今週末の小ネタ:エクササイズ系ゲームでアンチエイジング、体を動かさないと5日で筋肉がダダ減り、プラセボ効果で創造性があがる
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
エクササイズ系ゲームはやっぱ効果があるみたいだなー
「リングフィットアドベンチャー」みたになゲームを使った運動は近ごろよく研究の対象になってまして、「エクサゲーム」なんて名前までついてたりします。エクサーゲームは、バランス、モビリティ、筋肉増強に焦点を当てたものが多いので、高齢者にも安全で効果的だったりするんですよね。
そこで新しいデータ(R)は、「エクサゲームとプロテインを組み合わせたら、結構なアンチエイジングになるのでは?」ってポイントを調べてくれてていい感じでした。これは12週間の無作為化比較試験で、90人の高齢女性(平均年齢71歳)に協力をお願いして、5つのグループに分けてます。
- コントロール/介入なし(CG)
- エクサゲームトレーニング(ETG)
- タンパク質の補給(PSG)
- エクサゲームとプロテインの併用(ETPSG)
- エクサゲームと糖質の併用 (ETISG)。
ここで使われたゲームは懐かしの「Nintendo Wii Fit Plus」で、バランスボードを使って週2回、50分間ずつ行ったそうな。最初の2週間は参加者に加重のないベストを使ってもらい、3週目にはベストに参加者の体重の5%の重りをつけ、この重りを2週ごとに1〜2%ずつ徐々に増やしたとのこと。「Wii Fit 」一時期よくやってたなぁ……。
また、プロテインは1回171カロリーで、中身はホエイプロテインアイソレート21グラム、糖質10グラム、脂肪5グラム、カルシウム224mg、ビタミンD3.3μg、ビタミンC23mg、ロイシン2.3グラム、必須アミノ酸12グラムに設定したらしい。プロテイングループの1日あたりの平均タンパク質摂取量は体重1kgあたり1.1gだったそうで、個人的にはもうちょい飲んでもいいんじゃないかなーとか思いましたが。
そのうえで、どんな変化が起きたかをチェックしたところ、
- Wii Fitで遊んだグループは、脚と腕の除脂肪体重の和(-0.5kg)および脚と腕の除脂肪体重を身長で割った指数(-0.2kg/㎡)が減少したが、他のグループには変化がなかった
- プロテインだけを飲んだグループでは、腹部脂肪が3.4%減少した
- 背屈ピークトルクはエクサゲームとプロテインの併用グループで11.4%増加し、ハンドグリップ力はエクサゲームトレーニングだけをしたグループで13.7%増加した
- 疲労と消耗については、エクサゲームトレーニングだけをしたグループで100%、プロテインだけを飲んだグループで75%、エクサゲームとプロテインの併用グループで100%減少した
だったそうで、エクサゲームとプロテインの組み合わせによって筋肉と筋力ががっつり増え、さらには疲労感も大幅に改善したんだ、と。週2の運動でこれぐらい効果が出てたら、高齢者の肉体改善としては十分かもしれないっすね。私も70代になったらゲーム系エクササイズばっかやることにするかな……。
なにも体を動かさないと5日で筋肉がダダ減りする?
なんも体を動かさなかったら筋肉が低下するのは当たり前でして、1日の歩数を減らすだけで代謝機能や筋肉が損なわれるって話(R)もあったりするわけです。嫌ですねぇ。
ってことで、新たに出たメタ分析(R)では、「ベッドレスト(ベッドでずっと安静にしてる状態)でどれぐらい筋肉は減るの?」みたいなとこを深堀りしてくれておりました。これは60歳以上の健康なボランティア110人(各研究6~16人)と平均年齢23歳の健康なボランティア21人の筋肉量を調べたもの。十分に食事をしつつベッドレスト(5、7、10、14日)をしたら、筋肉はどうなっていくのかをチェックしたんだそうな。
細かいとこを除いてまずは結果から申し上げますと、
- ベッドレスト(5-14日)は筋肉を最大5%(平均:-1.5kg)減らし、体重を最大3%(平均:-1.2kg)減少させた。当然ながら、これらの減少は高齢者のほうが大きかった。脂肪量の変化は、統計的に有意ではなかった
- 足の筋力の減少レベルも大きく(-9%〜-16%)、足の筋肉の減少は中程度で、高齢者では最大-9%(平均-0.86kg)、若年者では最大-5%(平均-0.24kg)だった
だったそうです。なんもせずにただ安静にしていると、ほんの5日でも結構な量の筋肉が減るのかもなーって感じですね。まぁ2週間ぐらいの運動不足ならすぐ筋トレで取り戻せるはずなんで、そこまでは心配してないんですが、ひたすらなにもしない状態が長引いたら……という気持ちにはなりますね(病気やケガだったらしょうがないですが)。
ただ、今回のメタ分析はいろいろ謎があって、
- メタ分析に含まれた17件のうち2件は同じ試験に関するもので、表1には21件しか掲載されておらず、メタ分析の結果には10件しか掲載されていない
- メタ分析の結果に、どの文献にも一致しない11番目の研究が含まれていて、そのせいで若者の結果がブレてる可能性がある
- 若者の脚の筋肉に関するメタ分析には、若者が関係ない2つの研究が含まれているし、参考文献の番号付けもずれてる
といったあたりは気になるところです。これだけ盛大にミスってるメタ分析って結構めずらしいような気が。
その点では、かなり詳細に疑問の残る結果ではあるものの、ベッドレストで高筋肉量と機能が低下するのは間違いないし、その他のホルモンの変化、全身の炎症、ミトコンドリアの機能低下、テロメアの短縮なども起きますんで、私としては自分に危機感を持たせるためのデータとして使おうかと。
プラセボ効果で創造性があがる?
プラセボのすごさについては過去に何度も取り上げてますが、近ごろチェックしたデータ(R)では「プラセボ効果で創造性まであがるのでは?」って結論が出てておもしろかったです。通常、プラセボといえばニセの錠剤を飲んだ後で痛みが少なくなったりする現象を意味しますが、この作用が「クリエイティビティ」にも効くかもしれないわけっすね。
この研究はイスラエルで行われたもので、
- 45人の男女を集め、参加者にシナモンの小瓶の匂いを嗅がせる
- 参加者の半分には「これは創造性アップに役立つの薬ですよ!」と伝える
- その後、両グループに一連の創造性テストを受けてもらう(トーランステストとか)
みたいになってます。で、その結果がどうだったのかと言いいますと、
- シナモンを創造性の薬だと言われたグループは、最大3種類の創造性テストで高いスコアを出した
- 具体的には、独創性、生み出されるアイデアの数、柔軟性、そして流暢さにおいて、すべて平均して高いスコアを記録した
だったそうで、つまりプラセボ効果は、創造性や認知能力に影響を与えるかもしれないってことですな。プラセボといえば、過去には「頭が良くなる」とか「ストレスが減る」とか言われてきたもんですが、とりあえずアイデアが必要な状況になったら、「ワイはクリエイティブや!」と思い込んでみるのはアリかもしんないですね。