このブログを検索




「あの時の話、覚えてるよ」が最強の人間関係ハックだった件


 

 

相手に好かれる最強の会話テクとは?

誰かに好かれたかったら細かいところを記憶しておけ!」と思わせるデータ(R)が出ておりました。たとえば、「前にお母さんが体調を崩してたって言ってたけど、あれどうだった?」みたいな具合に、相手が何気なく話した内容を覚えておいて、後からそれに触れる、みたいなことですな。確かに、相手が「え、そんな話、覚えててくれたの⁉」みたいなことを言ってきたら、ちょっとうれしいですもんね。

 

で、これはイギリスのアバディーン大学が行った実験で、3つの実験をして人間関係における「価値の伝え方で好感度はどう変わるか?」ってのを調べております。要するに、単に「あなたの話は大事ですなぁ」と言葉で伝える方法と、「あなたが前に言ってた〇〇、覚えてますよ」と記憶を伝える方法の効果を比べたんですな。

 

研究の内容をもう少し詳しくまとめとくと、たとえば、以下のような設定で行われております。

 

1.参加者に「新しいオフィスアシスタントを雇う面接官になったところを想像してください」って感じで、特定の役割を与える。

2.架空の採用面接をやって、オフィスアシスタント候補者の短い動画を視聴してもらう。この動画には、応募者の資格・スキル・仕事適性などが含まれている。

3.動画を視聴した後、「この候補者は採用されない」と通知され、参加者は動画で見た候補者へのフィードバックを書くように指示される。この時に、参加者を3つのグループに分ける。

  • 価値を伝えるグループ:応募者の話に価値があると伝えるよう指示される。 例:「あなたのスキルは非常に印象的でした」
  • 記憶を使うグループ:応募者の発言の具体的内容を覚えていることを伝えるよう指示される。 例:「あなたが話していたExcelの資格について、よく覚えています」
  • 価値を否定するグループ:応募者の話には価値がないと伝えるよう指示される。 例:「あなたのスキルは当社のニーズに合いません」

4.最後に、別の評価者が、参加者の書かれたフィードバックを読み、「どの程度、応募者を大事にしていると感じるか」を評価する。

 

こんな感じで、「シンプルにほめる」「シンプルにけなす」「記憶を語る」という3つのパターンを使い、どのような印象の違いが生まれるかを調べたわけっすね。

 

 

 

「記憶されていること」は、私たちにとって非常に強力な心理的報酬である

で、結果は意外なもんで、記憶を語るタイプのフィードバックは、第三者から「最も相手にうまく価値を伝えられている」と評価されたんだそうな。つまり、「相手の言った内容を覚えている」ってのは、「私はあなたを重要に感じていますよ」というメッセージを強力に伝えるため、非常によい印象を与えられるってことですね。

 

でもって、この研究が面白いのは、「これだけ記憶を伝えるテクニックが効果的なら、みんな自然と使ってるんじゃないの?」って疑問にも注目しているところですね。確かに、こんだけ強力な効果があるなら、みんな普段から使いまくっててもおかしくないですもんね。

 

が、研究チームが検証したところ、みんなフォーマルな会話の中では「記憶を伝えるテクニック」をあんまり使わなかったらしく、研究チームから「記憶を使ってみてね!」と指示されないかぎり、わざわざ相手に自己の記憶を伝えようとはしなかったんだそうな。実験データを見ると、ほとんどの人は、記憶を使わずに抽象的な称賛に終始していたそうで、研究チームは「これはもったいないよ!」と指摘しておられます。ということは、普段の会話で意識して「記憶を伝える」のを試してみれば、他人よりも差がつけられるかもしれませんな。

 

では、この研究を実生活に活かそうとするなら、どうなるでしょうか。個人的には、以下のような「記憶の小出し」が効果的なんじゃないかと思っております。

 

  • 過去の会話を軽く引用してみる:「こないだ言ってた旅行、どうだった?」「新しく飼い始めた猫、元気?」みたいに、前に一度話題に出たことを“回収”する。これで相手に「私のことを気にかけてくれている!」って感覚を与えられる……はず。

 

  • メモを取る(または脳内メモ):雑談の中で出た相手の趣味や家族構成、仕事上の悩みなどをこっそりメモしておき、次回会うときには、その直前にメモを読み返して話題に出してみる。これで「覚えてくれてたんだ!」効果が炸裂する……はず。

 

  • SNSで過去の投稿を振り返る:SNSのリプライやコメントで、相手の過去の投稿内容を振り返ってみる。「この前のランチのお店、美味しそうでしたね!あれから他にも行かれました?」「先月のプレゼン、どうなりました?応援してます」みたいにやると、「この人すごいな!」って印象がわく……はず。
 

ということで、この研究を見る限り「覚えてますよ!」ってのは、私たちにとって非常に強力な心理的報酬を与えるんだなーってことですね。ただ「あれ、覚えてますよ!」と言うだけで、「私はあなたのことをちゃんと見てます」ってメッセージになり、それだけで相手への印象が激しく上がるわけっすね。それなのに、みんなあんまり使ってないというんだから、これは日常で試してみるしかないっすな。

 

「相手の話をちょっとだけ、覚えておく」って、これだけで良いので、意識してやってみると意外なほど人間関係に効くはずであります。お試しあれー。

 


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item

search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM