情報のモチベーションタイプを知っとくと、勉強がはかどるんじゃないかなーとか思った話
「自分はどんなモチベーションで学びたいのかを知っておくと、勉強がいろいろはかどるんでは?」と思わせるデータ(R)が出ておりました。著者のターリ・シャーロット先生は、「事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学」で有名な学者さんですね。
まずシャーロット先生の問題意識を引用しておくと、
人はどのようにして知りたいことを決めるのだろうか? たとえば、COVIDワクチン、金融格差、気候変動について、積極的に情報を求める人と、そうでない人がいるのはなぜなのだろうか?
私たちの情報選択は、健康、経済、人間関係に重要な影響をおよぼす。人々が特定の情報を選ぶ理由をより良く理解することで、よりよい教育に導く方法を開発することができるだろう。
みたいになります。特定の情報に興味を持つ人と持たない人が存在するのには、なんか理由があるのではないか?みたいな話ですね。
この研究は、543人の参加者を対象に5つの実験を行ってまして、それぞれでみんなに「自分に関する情報をどこまで知りたいか?」を尋ねてます。たとえば、
- 自分がアルツハイマー病を発症するリスクのある遺伝子を持っているかどうか
- 自分が免疫系を強化する遺伝子を持っているかどうか
- 自分の稼ぎは全体の何パーセントに該当するか
- 家族や友人が自分をどのように評価しているか
みたいな情報を知りたいかどうかを尋ね、さらにその情報がどれぐらい役に立つと思うか、情報を受け取ったときにどのような気持ちになるか、各実験のテーマについてどれぐらい考えるかも調べたんだそうな。
そこでどんなことがわかったのかと言いますと、
- 人間は、以下の3つの要素のいずれかに基づいて情報を探す傾向がある
- 期待される有用性=この情報は自分にとって有用か?
- 感情的な影響=この情報は私にどのような感情を抱かせるか?
- 自分の興味との関連性=自分の考え方や知識のベースに役立つか?
- この3因子モデルは、他のさまざまなモデルと比較して、私たちが積極的に情報を求めるかどうかをより正確に予測すできる
だったそうな。どんな人でも、たいていはこの3パターンの動機をベースに「情報を手に入れるぞ!」と考えるわけですね。私の場合は、完全に「自分の興味との関連性」で本などを読んでるケースが多いですね。すでに知ってることが結びついたときが一番うれしいんで。
また、この3因子は時間や状況によって変わるものではないらしく、一連の実験を数カ月の間隔で数回繰り返したところ、
- みんな3つの動機のうち1つだけを他の動機よりも優先し、時間が経過しても、話題が変わっても、その1つの動機に固執しやすい
って傾向が見られたらしい。私たちの情報に対するモチベーションは、つねに変わらず一定しているかもしれないんだ、と。言われてみれば、私もいつも「自分の興味との関連性があるか?」って動機で本を読んでる気がしてきました。
ちなみに、この研究ではみんなのメンタルヘルスについても調査してまして、こんな傾向を導き出しておられます。
- 自分のそれぞれの情報モチベーションに適した情報を探しているときに、みんな幸福度が高まる
有用性を求める人は役立つ情報で幸福になり、感情に特化した人は狙った感情を揺さぶる情報で幸福になり、興味を動機にする人は自分の思考に役立つ情報で幸福になるんだ、と。まーそりゃそうですよね。
以上の知見をもとに、日々の学習に活かすのであれば、
- まずは自分の情報モチベーションが3つのうちどれなのかを判断する
- なにか勉強したいことがある場合は、自分のモチベーションタイプにあわせた学習方法を考える(有用派なら勉強がどのゴールにつながるのかを明確にすればいいだろうし、感情派なら自分の感情が動くストーリーを探すのがいいだろうし、興味派は勉強内容と既存の知識のつながりを探せばいいだろうし……って感じ)
って感じになるでしょうね。情報へのモチベーションが一貫した特性なら、そこに適合した学習法を考えたほうがいいですもんね。
あと思ったのは、よくネットで見かける現象として、
- 小説好きはビジネス書好きを「表面的で深みがない」とかいってバカにしがちで、ビジネス書好きは小説好きを「ムダな時間を過ごしてる」とバカにしがち
ってのがありますが、そもそもこれらが生まれつき備わった特性なのであれば、情報モチベーションもまた、肌の色や体型などと同じような個性の一種だとは言えますね。要するに「結局は個性の問題なんだから情報の摂取タイプごときでマウントを取りなさんな」ってことですかねー。