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筋トレで「限界まで追い込む」は必要か?──最新研究が示す“ほどほど”の最適解

 

筋トレ界隈でたびたび話題になるのが、「筋肉は限界まで追い込むべきか?」って問題であります。筋トレガチ勢は「もうバーベルが1回も上がらないところまでやれ!」と主張しまして、そちらのほうが筋肉が成長するのだと考えるケースが多かったりするわけです。

 

では、本当に筋肉は限界まで追い込むのが良いのかってことで、そんな議論に一石を投じる最新研究(R)を見てみましょう。

 

これは筋トレ研究の第一人者であるブラッド・ショエンフェルド先生が行った実験で、42人の経験豊富なリフター(男性34名、女性8名)を以下の2グループに分けて、8週間の全身トレーニングを実施したんだそうな。

 

  1. 限界までやるグループ: 毎セット、ダンベルやバーベルがガチで1回も上がらなくなるまで筋肉を追い込む。
  2. 余力を残すグループ: 「あと2回はできそう!」と感じたところで1セットを終える。

 

どちらのグループもトレーニングは週2回だけで、9種類のエクササイズを1セットずつやってもらって、どのような違いが出るのかを確かめたらしい。1回のトレーニングにかかる時間は、たったの30分だったそうな。筋トレ好きからすると「ホントにそれで効くの?」と疑いたくなるほどの省エネ仕様ですな。

 

で、結果はどうだったかというと、

 

  • 筋力(ベンチプレス、スクワット): どちらのグループも13%前後アップで有意差なし。

 

  • 筋持久力(脚のレッグエクステンションAMRAP): これもほぼ同じぐらいの結果。

 

  • 瞬発力(カウンタームーブメントジャンプ): 限界までやったグループがちょい優勢だったとのこと。

 

つまり、「筋肉を大きくしたい」または「瞬発力を高めたい」ような場合は筋肉を限界まで追い込むメリットが少しあるかもですが、筋力アップが目的なら、わざわざ限界までやる必要なしってことになりますかね。

 

また、筋肉の大きさに関しては、部位によっては「限界までやった方がちょっと大きくなった」とのデータもあるんですが、それも微差に止まってまして、あまり深く考えても仕方なさそうであります。「ビルダー目指してます」って人以外には、ほぼ無視できるレベルかなと。

 

で、この研究で使われたのは「Reps in Reserve(RIR)」という手法でして、簡単に言えば「このセット、あと2回はいけるな〜」と思ったところで終了する方式って感じです。具体的にどのようにやるのかと言いますと、ざっくり以下のように進めてみるのがお勧めです。

 

 

ステップ①:まずは“本当の限界”を体験してみる

最初に大事なのは、「自分にとっての限界とはどの程度か?」を肌感覚で知ることっすね。つまり、一度は「もう1回も上がらん!」という状態まで追い込んでみる必要があるわけです。たとえば、10kgのダンベルを使ってアームカールをする場合、「だいたい12回目で限界が来た!」とわかれば、それを基準にして「10回ぐらいで止めればRIR=2だな」と見当がつきますからね。

 

初心者の方は、最初の2週間くらいはあえて限界トレーニングを何回か取り入れて、「自分の限界ライン」を確認しておくのがオススメです。

 

 

ステップ②:各セットごとに「いけそうな回数」を推測してみる

次のステップは、リアルタイムで残り回数を想像する習慣を身に付けることです。たとえば、ベンチプレスをやっていて「7回目でまあまあしんどくなったけど、あと3回はいけるかも?でもフォームが崩れそうだな」みたいに思うことができれば、そこから2回追加して9回で止めることで、ちょうど「RIR=2」になるわけです。

 

大事なのは「苦しい=限界」ではないと認識しておくことで、たとえ呼吸が乱れたり筋肉がパンプしても、それだけで限界とは限らないのでご注意ください。フォームが大きく崩れる、バーベルの動きが極端に遅くなる、補助が必要になりそう……ぐらいになったら本当の限界であります。

 

 

ステップ③:トレーニングログに「RIR」を書き込む

このアプローチを習慣化するには、トレーニングログにRIRを記録するのがかなり効果的であります。たとえば、ノートやアプリにこんな感じで書いておくのがお勧めです。

 

スクワット 60kg × 10回(RIR=2)

ベンチプレス 50kg × 8回(RIR=1)

ラットプルダウン 45kg × 12回(RIR=3)

 

この記録を見返すことで、「あの時の感覚は正しかったのか?」を後から検証できますし、次のトレーニングにも活かせますんで、これは必ずやっておきましょう。

 

 

最初のうちは、以上の作業は面倒かもしれませんが、研究によると、実験の初期の頃は被験者も予想をちょいちょい外していたとのこと。そのため、初心者のうちは、あえて何回か“本当の限界”を経験するしか、「自分の限界」を把握する方法はないんですよね。なので、最初のうちは面倒でも本当の限界を体験してみてくださいませ。

 

ちなみに、「RIR=2」の筋トレはトレーニングの疲労感が少なく、回復も早いというメリットもあったとのこと。これは、私のように「筋肉を増やすのは目的じゃなくて、健康やパフォーマンスのために筋トレをしている人」にはめちゃくちゃありがたいところじゃないでしょうか。あまり疲れを残さずに筋トレができるんで、「RIR=2」の考え方はかなり有効じゃないかと思う次第です。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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