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持久力を高めるにもたんぱく質はめちゃくちゃ重要だ!持久系アスリートに必要なたんぱく質の最適摂取量とタイミング



かつて持久系スポーツの食事戦略といえば、「炭水化物こそ正義!」って風潮があったもんです。マラソン大会の前日といえばパスタ山盛りで、トレーニング中の補給はスポーツドリンク一択!みたいな雰囲気もあったりしたんですよ。

 

ところが、近年は「持久力を高めるにもたんぱく質はめちゃくちゃ重要だ!」って見方が急速に広がってたりします。たんぱく質が大事なのは筋トレ界では常識ですが、持久系スポーツ(ランニングや自転車、トライアスロンなど)においても、その必要性が再認識されてきてるんですね。

 

そのあたりを、ロンドン大学キングスカレッジのオリバー・ウィタード先生がレビュー論文(R)としてまとめてくれたので、「持久系アスリートにとってのたんぱく質」について考えてみましょう。

 

 

たんぱく質の新スタンダードは体重1kgあたり1.8g

まず結論から言っちゃうと、現在の厚労省などが提示している「1日体重1kgあたり0.8g」という基準は“健康維持の最低ライン”でしかないので、持久系アスリートにとってはまったく足りない可能性が高め。

 

そこでウィタード先生らは、「指標アミノ酸酸化法(IAA法)」というより精度が高いたんぱく質摂取量の評価手法に注目しまして、この方法を使ったデータをレビューしたんですよ。すると、ここでわかったのは以下のような推奨摂取量であります。

 

  • 一般人(非トレーニング者):体重1kgあたり1.2gが良い
  • 持久系アスリート:体重1kgあたり1.8gが良い

 

ということで、これは筋トレをしている人に対する推奨量(体重1kgあたり1.5〜2.2g)とそんなに変わらない結果になってますね。つまり、「持久力を高めたい人は、筋トレ並みにたんぱく質が必要」ってことでして、そう考えるとアンチエイジング全般をブーストさせたい時にも、同じレベルのたんぱく質摂取量を心がけたほうがよさそうですな。

 

 

なんでそんなにたんぱく質が要るの?

となると、「筋肉を増やしたいわけじゃないのに、なんでそんなにたんぱく質が要るの?」ってのが気になりますが、その理由は以下の3点であります。

 

  1. 筋損傷の修復:長時間にわたる有酸素運動では、筋肉に細かいダメージが蓄積されがち。とくにトレイルランや長距離のバイクライドでは、「ちょっとした筋トレ並みの負荷」がかかることがわかっております。その超細かいダメージを修復するには、当然ながらアミノ酸(=たんぱく質の構成要素)が必要になるわけです。

  2. エネルギー源としての利用:持久運動をしているあいだ、体は主に炭水化物と脂肪をエネルギー源にしますが、実はたんぱく質も最大で全体の5〜10%ぐらい、燃料として使われていたりします。とくにトレーニング終盤は糖質が枯渇してくるんで、アミノ酸が代用燃料として使われやすくなるんですよ。そのぶん、摂取で補っておく必要があるわけです。

  3. ミトコンドリアの強化:意外と見落としがちなのが、「ミトコンドリアのタンパク質量」であります。ミトコンドリアは、細胞の中でエネルギー(ATP)を生み出す発電所のような存在ですが、持久トレーニングによって、この発電所自体の数と性能が向上するんですよね。で、この適応に必要なのがやはりアミノ酸なんですよ。

 

ということで、こうして見ると、エネルギー効率の高い体をつくる材料としてもたんぱく質は欠かせないってことで、やっぱプロテインってのは幅広い重要性を持ってるものなんですなぁ。

 

 

しかも、休息日のほうがたんぱく質を使う?

個人的に、今回のレビューの中でも面白かったのが、

 

  • 持久系アスリートは、トレーニング日よりも「休息日」にたんぱく質を多く使っている可能性がある

 

って指摘です。一見すると逆のように思えますが、どうやら私たちの体は運動を終えたあとに「修復モード」へと切り替わり、タンパク合成が活発になるらしいんですよ。

 

これは筋トレ後の超回復に近い現象で、むしろ休息日にこそたんぱく質をしっかり摂っておいたほうが、次のパフォーマンスにつながるらしいんですよ。そこで研究チームは、

 

  • トレーニング日:体重1kgあたり1.8g
  • 休息日:体重1kgあたり2.0g

 

って量のたんぱく質を推奨しております。休息日のほうが多めにしたほうがよいってのは、ぜひ覚えておきたいポイントですねー。

 

 

 「いつ摂るか問題」はそこまで神経質にならなくてOK

ちなみに、このレビュー論文では「運動直後30分以内にプロテインを摂らないと意味がない!」という説についても、先行研究をもとに真偽をチェックしてまして、

 

  • これについては明確な科学的根拠があるかというと、微妙。

 

  • 基本的には、別に運動直後の30分じゃなくても、その次に摂る食事で十分なたんぱく質を摂取してれば問題ない。

 

  • ただし、トレーニングが夕食後なら何かしら補給したほうがベターかも。

 

みたいな提案をしておられました。たとえば、体重68kgの人なら、運動後には約34g(体重1kgあたり0.5g)のたんぱく質が目安。これは、卵3個+ギリシャヨーグルト1カップでちょうどいいくらいですね。

 

 

カーボ不足トレーニングにはプロテインが効く?

近ごろ流行っているトレーニング戦略に、「糖質を制限した状態でトレーニングして脂質代謝を高める」って方法があります。いわゆる「ローカーボトレーニング」ってやつですが、もしこの方法を実践したい時には、エネルギー源としてアミノ酸の出番が増えるため、

 

  • この種のトレーニングをやるときは、トレーニングの前後に10〜20gのたんぱく質を補給するのが良いよー

 

って結論になってました。糖質制限は極端にやりすぎると筋分解のリスクがあるので、プロテインを併用することで、そのデメリットをうまく補えるってことですな。

 

 

ということで、ここまでの話をざっくりまとめると、

 

  • 持久系アスリートは筋トレ並みにたんぱく質が必要(体重1kgあたり1.8g)

 

  • 休息日はむしろ多め(体重1kgあたり2.0g)に摂るべし

 

  • 運動後は体重1kgあたり0.5gを目安に補給すべし。時間はこだわらなくてOK

 

  • 糖質制限系のトレーニング時は、プロテインが心強い味方になる

 

という感じになります。あくまで持久系のベースは炭水化物ですし、それは今後も変わらないでしょうが、同時にプロテインが“陰の立役者”になってるのも確かなんで、日々の食事や補給の中でさらに意識してみるのがよさげです。どうぞよしなに。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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