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「言ってることとやってることが違う人」への正しい対処法の話

   

 

「ダブスタな人」っているじゃないですか。たとえば、

 

  • 「人には優しくしなきゃダメだよ」と言いながら、部下には平気でキツい言葉をぶつける上司
  • 「SNSは時間のムダ」と言ってたのに、昼休みはずっとインスタをスクロールしてる友人
  • 「地球環境のためにプラスチックは使うべきじゃない」と言いながら、ペットボトルの水を毎日買ってる人

 

みたいな人ですね。要するに、他人に「こうするべきだ!」と言ってる人が、自分ではそれに反する行動を取ってるようなパターンっすね。まあ、実際に自分に害があるケースは少ないでしょうが、ネットでダブスタを見かけて、なんだか心がざわついたような体験は誰にでもありましょう。

 

なかでも「ん?」を思われがちなのが“道徳のダブスタ”で、他人に倫理を解いた後に、自分でそのルールを破るような人ほど「ダブスタ野郎」だと言われがちなものでございます。例えば、ある研究(R)では、カンニングをした2人の被験者(架空の人物)を使って、第三者が彼らをどう評価するかをチェックしたんだそうな。

 

  • Aさん:カンニングは自分にはよくないと思っているが、他人がやることには特に口を出さない
  • Bさん:カンニングは道徳的に悪であり、する人は信用できないと公言していた

 

でもって、この2人が実際にカンニングしていたとしたら、どちらがより「ダブスタ野郎」だと評価されるでしょうか? 結果はあなたの予想どおりで、Bさんに対しては9割以上の人が「ダブスタ野郎」と判断した一方、Aさんにそう感じたのは半数以下だったというんですな。つまり、道徳的な“説教”を垂れた直後にそのルールを破ると、偽善ポイントが爆上がりするってことです。これは感覚的によくわかりますね。

 

で、問題はここからでして、このような「他人にだけ厳しい人」に遭遇したときにどうすればいいのかって問題について考えてみましょう。普通だったら「お前、それ自分が言ってたことと違うじゃん!」と声を上げたくなるでしょうが、研究ではストレートに「それはダブスタだ!」と指摘しちゃうと逆効果なことが明らかになっております。人間というのは「自分を責められると、本能的に自己防衛に走る」ものなので、指摘した相手を攻撃したくなっちゃうんですよね。

 

ではどうするかということで、研究では次のような“質問ベースのアプローチ”が推奨されております。

 

 

ステップ1:「評価基準」を相手自身に語らせる

まずは、相手の口から「何が正しいのか」という評価的スタンダードを引き出しましょう。たとえば、相手が「SNS中毒は時間のムダ」と言っていたなら、それについて確認する質問を投げてみるわけです。

 

  • 「あれ? 前に、SNSってあんまり意味ないよねって話してたよね?」

 

この段階では、相手の言葉を“再確認”するだけでOK。攻めず、断定せず、ただ思い出させるにとどめましょう。

 

 

ステップ2:ズレた行動を穏やかに提示する

次に、「言っていたこと」と「実際の行動」にズレがある点を、さりげなく問いかけます。

 

  • 「さっきの会議中も、けっこうスマホ見てたよね?」

 

ここで重要なのは、相手に「そうだったかも」と自分で気づかせることです。あくまで“確認”の形を取るのがポイントなわけですね。

 

 

ステップ3:「外から見た印象」を伝える

このステップまで進むと、相手は「いや、それには理由があって……」などと正当化を始めるはず。ここで追い詰めすぎず、「他人からどう見えるか」という視点をやんわり出してあげるのが、次のステップになります。

 

  • 「たとえば他の人が同じことしてたら、どう思う?」

 

みたいな感じで、“自分を外から見る視点”を促してやると、相手の中に少しずつモヤモヤが芽生えてくるわけですな。

 

 

ステップ4:自分の感情を伝える

最後は、その人のダブスタによって、自分がどんな気持ちになったかを素直に伝えます。「あなたの矛盾に怒ってる!」と言うのではなく、

 

  • 「ちょっと信じづらくなっちゃって、悲しかったんだよね」

 

みたいに言ってみるのがポイント。この“感情の共有”が、相手の防衛本能を抑えつつ、自省を促す鍵になるんですな。

 

ということで、ダブスタな相手には、なるべく刺激せずに自覚を促すと言うやり方が有効になります。思わず「みんなの前で怒った方が良いのでは?」とか思っちゃうかもしれませんが、人前での指摘はほぼ確実に逆効果なのでご注意ください。これをやっちゃうと、相手の羞恥心が先に立ち、素直に認められなくなるばかりか、関係性までこじれるリスクもありますんで。

 

なかなかめんどくさい話ではありますが、だからこそ偽善をうまく扱える人は人間関係の達人になれるとも言えるでしょう。なにしろ、「他人の矛盾」を指摘することほど場が荒れやすいことはないですからねぇ。

 

まあ人間なんて本質的に矛盾した存在でして、「人には優しく」と言いながらネットでは毒を吐いたり、「健康第一」と言いながら深夜にカップラーメンをすするなんてことは、私自身にもありますからね。だからこそ、他人を「ダブスタ野郎が!」と糾弾しないスタンスのほうが、みんな幸せになって良いのではないかと思うわけです。どうぞよしなに。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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