてたことで、1989年に薬物の常用者を対象にした調査(3)でも、「他人の身になって考えられる人ほど自制心を発揮しやすい」って相関が出てたりとか。過去に当ブログで紹介した話でも、「他者に感謝の気持ちを持つと目先の欲望に強くなる」なんてデータもあったりとか。どうやら、共感能力と意志力には強い結びつきがあるみたいなんですな。
3.意志力が強い人は「木よりも森を見る」
もうひとつ意志力が強い人の特徴として大きいのが、「木よりも森を見がち」なところ。目の前の欲望をガマンできる人は、
- 抽象的
- 全体的
- 客観的
に物事を考えるケースが多いんですね。とにかく視野が広いわけですな。
この傾向は2000年代の前半から何度も確認されてまして、有名なのはオハイオ州立大の論文(4)でしょう。ここで研究者は参加者を2つのグループにわけたんですね。
- 森を見るグループ:人生にとって健康が必要な理由を考えてもらう。「学校で上手くやるために必要だから」とか
- 木を見るグループ:健康になるための手段を考えてもらう。「もっとエクササイズをする!」とか
その後で様々なテストをしたところ、森を見るグループのほうが、
- 目先の欲望に飛びつかなくなった
- 健康についてだけでなく、未来のために投資するようになった
- 酒やテレビといった手軽な娯楽をポジティブにとらえなくなった
って傾向が一貫して現れたんですね。このあたりは、「他人の視点で考えてみると判断力が上がる」ってデータともちょっと似てますな。
そして、さらに話は続く…
というわけで、今回は意志力が強い人たちの特徴を見てみました。危うきには近寄らず、全体的に物事を見て他人へ共感すべし!というと、まるで孔子さんの教えのようですな(笑)
といっても、これだけではまだ「具体的な戦略」は立てづらいので、次回では、さらに「危うきに近寄らず」「共感力」「森を見る」の3つを貫くポイントを抜き出したうえで、さらに深掘りしていこうかと思います。しばしお待ちを。