朝の「あの行動」が、その日の脳の働きを大きく左右するぞ!というペンシルバニア州立大学実験
「ストレスで頭が悪くなる!」ってのは有名な話で、過去のデータでも、
- 決断力が下がる
- 注意力が保てなくなる
- 記憶力が低下する
- 倫理的な判断ができなくなる
などなど、かなりの悪影響が報告されてるわけです。脳の機能をフルに働かせるためにも不安対策は欠かせないわけっすな。
といったところで新しい論文(1)では、「ストレスがありそうだな……と思うだけで頭が悪くなるよ!」って結論になってておもしろかったです。
これはペンシルバニア州立大学の実験で、研究チームいわく、
人間はつねに予想を立てる生き物だ。そのおかげで、私たちは未来の出来事に対処できる。
しかし、この研究は、予想の能力が日常の記憶力に悪影響を与えることを示した。それも、ストレスフルな事態が実際に起きようが起きまいが関係ないのだ。
とのこと。シンプルにストレスを予想しただけでも脳機能は下がっちゃうんだ、と。
実験の参加者は240人の男女で、以下のようなデザインになっております。
- 参加者に記録アプリを配布
- 起き抜けに「今日はどんな1日になりそうだ」と思ったかを記録してもらう
- 毎日、ランダムなタイミングで5回ずつ「現在やってる行動」と「どんな気分か」を記録してもらい、ついでに簡単なワーキングメモリテストを行う
たとえば「今日はキツい日になるだろうな?」と朝に思った場合、その予想が脳にどんな影響をあたえるのかを調べたわけですね。
ワーキングメモリは短いあいだだけ記憶をキープする脳の機能で、近ごろは健康的なメンタルを保つためにも必須だと考えられております。研究者いわく、
ワーキングメモリの働きが衰えれば集中力が減り、仕事のミスも増える。
今回の研究を健康的な老化という観点から見ると、高齢者の認知エラーは大きなリスクをともなう。間違った薬を飲んでしまったり、ドライブ中にミスを起こしたりすれば、その悪影響は計り知れない。
ってことで、ワーキングメモリは仕事の生産性を高めるためにも必須なんだよーって話です。
実験期間は2週間で、どのような結果が出たかと言いますと、
- 朝に「今日はストレスが多そう……」と思っただけで、実際にどんな出来事があったかに関わらず、ワーキングメモリの性能は落ち続ける!
みたいな感じです。これはどんな年齢でも起きる現象で、朝に「今日はキツそう」と思ったら、その日は1日中脳がうまく働かなくなっちゃうらしい。怖いっすねー。
目が覚めた時点でなんらかの「予想」を持てば、すでに賽は投げられた状態になる。
「今日は厳しい日になりそうだ」と思えば、実際に厳しい出来事が起きなかったとしても、あなたは多大なストレスを感じ続ける。大事なのは実際のできごとではなく、世界のとらえ方なのだ。
というわけで、朝の「予想」が脳の働きに結構なインパクトをもたらすみたい。なかなか難しい問題ではありますが、研究チームはこんなアドバイスをしておられます。
もし目が覚めてすぐに「今日は厳しい1日になりそうだ」と思ったら、1日を始める前に、とりあえず深呼吸をしたほうがいい。できればスマホのリマインダーにでも登録しておこう。
もしくは、「今日は失敗してしまいそうだ……」などと思った場合は、やはりスマホで「失敗しそうと感じたときは認知機能が必要な作業は少なくする」と自分へのメッセージを登録しておくのも良い。
要するに、まずは「あ!自分はいま『ネガティブな予想』を持ったぞ!」と認識するのが大きな一歩。そこさえ押さえておけば、あとは深呼吸で気持ちを取り返すなり、その日の予定を軽めに変えるなり、好きな対処が取れるわけですな。
とりあえず、起き抜けに「自分が『今日』に対してどんな予想を立てているか?」と気にしておくだけでも違ってきそうですねー。