「最高の体調」のボーナストラック編#3:「自由連想タスクと観察のメタファー」
「最高の体調」に収録しきれなかった文章を紹介していくコーナーでーす。
おかげさまで大増刷が決まりましたので、いまは書店でも手に入りやすくなっております。ネット書店も在庫が安定しましたので、ご興味があればお買い求めください。
さて、ここで紹介するのは、第7章「死」に収録予定だったパートです。第7章には「マインドフルネス」を体験するためにいくつかの手法を紹介してるんですけど、そのうちのひとつとして、以下のテクニックも収録しようかと考えてたんですな。
本書では「MAAS」っていうマインドフルネスの判定テストを紹介してますが、これにピンと来なかった方は、以下の実験も試してみていただけると幸いです。
自由連想タスク
マインドフルネスの理解を深めるために、ここからいくつかの実験をしてみましょう。リラックスして座りながら、次の単語を声に出さずに読んでみてください。
- リンゴ 誕生日 海岸 自転車 バラ 猫
このとき、あなたの心に何が起きたでしょうか?
リンゴや猫のイメージがそのまま浮かんだかもしれませんし、何か誕生日の思い出が心をよぎったかもしれません。もしかしたら何の変化もなかったかもしれませんが、それはそれで構いません。
重要なのは、ごく平凡な単語に対して、あなたの内面がどう反応したかに気づくことです。
何度か単語を読み返してみて、自分のなかになんらかのイメージや思考が浮かぶか、または浮かばないかを観察してください。この感覚がマインドフルネスです。
これはマンチェスター大学のエイドリアン・ウェルズが考案した技法で、「自由連想タスク」と呼ばれます。博士は自身の療法にマインドフルネスを導入して成果をあげており、鬱病の治療にも大きな成果を上げています。
観察のメタファー
もうひとつ、「メタファー」を使うのも有効な手段です。こちらもマインドフルネス系の認知療法で有名な技法で、患者に「観察」のコンセプトを理解してもらうために使われます。代表的なものを2つ紹介しましょう。
1. 雲のメタファー
「マインドフルネスは、雲の中にいるあなたのそばを、別の雲が通り過ぎていくのを見つめるのに似ています。
そもそも雲とは、地球が自分の天気を管理するための大きなシステムの一部。
雲の形を変えてみたり、雲の動きをコントロールするのは不可能だし時間のムダです。通りすぎる雲の観察日記をつけるように、自分の思考や感情もとりあつかってください。雲はやがて通り過ぎていきますが、雲があるあいだは手出しをしないでください」
以上の文章を何度か読んでみながら、できるだけ鮮明に雲と自分の関係を思い描いてください。マインドフルネスとは、ただひたすら雲の動きを記録する科学者のような感覚だと言えます。
2. 電車のメタファー
「自分の心を駅のようなものと考えてみましょう。思考と感情は、駅を通り過ぎる電車です。電車はホームにいったん停まり、やがて必ず通り過ぎていきます。あなたはホームに立つ見物人になり、ただ電車が通り過ぎていくのを見てください。電車に乗り込まない限り、別の場所に着いてしまう心配はありません」
こちらのメタファーでは、思考や感情を「必ず過ぎ去るもの」として認識するところに力点が置かれています。先ほどと同じように、ホームに立つ自分をクリアに想像してみましょう。自分が乗らない電車が通るのを眺める感覚も、またマインドフルネスに近いものです。