今週末の小ネタ:リンゴ型の肥満はどれだけ死亡リスクが上がる? 卵 vs シリアル。空腹感に効くのはどっち? タウリンのサプリで脂肪が燃える?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
リンゴ型の体はどれぐらい早死にしやすくなってしまうのか?
よく肥満体型を「リンゴ型」と「洋ナシ型」にわけたりします。尻や太ももなどの下半身が太いタイプが「洋ナシ」で、お腹まわりがパンパンなタイプが「リンゴ」ですな。
で、近ごろよく言われるのが、「肥満度(BMI)が高いだけだと死亡リスクはわからないよねー」って問題です。昔からBMIが高い人ほど死亡リスクが高いと言われてきたものの、BMIには脂肪と筋肉の区別がないので、筋肉質のアスリートが「肥満」と判定されちゃったりするんですよね。
ってことで、この問題を解決すべく、新たに「リンゴ型の体型のほうが死亡リスクを正確に測れるのでは?」ってメタ分析(R)が出ておりました。たんに肥満度を測るのではく、腹部に過剰な脂肪があるかどうかを見たほうが死亡リスクを判断しやすいのではないか、と。
このメタ分析は250万人の健康な成人を対象にしたもので、全死亡率とリンゴ型の肥満との関係を調べた72件の前向きコホート研究をまとめて、大きな結論を出してくれたんですよ。そこでどんな結論が出たかと言いますと、
- ウエストサイズが10cm増えるごとに、11%ずつ死亡リスクが上昇する(男性8%、女性12%)
- 尻の周囲サイズが10cm増えるごとに、女性では10%の死亡リスク低下が認められた
- 太ももの周囲サイズが5cm増えるごとに、死亡リスクが18%低下した(男性18%、女性16%)
- ウエスト/身長比が0.1増加するごとに、死亡リスクが 24%増加した(男性13%、女性18%)
- ウエスト/ヒップ比が0.1増加するごとに、死亡リスクが 20%増加した(男性16%,女性21%)
- ウエスト/太もも比が0.1増加するごとに、死亡リスクが21%増加した(男性19%、女性15%)
- 体脂肪率指数が10%増すごとに、死亡リスクが 17%増加した(男性27%、女性3%)
だったそうです。つまり、リンゴ型の肥満は確実に死亡リスクを上げるんだけど、逆に洋ナシ体型の場合は死亡リスクが低下するんだってことですね。まぁリンゴ型の肥満は内臓脂肪をガンガンに溜め込んでることが多いので、この結果にも納得と申しますか。
卵 vs シリアル。空腹感に効くのはどっちだ?という話
朝に何を食べるかで昼食の空腹感が変わる!ってのはよく聞く話です。当然、朝に健康的な食事をしたほうが、昼に激しい空腹感に襲われにくい傾向があるんですよ。
ということで、新たな研究(R)では「朝に食べのるは卵とシリアルのどっちがいいの?」ってあたりを深掘りしてくれてておもしろかったです。これは2日間のランダム化クロスオーバー試験で、
- 過体重または肥満の参加者50名を集める
- 参加者を朝に卵を食べるグループ(n=33)またはシリアルを食べるグループ(n=43)に割り付ける(また別日の試験では逆にする)
- 朝食から4時間後に、昼食でどれぐらい食べたのか、主観的な空腹感はどう違うかを調べる
みたいになってます。いちおう朝食の内容もまとめておくと、
- 卵グループ:卵2個、トースト2枚、マーガリン10g
- シリアルグループ:卵グループと同じカロリーのブラン・シリアル(砂糖入り)、牛乳、オレンジジュース
みたいになってまして、最終的な結果はこんな感じになりました。
- シリアルの朝食に比べて、卵の朝食のほうが昼食時のカロリー摂取量は減った。また、主観的な空腹感のレベルも卵の朝食のほうが大きく減り、シリアルの朝食を食べたグループは「すぐにお腹が減った」と報告した
そんなわけで、おおかたの予想どおり、卵を食べたほうがその後の食事の摂取カロリーは減るみたいっすね。 あくまで肥満な人だけを対象にした試験なんで偏りはありますが、過去には痩せ型の成人を対象にしたテストでも「卵の朝食で食後の血糖値が改善し、昼食時の空腹感も減った!」って報告が出てるんで、いろんな人に同じメリットがあるかもしんないですね。
タウリンのサプリで脂肪が燃える?
1000mg配合!でおなじみのタウリンは、それなりに見どころがある成分だと考えられております。一説には、筋トレに効く可能性があったり、腸内環境が改善する可能性も指摘されてたりするんですよ。私は積極的に摂ってるわけじゃないですが、いろいろとおもしろそうな成分ではありますね。
で、新たなデータ(R)は「タウリンを飲むと有酸素運動の脂肪燃焼がブーストするんじゃないの?」って結論になってておもしろかったです。まずは研究デザインをまとめておくと、
- 健康な若い男性17名(平均年齢24歳)を集め、1時間のランニング(VO2maxの60%)の90分前に、タウリン(3 mgか6 mg)またはプラセボを摂取するように指示する
- 3回のランニングセッションを行い、血液検査で運動前と運動後に脂質と糖質の酸化を測定する(要するに、ランニング中に脂肪がエネルギーとして使われてるかどうかを調べてる)
みたいになってます。すると、結果はわりとタウリンに有利な感じでして、
- 6グラムのタウリンを飲んだ参加者は、プラセボよりも脂質を40%多く燃やし、糖の酸化が4%減少した
- 3グラムのタウリンを飲んだ場合は、プラセボよりも脂質が20%多く燃えたが、糖の酸化には影響を与えなかった
って感じだったそうな。まぁ小規模な実験なんで、この結果を見て「タウリンを飲むぞ!」とは思わないものの、なかなか有望そうな気がしますね。ちなみに、タウリンの脂肪燃焼については過去にもいくつか報告が出てるんで、今後の追試に希望ってことで。